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完全失業率のミステリー(その1)
2002年03月13日
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完全失業者数は増えたのに率は減少?
新聞の記事を読んで、疑問に感じた。
「総務省が1日に発表した労働力調査結果によると、1月の完全失業率(季節調整値)は5・3%で、昨年2月以来11カ月ぶりに前月を下回った。今回の調査から失業率の算出方式が変わったため、過去最悪だった昨年12月の失業率は5・6%から5・5%に修正されたが、それより0・2ポイントの改善になった。完全失業者数は344万人(男性210万人、女性134万人)で昨年12月より7万人増えた。」(毎日新聞3月1日付)
完全失業者は7万人増えたのに、完全失業率は0.2%の改善になったというのである。こんな筋の通らない数字を載せて、何の解説もしない新聞は怠慢ではないか。疑問を解消すべく、いろいろと調べてみた。
完全失業率に関わる基礎知識
総務省 労働力調査に関するQ&Aからポイントを抜粋すると、
15歳以上の人口のうち、就業者(月末1週間に少しでも仕事をした人)と完全失業者(仕事がなく、仕事を探していた者で、仕事があればすぐに就ける者)をあわせた人口を労働力人口という
完全失業率(%) = 完全失業者 / 労働力人口 × 100
単純に考えると、完全失業者数が増えたのに、率が下がるということは、労働力人口が大きく増えたということになる。そこで、実際の「労働力調査」を調べてみた。
計算が合わない?
労働力調査(速報)平成14年1月結果の概要(平成14年3月1日公表)によると、1月の就業者数は6267万人、完全失業者数は344万人である。この合計が労働力人口であるから、労働力人口は6611万人。上の公式を適用すると、完全失業率=344万人/6611万人×100=5.2%となる。
つぎに、労働力調査(12月)結果表一覧によると、12月の就業者は6362万人、完全失業者数は337万人であるから、労働力人口は、6699万人。従って、完全失業率=337万人/6699万人=5.0%となる。
どちらも発表された完全失業率(12月5.5%、1月5.3%)とは異なる。これらの数値は「原数値」というもので、公表されている数字は「季節調整値」なるものなのである。
季節調整値とは
労働力調査に関するQ&Aから引用すると、
17 なぜ,完全失業率は,季節調整値を主に公表しているのですか。
労働力調査のような月次統計には,例えば,農業就業者が春から夏にかけて増加し,秋以降減少していくといった,季節的な要因で毎年同じような動きをするものがあり,これを季節変動と呼んでいます。 月次統計を分析する場合に,ちょうど1年前の同じ月と比較する場合には,こうした季節変動を考慮しなくてもいいのですが,例えば前月や前々月と比較する場合には,その変化が,景気変動によるものなのか,季節変動によるものなのか分かりません。このような季節変動を除去した数値が,季節調整値です。
完全失業率のように,月々の動きを把握することが重要な意味を持つ数値については,季節調整値を主に公表していますが,季節調整する前の原数値も併せて公表しています。
また,人数規模等の水準が重要な意味を持つ数値については,原数値を主に公表していますが,季節調整値も併せて公表しています。
「原数値併せて公表している」と書いてあるが、よほど詳細に資料を読まないと、原数値はわからない。しかも、いくら資料を検討しても、どのようにして「季節調整値」なるものが算出されているのか根拠は示されていない。
ともかく、この「季節調整値」では、完全失業者数はどうなっているのだろうか。第12表 主要項目の季節調整値(TCI )によると、季節調整値で見ると、12月は、労働力人口6750万人、完全失業者371万人、完全失業率=371万人/6750万人=5.5%。1月は、労働力人口6716万人、完全失業者355万人、完全失業率=355万人/6716万人=5.3%。となり、ようやく計算が合った。
完全失業者数が増えても率が下がる根拠らしきもの
ここまで調べてきて、「数」が増えても「率」が下がる根拠らしきものがわかってきた。前年同月と比較すれば、季節的変動は考えなくてもよい。平成13年12月は、平成12年12月に比べて、完全失業者数が39万人増えている。平成14年1月は、前年同月比較で、27万人の増である。つまり、1月の方が、12月より、前年同月比での増加数が減っているというのである。だから、季節的変動を除くと、完全失業率は改善されているということのようだ。
ほかにもたくさんの疑問が……
以上は、あくまでも推測である。現在各方面に問い合わせをしているので、正式の結果がわかり次第お知らせする。
「数が増えるのに率が下がるのは何故か」という、あまりにも基本的な疑問に対して、これだけ調べても公式の答えは用意されていない。完全失業率をめぐって調べていると、他にもいろんな疑問が出てきた。政治、経済の政策決定に重大な影響を持つ数字であるのに、一般にはその実像があまりにも知られていない。結構胡散臭い数字だというのが実感である。引き続き、完全失業率のミステリーを追うことにする。