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http://news.livedoor.com/article/detail/4513843/
宝くじ収益金はどこへ消えた? 天下り法人に“埋蔵金”も
2009年12月20日18時24分 / 提供:産経新聞
産経新聞
「庶民の夢」宝くじ。発売中の年末ジャンボを買い求め、夢の皮算用をしている人も多いだろう。売り上げは1兆円超と莫大(ばくだい)だが、収益がどう使われているのかは、あまり知られていない。当せん金として還元されるのは約45%。残り55%が「胴元」の地方自治体などの収益になり、身近な公共事業に生かされることになっている。ところがその一部は「天下り法人」に流れて元官僚らの人件費に消え、積もり積もった収益が「埋蔵金」と化している実態がある。
■過大な負担金
「霞ケ関は悪代官みたいな組織だ。地方住民の金をどんどん吸い上げて、天下り役人の給料などに使っている。僕より高い。何もしていないのに!」
今年2月、民放の報道番組で、大阪府の橋下徹知事が怒りを爆発させた。
橋下知事がやり玉にあげていたのは、「自治体国際化協会」という団体だ。
地方自治体が共同で昭和63年に設立した財団法人。中学や高校での語学指導助手(ALT)派遣や、自治体の海外交流活動のあっせんなどを主な事業としている。ニューヨークなど海外7都市に事務所を置く。元自治次官の理事長以下、5人の常勤役員が元官僚という「天下り法人」だ。
平成20年度で、役員5人の人件費は約8200万円。運営費を自治体の分担金18億4700万円などでまかなった。橋下知事の怒りもその点にある。
この「分担金」。元をたどれば、年末ジャンボ宝くじの収益だ。
仕組みはこうだ。宝くじの発売計画は、胴元の都道府県・政令市でつくる「全国自治宝くじ事務協議会」が策定。その会議で例年、年末ジャンボ収益の一部から、国際化協会に対して一定額の負担金を出すことが決まる。21年度であれば18億4500万円だ。
この負担額を、前年売り上げ実績に応じて各自治体に配分。各自治体は、入ってきた収益から同額を国際化協会に差し出す−というシステムだ。
「あんなものは東京にとっては全く不要だ。(年間)3億円出しているが、いらないものは削る」。橋下知事が怒りを炸裂(さくれつ)させた直後、石原慎太郎都知事も会見で同調してみせた。
こうした批判が重なり、国際化協会は6月、今年度の自治体分担金を18億4500万円から16億3100万円に減額。役員報酬も、約500万円減らした。
同協会は「批判というより、地方団体も首長給与を削減していることを踏まえた」としている。
■ヒモ付き収益金
宝くじ収益にからむ天下り法人は、国際化協会にとどまらない。
自治体共同で通信衛星ネットワークを構築するなどとして、平成2年に発足した財団法人「自治体衛星通信機構」。芸術・文化振興を図るとして、6年に登場した同「地域創造」が、その代表格だ。
グリーンジャンボの自治体収益から負担金を集める方式で運営費をまかなう。20年度で、負担金は衛星通信機構に約12億7千万円、地域創造に6億3千万円が注ぎ込まれた。元次官ら、総務省関係の高級官僚が天下っているのも、国際化協会と同様だ。
宝くじの自治体収益について、所管する総務省は「法令にある『公共事業等』の範囲内なら何に使ってもいい」(地方債課)と、自由な財源であることを強調。負担金の支出も、自治体側が自主的に決めた形式になっている。
だが、その一部は事実上の「ヒモ付き」で、国所管の天下り法人に流れ込む仕組みができあがっているのも事実なのだ。
■埋蔵金1500億超
こうした法人では、過大な“埋蔵金”の存在も問題視されている。例えば財団法人「全国市町村振興協会」だ。
同協会は、市町村振興のために発売されるサマージャンボの収益金で運営される。
仕組みは複雑だ。収益金は各県ごとにある同協会下部組織の地方協会に、いったん都道府県を経由して配分される。そして各地方協会は、その10%を全国協会に“上納”する。
全国協会は“上納金”を基金に積み立てて運用し、地方協会を通じて市町村などへの融資事業を実施。19年度末段階で、積立残高は約875億円、貸し付け残高は約563億円。合計1550億円超の巨額資産にふくれ上がった。
「災害が起こると市町村は大きな出費が必要。その際の補助に備えている」。全国協会はそう説明するが、交付実績は阪神大震災で10億円、新潟県中越地震でも2億円止まりだ。
実は、この“上納”システムに、地方協会側からも不満が出ており、全国協会は20年度から、上納割合を20%から10%に半減させた経緯がある。
さらに全国協会は同年、新設の財団法人「全国市町村研修財団」へ事業の一部を移管するとともに、“上納金”基金から約876億円を寄付した。
「地方分権時代で、研修など自治体職員のスキルアップが重要。地方の要望に応える形で資金を生かした」(全国協会)。ただ、常勤役員には元官僚が就任し、結果的に天下り法人が1つ増えた格好だ。
■もう一つのルート
各種ジャンボの収益金が自治体を経由し、天下り法人に流れる経路を「自治体ルート」とすれば、「広報ルート」というべき経路もある。
宝くじの売上総額の約6・5%は、印刷や宣伝、抽選会などの経費に用いられる。このうち2%が「日本宝くじ財団」に、1・575%が「自治総合センター」に、それぞれ宝くじの広報委託費として支払われているのだ。
宝くじ財団では、20年度に約183億円の委託費を受領。「宝くじ収益の助成で作った」と明記することを条件に、自治体などへ助成金を出している。「宝くじ号」という派手なバスを見かけることがあるが、この助成で作られたものだ。
助成先には同じ総務省系法人も多い。先述の「自治体国際化協会」に約8200万円▽「消防科学総合センター」に約1億4千万円▽「地域活性化センター」に約2億7千万円▽「地方債協会」に4600万円−などだ。
内容は広報誌やビデオ、ポスターなどの作成費が大半。助成の是非は元官僚や民間有識者でつくる委員会が審査するが、「まず『駄目』となることはない」(宝くじ財団)という。
■事業に疑問符
もちろん、これらの法人の事業は、国民生活に役立っているものもある。だが費用対効果的に必要性が疑わしいものや、重複が目立つのは事実だ。
例えば「自治体職員らの研修」「地方自治の啓発」「国際交流推進」「宝くじの広報」などは、多くの法人が同趣旨の事業を行っている。研修事業には海外視察なども含まれるが、「単なる観光旅行に終始しているのではないか」との批判も根強い。
旧総務庁の特殊法人情報公開検討委員会にも参画した東洋大の松原聡教授は、「特定の公法人が運営を担う他の公営競技に比べ、宝くじは半官半民のあいまいな形で透明性がずっと低い。旧自治省関係の法人に収益がずるずる流れるのは構造上、当然の結果ともいえ、抜本的に仕組みを改めるしかない」と指摘する。
「一獲千金」という動機で買った宝くじでも、その収益はれっきとした公的財産。夢を見るだけでなく、使途にもよく目を光らせるべきだろう。