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特集ワイド:時間という治療テク 生体リズムに合わせ投薬、「要注意」知り対策 「早寝早起き朝ごはん」で時計を正常に
http://mainichi.jp/feature/news/20120606dde012040020000c.html
毎日新聞 2012年06月06日 東京夕刊
◇がん、腎臓疾患、糖尿病、高血圧、脂質異常症…すべてに通じる
体内時計の働きと健康との関連について研究が進んでいる。生体リズムを投薬のタイミングなどに応用した「時間治療」の最新成果を専門家に聞いた。【井田純】
「がん、腎臓疾患に加え、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病でも、時間治療の効果がわかってきています」と語るのは、自治医科大学医学部の藤村昭夫教授。薬が有効に作用し、副作用の少ない時間帯を狙って薬物を投与することで治療効果を高めるのが時間治療の発想だ。また、特定の時間帯に症状が悪化する病気も少なくない。疾患ごとのタイミングにあわせて薬を用いる意味もある。
体内時計の中枢は脳の視床下部にある「視交叉(しこうさ)上核」と呼ばれる神経細胞の集合体にある。約25時間の周期を刻んでおり、毎日、光を浴びることでリセットされる。これとは別に、すべての臓器がそれぞれに時計を持っている。臓器ごとの末梢(まっしょう)時計は、中枢からの指令を受けるとともに、個々の臓器の状況に応じてそれぞれの時を刻む仕組みだ。
藤村教授によると、生体リズムと病気との関連の研究は、30年ほど前から次第に盛んになってきたテーマだ。
最近の研究では、大腸がんへの抗がん剤投与で極めて有効な時間治療の例が報告されている、と藤村教授は指摘する。「24時間にわたって一定量を注入した場合と、抗がん剤の副作用が起きにくいようある薬を午前4時、別の薬は午後4時にそれぞれ注入量が最大になるようにした場合を比べます。すると、消化管障害や血小板減少などの副作用の出現頻度が5分の1に減り、腫瘍への効果が倍になったという研究があります」。がんに確実に効く「特効薬」はまだないだけに、「抗がん剤は副作用の起きない範囲で大量に投与するのが基本」(藤村教授)であり、薬物ごとに副作用の少ない時間帯を見極めることが重要になる。
「高血圧治療では、夜間に血圧があまり下がらないタイプの患者さんに対して、降圧剤を夕方投与に変更することで治療効果が高まる。動脈硬化を抑え、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞のリスクを減らすことにつながります」と藤村教授は語る。
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「くすりはいつ飲めば効く?」などの著書がある北里大学薬学部の吉山友二教授は言う。「体温、血圧、赤血球や白血球の数、血糖値、と人間の体で、一日を通して一定のものはない。さまざまな機能が、約24時間を一つの単位としたリズムで変化しています。病気には、それぞれに悪化しやすい時間帯が存在します」
心筋梗塞は、目覚めとともに血圧が上昇するため、午前11時をピークとして、午前中が要注意。ぜんそくの発作が起きやすいのは深夜から早朝で、最も多いのが午前4時ごろ。脳出血は朝7時と夕方5時にそれぞれ最も危険性が高くなる。胃酸の分泌が増える夜間には、消化性潰瘍が悪化しやすくなる−−などの傾向が確認されている。こうした時間帯にあわせて治療を行うケースが増えている。
だが、吉山教授は「患者さんが自分自身の考えで薬を飲む時間を変えてしまうのは危険です」とクギを刺す。生体リズムには個人差があり、最適な投薬のタイミングについては医師など専門家の判断を仰ぐ必要がある、という。
さらに吉山教授は「病気でなくとも、本来の生体リズムを乱すような生活を続けることで、健康を害するリスクは高まる」というのだ。「夜勤労働の人の間では、通常の日勤の人に比べて、消化性潰瘍などの発生率が高いという報告があります。日勤と夜勤を交互に繰り返すようなシフト勤務の場合、正常なリズムを崩しやすいのです」
例えば、ある研究では、看護師や長距離トラック運転手ら昼夜交代のシフト勤務の人たちの冠動脈疾患による死亡リスクは、昼間だけの勤務に従事している人たちの2倍以上という結果だった。また、がんの進行を妨げるメラトニンというホルモンは、寝ている間に分泌される。しかし、夜眠らずに光を浴びていると分泌が抑制されるという報告もある。
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体内時計はダイエットの成否にも関わる。「夜食べると太る」というのはもはや常識だが、この仕組みに影響しているのがBMAL1(ビーマルワン)というたんぱく質の働きだ。BMAL1は体内時計を調節するとともに、脂肪をため込む作用を持つ。BMAL1の専門家、日本大学薬学部の榛葉繁紀教授は「全身のほぼすべての細胞に存在する、体内時計の本体と言ってもいい物質」と説明する。
この物質の働きが高まるのは、午後10時から午前2時ごろなので、この時間帯に食べると太る、ということになる。厄介な物質にも思えるが、実は「生物にはなくてはならないもの」と榛葉教授は言う。
遺伝子操作によって生まれたBMAL1のないマウスは、体格も臓器も小さく、脂肪組織の萎縮や脱水症状が見られる。心筋梗塞のような症状で突然死する個体が多く、寿命は通常のマウスの4分の1程度。「体自身に昼夜の区別がつかないので、実際の時間と体が感じている時間が一致しない。迷路を使った実験では、BMAL1のないマウスは記憶能力に障害があり、通った道順を学習できない異常がみられます」と榛葉教授。
肥満とBMAL1の関連についてはさらに新しい事実が分かりつつある。「いわゆるメタボ状態の肥大した病的な脂肪細胞ができるときは、むしろBMAL1の活動は低下している。この物質がきちんと働いている時は、必要なエネルギーだけを脂肪としてたくわえ、余分なものは燃焼するようにコントロールしていると考えられます。夜更かしや夜遅い食事など、体内時計が狂うような生活をしていると、BMAL1の働きが阻害され、悪玉コレステロールが増えるなどの影響が出てきます」
榛葉教授によると、体内時計を正常に保つためには「早寝早起き朝ごはん」だそう。言うはやすく行うは難しだが、すべての臓器に影響すると聞くと、まじめに取り組む気になる人も多いのではないだろうか。
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