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(回答先: 【鳩山首相記者会見】「実行力なければ絵に描いた餅 投稿者 gikou89 日時 2009 年 12 月 31 日 03:49:25)
http://book.asahi.com/review/TKY200912220204.html
■背後に階級構造という社会の骨格
ずしんと重いテーマを軽やかな文体で書ききった格差問題に関する今年一番の収穫である。
階級の社会科学的研究にとって、教育機会の不平等や階級所属の親から子への“相続”は古典的テーマにほかならない。ここ10年ほどの橘木俊詔、佐藤俊樹らの議論では、近年の日本は所得の格差と出身による機会の格差がともに拡大しているという結論だった。本書はそれらを下敷きに、現代日本の格差問題を、戦後日本の歴史的文脈に位置づけることを目的としている。社会調査データや官庁統計を使って多面的な実証分析が行われ、加えて、漫画や映画などを引いて時代のリアリティーを肌で感じさせてくれる。
著者の分析によれば、第2次世界大戦をはさんで大幅に縮小した日本社会の格差は、1950年代の経済復興とともに拡大しはじめ、60年代、高度経済成長の幕開けによって縮小に転じた。一億総中流時代である。しかし80年代から再び格差拡大の時代に突入し、2000年代は非正規雇用が急速に拡大した新しい階級社会の形成期として描かれている。非正規労働者は、その極端な低賃金、家族形成と次世代を再生産することの困難さにおいて、労働者階級以下の存在――すなわちアンダークラスだと著者はいう。現代日本のアンダークラスは、約800万人、全就業人口の12.8%を占める。92年の384万人(6%)から急増を見た。もはや彼らは例外的少数者ではなく、日本の階級構造の主要な構成要素となった。
どんな時代のどの社会でも格差はあった。格差の大きさは経済状況や政策により変化するけれども、格差の背後には階級構造があり、それはゆっくりとしか変化しない。現代の格差拡大を「小泉改革」のような短期的要因によるものと理解するのは完全な誤りであり、階級構造という社会の骨格を認識せねばならないと著者は主張する。
教養書を装っているが、膨大なデータを現代階級論に依拠して新たに読み解いた、純然たる専門書である。だが読者はそのことに尻込みする必要はない。平易で明晰(めいせき)だからである。
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はしもと・けんじ 59年生まれ。武蔵大学教授(社会学)。『階級社会』など。