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http://president.jp.reuters.com/article/2010/01/22/96B74D36-0728-11DF-97E8-C1C83E99CD51.php
オバマ政権が誕生して1年がたった。 「チェンジ」というスローガンを眼前に掲げて改革に乗り出したオバマ大統領だが、大胆な「チェンジ」は少ない。支持率も一年前の68%から50%に落ちた。 選挙公約の一つだった医療保険改革も昨年中には達成できなかった。同改革の最大の目的は、約4700万人といわれる無保険者に健康保険を提供することである。 4700万という数字は、首都圏の1都3県(東京、千葉、埼玉、神奈川)の人口(約3500万人)よりも多い。先進国として、政府が国民の健康保険の面倒をみることは当然に思われるが、これがスンナリといかない。 今世紀初頭から国民皆保険はアメリカの目標であり続けた。セオドア・ルーズベルト大統領も導入を試みたが失敗。その後、トルーマン、ニクソン、クリントンの各大統領が同様の改革を目指したが実現できなかった。 民間の保険会社からの反対や、政府に保険行政をコントロールされることへの反発が特に保守派から強く、これまではすべての改革法案が潰されてきた。 しかしオバマ大統領には「今度こそは」という意気込みがある。幸いにも昨年末までに、連邦議会上下両院で別々の改革法案が通過している。今後のプロセスは両院で法案内容のすり合わせが行われ、その後、再び上下両院で合同案の採決が行われる。通過後にオバマ大統領が署名すれば法律として施行される運びだ。 普通であれば、4700万人の無保険者をなんとかしようと考え、大多数の国民は国民皆保険に賛同するかに思える。保険がなければ、アメリカの都市部では盲腸の手術と入院の費用だけで200万円以上も請求されることがあり、それで自己破産に追い込まれる人もいる。 しかし今の政治状況はオバマ政権に不利に流れている。今月19日に行われたマサチューセッツ州の上院補欠選挙で、共和党のスコット・ブラウン候補が勝利をものにしたのだ。リベラルの牙城といわれた同州で、共和党の上院議員が誕生するのは1967年以来初めてである。 しかも、昨年行われたニュージャージーとバージニア両州の知事選でも共和党候補が勝っている。今年11月の中間選挙でもほぼ確実に上下両院で共和党が議席を伸ばすと予測されている。 ワシントンのリベラル系シンクタンク、ブルッキングス研究所のトーマス・マン上級研究員は「民主党は下院で25議席くらい減らすかもしれない」と述べる。 これは何を意味するのだろうか。 一つはオバマ政権の唱えてきたリベラリズムが国民から反発を受けはじめたことに他ならない。景気対策だけでなく、改革に予算がかかり過ぎることへの反発である。すでに財政赤字はブッシュ政権時の2倍以上に膨らんでいる。 かりに上院案の医療保険改革が施行された場合、今後10年で8710億ドルもの予算が必要になる。保守派が「社会主義」と叫ぶ理由がここにある。 けれども、大統領選で提案していたオバマ案はもっと予算が必要だった。私は政府が国民に健康保険を提供することは当然であると考えるが、共和党は逆に政府によって健康保険の選択肢が奪われると憂慮する。 もう一つ、富裕層の本音がある。無保険者の多くはマイノリティーを中心にした低所得者で、「どうして私たちの税金で彼らの医療費を払わなくてはいけなのか」との思いが深層にあるのだ。 そうした背景から、ギャロップ社の最新調査では、医療保険改革に反対している人は国民の46%、賛成が49%でほぼ拮抗している。つまりアメリカ人の約半数は「国民皆保険はいらない」と思っているのだ。 前出のマン研究員は、40年以上もアメリカ政治を注視してきた人物である。その彼がアメリカはオバマ政権誕生後も分断したままであると指摘する。 「有権者は驚くほど現実的なものです。自分たちの経済状況がよくなるか、ならないかが最重要なのです。理念的にリベラルが大切だから民主党候補を支持するという思いには、なかなかいたらない。以前から、アメリカの政治勢力は民主・共和両党が50対50に割れているのです。ところがブッシュ政権への反発で50対40くらいになった。残り10%が無党派です。それが今、もとに戻ったということです」 上院で共和党議員が一人増えたことで、議員比が59対41となり、共和党がフィリバスター(議事妨害)を行使できるようになったが、医療保険法案は通過するだろう。 実際の法案をのぞくと1000ページ以上もある。コスト面での指摘もあれば、人口中絶についての記述もある。議員の中には、法案の趣旨に賛成でも特定条項に反対する者もいる。 それでも大統領選時にヒラリー候補(当時)が主張していた改革案より大幅に水増しされた。なにしろヒラリー案では4700万人すべてに健保を与える内容だった。しかし、オバマ案では1000万人以上が対象から外れることがわかっている。徐々にカバーする枠を広げていく予定だ。 失業率は依然として10%の高率で、景気が完全に復調するまでにはもうしばらく時間が必要だ。それまでオバマ氏の支持率も50%前後を推移するだろう。ただ鳩山首相と違うのは、オバマ大統領は最低4年間の任期は保障されていることだ。再選時(12年)に、ちょうど経済が上向くタイミングかもしれない。 |