http://www.asyura2.com/09/health15/msg/383.html
Tweet |
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20110810/222041/?ST=print
風評に惑わされるな! 「食品添加物は危険」のウソ 『無添加はかえって危ない』の著者・有路昌彦氏に聞く
2011年8月17日 水曜日
中野 栄子(日経BPコンサルティング・プロデューサー)
放射性セシウムの暫定規制値を超える牛肉が全国で確認され、国民の不安が高まっている。その3カ月前に、生肉料理を食べた幼児を含む4人が亡くなった腸管出血性大腸菌による食中毒事件も重なり、食肉全体への不信感は一層深刻化している。とはいえ、実際のリスクに伴って被り得る被害とは別に、リスクの実態のない“風評被害”がはびこっているのも事実。
食品添加物に対する風評被害もかまびすしい。「食品添加物を摂ると健康を害するのではないか」という巷の噂も科学的根拠はなく、いわゆる風評だ。食品添加物への誤解を正すべく、経済学者の有路昌彦氏がこのほど、『無添加はかえって危ない』を著した。安心するためには、食品添加物について正しく理解すること。間違った情報に惑わされて、不安に陥らないようためのノウハウを聞いた。
(聞き手は日経BPコンサルティング・プロデューサー中野栄子)
問:今や、食品スーパーに行けば、「無添加食品」があふれかえっている。食品スーパーだけでなく、コンビニ、飲食店にもその勢いが及んでいるが、それはなぜなのか?
答:まず、この「無添加食品」だが、合成保存料や化学調味料など食品添加物を使用していないことを強調し、「無添加」表示を行っている食品のことを指す。マーケティングの原則からいえば、消費者が「無添加食品」を求めるので、企業はそれを提供しているという構図だ。
問:では、消費者が「無添加食品」を求める理由は何か?消費者は「無添加食品」がベネフィットをもたらしてくれる価値あるものと考えているからだと思うが、そのベネフィットとは何か?
答:安心感だ。多くの消費者は、食品添加物は食べると健康を害するのではないかと漠然と思い、不安に陥っている。食べ続けると将来がんになると信じている人もいるし、最近の遺体が腐りにくいのは、亡くなった人が生前食品添加物が使われている食品をたくさん食べてきたためだという都市伝説すら流布している。特に、小さいお子さんを持つお母さんは、不安感を一層強めている。こうした消費者の食品添加物に対する不安を「無添加食品」が解消してくれるというわけだ。
有路昌彦(ありじ・まさひこ)氏
近畿大学農学部准教授、自然産業研究所取締役を兼務。
京都大学農学部卒業、同大学院修了(農学博士)。大手銀行系シンクタンク研究員を経た後、民間研究所役員などを経て現職。専門は、食料経済学、食品リスクの経済分析、水産経済学、計量経済学、経営学。食品安全委員会各種事業、農林水産省の高度化研究事業(BSEに係るリスク管理の経済評価と最適化に関する研究)などの研究を手掛ける。主な著書は『思いやりはお金に換算できる!?』(講談社+α新書)など。
問:消費者を安心させるという点は良いことだが、その情報が科学的に間違っていることは問題ではないか。食品添加物は厚生労働省所管の食品衛生法に基づいて安全に使われている。
答:科学的に正しくても、間違っていても、消費者が望むものならばそれでよいと発言する人もいる。そうした発言が、市場を歪めているということで、問題だと考える。
例えば、食品添加物の1つである保存料は、食品の腐敗を防ぎ、食中毒リスクを下げる役割があり、その役割を持つ保存料を使わない「無添加食品」は、食中毒のリスクを高めることになる。食中毒のリスクは極めて大きなものであり、食品のリスクで最も下げないといけないものなので、それを抑える効果がなくなるのはリスクを一層大きくしてしまう。
さらに、「無添加食品」は保存料を使っている食品よりも早く腐敗するために、早く廃棄しなければならないので、廃棄コストが増大する。また、腐敗しないようにと、冷凍・冷蔵技術を流通システムに取り入れるので、そのコストも膨らむ。我々の研究結果によれば、保存料を使わない「無添加食品」は、保存料を使う食品に比べて平均3割高いことが分かった。
消費者は好んで3割余計に「無添加食品」に払っているのかは疑問だ。食中毒リスクが高まり、健康被害を受ける可能性が上がっている一方で、3割も値上げしている食品を買うことになっている消費者は、知らない間に大変な不利益を被っているといえる。物の値段が上がれば市場は縮小するので、食関連産業にとってもマイナスだ。
改善されていることは国民に伝わらず
問:それでは、なぜ消費者は科学的に間違ったことを信じているのか。
答:確かに、第二次世界大戦後の混乱期には、現在のような食品添加物についての規制がなかったために、食品添加物が人に健康被害をもたらすといういくつかの事件が起こった。その後、当時の厚生省が食品衛生法を改正し、食品添加物についての品質や安全性の規定を定めたので、この数十年人の健康を害するようなことは報告されていない。
ところが、そのように改善されていることは世の中に大々的に伝えられない一方で、テレビのワイドショーで危険性を誇張されるようなことが放映されたため、多くの国民は「食品添加物は危ない」との印象を持ち続けている。
問:当局からの広報が足りなかったということか。
答:それも理由にはあげられる。食品添加物の安全性については、科学的な根拠を伴うもので、その説明には専門的な知識を要する。専門家でない者にとって、すぐには理解できるものではない。また、「危ない!」とすぐに取り上げるワイドショーも、「実は安全でした」という番組を作らないので、多くの国民に正しい情報が行き届くことはなかった。
さらに「無添加食品」を売りたい企業は、マーケティングの手法として「食品添加物は危険」と思わせるような言動を繰り返す。そう思っていない企業も市場全体が「無添加がよい」ということになると、それに追随しないと商品の評価が落ちるので、結局同じように「無添加商品」を売り始めざるを得なくなる。それに加えて、食品添加物の複雑な表示制度にも原因がある。
問:使われた食品添加物は、食品パッケージの裏面に小さな文字でぎっしり書かれてあり、読みにくい。一方で、表面には大きな目立つ文字で「保存料不使用」などと書いてある。
答:JAS法上、食品に使用されている食品添加物は、食品パッケージに表示する義務があり、その方法は細かく規定されている。一方で、「保存料不使用」といった無添加表示は、事業者が勝手に表示しているもの。表示の義務はないが、逆に表示をしてはいけないという規定もない。
例えば、以前コンビニのおにぎりやサンドイッチの具材などによく使われた保存料のソルビン酸は嫌われ者の代表格であり、食品事業者はソルビン酸を使わない商品の提供に躍起となっていた。しかし、ソルビン酸を使わないということは、食中毒のリスクが高まるということ。食中毒事故を起こせば、食品企業の責任が問われる。そこでソルビン酸の代わりに使われるようになったのが、日持向上剤と呼ばれる保存料表示の要らない添加物だ。日持向上剤は、pH調整剤や調味料として表示されていることもある。
日持向上剤の役割も、保存料と同様に微生物の増殖を防ぐことだが、保存料に比べるとその力が弱く添加量が多くなる場合が多いことが難点。それでも、pH調整剤は消費者が敬遠しがちなソルビン酸を表示せずに済み、「保存料不使用」と堂々と表示できることが最大のパワーを発揮し、消費者を安心させるという奇妙な現象につながっている。
問:結局、消費者は危ないと思っている保存料をうまく避けているつもりで安心しているけれど、実は保存料と同じような働きをする食品添加物をしっかり摂取していることか。裏切られていることに気が付かないばかりか、食中毒のリスクは高まっている。これが、書名の『無添加はかえって危ない』となった。
「無添加表示」は実態を表していない
答:このほか、食品パッケージにでかでかと「無添加」と書かれてあるものの、何を添加していないのか明示していないものがある。また、もともと添加しないのが当たり前なのに、わざわざ「無添加」を標榜するものもある。例えば、冷凍食品はマイナス18℃以下で流通保管することで微生物の繁殖を抑えることができるので、保存料は不要であるにもかかわらず、「保存料無添加」と表示しているケースだ。
これらは、「無添加」という表示があってもなくても実体は変わらないのに、「無添加」表示があったほうが、ないほうよりも安全であるとのイメージを強く伝えている。これは優良誤認といい、状況によっては違法と判断されることもある。「無添加表示」がいかに実態を表さず、不要な不安を消費者に与えているかが分かるだろう。
問:「無添加」の科学的な意味を消費者に正しく伝え、理解してもらえれば、消費者自身が不安に陥ることも避けられるのに、なぜこの間違いが正されないのか。間違いが正されないばかりか、消費者の誤解がさらに深くなっている。
答:実は、誤解が深まる理由が3つある。教育とメディア、学者だ。小中学校の教育現場で生徒たちに「食品添加物はなるべく摂らないように」と指導している教員がいる。また、メディアでは視聴率や部数を上げることが求められるが、それに貢献するのが「○○は危ない!」「健康被害が発生」という危険情報だ。「今日も保存料が安全に使われました」という安全情報はニュースにもならない。したがって、消費者が目にする食品添加物についての情報は圧倒的に危険情報が多く、その危険情報に接するたびに消費者は誤解を重ねていく。
問:学者は専門家として、食品添加物について科学的に説明し、こうした誤解を正してほしい。
答:もちろんそういう学者がいないわけではないが、アカデミアからの声は小さい。声が大きいのは、健康食品企業や市民運動団体などの顧問となり、科学的ではないのに一見科学的に思えるような発言をする学者だ。自然や天然を売り物にする一部の健康食品企業のために、「保存料は科学的には安全性が確認されていない」と言ったりする。それを聞いた消費者は、「科学者である専門家が言うのだから、保存料が危ないのは間違いない」と信じてしまうというわけだ。しかもこういった学者はあたかも消費者の味方のように取り扱われるので、知名度は上がり収入も上がる。そこには残念ながら一定の経済メカニズムがある。
1人ひとりにもっと科学的に考えてほしい
問:こうした誤解への連鎖を断ち切るためには、どうすべきか。
答:国民1人ひとりが、「○○が危ない!」ということに対し、「何で?」「科学的根拠はあるのか」と冷静に、素直に考え、正しい情報収集をする努力をすることだ。
食の問題が起こるとたいてい消費者は、食品安全行政の無策ぶりを追求するが、ただ批判するばかりで自ら正しい情報収集する姿勢に欠けているように思う。科学的なことは専門家でないから分からないと言っていては、不利益を被っていることすら気がつかない。多少読みにくいが、食品リスクについての科学的評価を行う食品安全委員会のホームページなど、信頼できる情報源は必ずある。それらを複数以上探して、自ら勉強していくことだ。
問:最後に、食のリスクを理解するポイントを1つ挙げるとすれば、何か。
『無添加はかえって危ない』(日経BPコンサルティング)
答:「リスクは量であること」を理解してほしい。例えば、あれだけ騒がれたBSE(牛海綿状脳症)のリスクよりも、喫煙のリスクのほうが400万倍も大きい。現在起こっている放射性セシウムが牛肉から検出されている問題でも同じことが言えるのだが、汚染されているか否か、黒か白か、あるいはゼロか百かという2分法で考えてはいけないということだ。
放射線は医療現場で検査や治療に使われ我々の健康維持に貢献しているし、温泉地に行ったり、飛行機に乗ったりすれば、普段よりも多くあびることになる。普通に食べている野菜からも、そして何より我々人間の体からも放射線が出ている。量によって薬にもなれば、毒にもなるということだ。検出されたから危ないではなく、許容できる量かどうか、常に考える癖をつけておきたい。
著者プロフィール
中野 栄子(なかの・えいこ)
日経BPコンサルティングプロデューサー。2010年まで食の安全の専門サイト『FoodScience』(日経BP社)の編集責任者、現在は医療・健康・食分野でのメディアプロデュースを手掛ける。農林水産省・農林水産技術会議評価委員会委員、東京都食品安全情報評価委員会委員なども務める
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 不安と不健康15掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。