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日銀総裁発言要旨:広い意味で時間軸的な効果と呼ぶのであれば効果も 12月18日
(ブルームバーグ):
日本銀行の白川方明総裁は18日午後、定例記者会見で、経済・物価情勢について次のように述べた。
――本日の決定の背景について説明して欲しい。
「まず、中長期的な物価安定の理解について説明する。本日の金融政策決定会合では、日銀の中長期的な物価安定の理解についての検討も行った。日本経済がデフレから脱却し、物価安定の下での持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であるという認識の下で、今月初めに臨時の決定会合を開催し、金融緩和を一段と強化する決定をした」
「この機会をとらえ、本措置の背景にある物価安定に関する日銀の考え方をより明確な言葉で表現することが、金融政策に対する国民や市場の理解を深めていただく上で有益だと判断した。具体的には、日銀としては消費者物価指数のゼロ%以下のマイナスの値は許容していないこと、および委員の大勢は1%程度を中心と考えていることを、より明確に表現することにした」
「このような考え方に基づき、物価安定の理解については、消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、委員の大勢は1%程度を中心と考えているとすることにした。言うまでもなく、日銀の金融政策の目的は、日銀法に書かれているように、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することだ」
「今回の世界的な金融危機の経験を踏まえると、物価安定の下での持続的成長を実現する上では、資産価格や信用量の動向など、金融面での不均衡の蓄積も含めリスク要因を幅広く点検していく必要がある。こうした認識は各国においても広がっている」
「日銀としては今回明確化した物価の安定の理解を念頭に置いた上で、さまざまなリスク要因にも十分注意を払いつつ、2つの柱による点検を行い、適切な金融政策運営に努めていく方針だ」
「経済情勢については、先月同様、わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直していると判断した。先般公表した日銀企業短期経済観測調査(短観)はこうした判断を裏付ける結果だったと評価している。具体的に言うと、輸出や生産は内外の在庫調整の進ちょくや海外経済の改善、とりわけ新興国の回復などを背景に増加を続けている」
「企業の業況感は製造業大企業を中心に緩やかに改善している。設備投資は下げ止まりつつあるが、設備過剰感が強い下で当面は横ばい圏内でとどまる可能性が高いとみている。短観の設備投資計画もこうした見通しと整合的だと考えている。個人消費は各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。ただし、個人消費を支える雇用・所得環境は引き続き厳しい状況が続いていると判断している」
「また、公共投資は頭打ちとなりつつある。この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、春以降改善の動きが続いている。すなわち、企業の資金調達コストが低下しているほか、コマーシャルペーパー(CP)、社債市場では低格付け社債を除き、良好な発行環境が続いている。また、企業の資金繰りも中小企業を中心に厳しいとする先が多いものの、改善の動きが続いている」
「物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和した状態が続く中、前年における石油製品価格高騰の反動などから下落している」
「先行きの中心的な見通しは、10月末に公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)から変わっていない。2010年度半ばごろまでは、米欧におけるバランスシート調整や雇用賃金面での調整圧力の残存などから、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものにとどまる可能性が高いとみている」
「その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるため、成長率も徐々に高まってくると予想される。物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定の下、前年上昇した石油製品価格などの影響が薄れていくため、前年比下落幅は縮小していくと考えられる」
「次に、リスク要因については10月末の展望リポートで指摘した点から変わっていない。景気面では、新興国・資源国の経済情勢など上振れ要因がある一方で、米欧のバランスシート調整の帰すうや企業の中長期的な成長期待の動向など、ひところに比べれば低下したとはいえ、依然として下振れリスクがある」
「また、当面は、国際金融面での動きなどが、企業マインド等を通じて実体経済活動に悪影響を及ぼすリスクについても引き続き注意する必要がある。物価面では興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある」
「以上のような情勢判断を踏まえ、金融政策運営にあたっては、極めて緩和的な金融環境を維持していく考えだ」
――物価のマイナスは許容しないという声明文を見て、市場では事実上の時間軸政策ではないかという受け止め方があるが、こうした受け止め方をどうみるか。
「今回の理解の明確化は、日銀としてはゼロ%以下のマイナスの値は許容しないこと、委員の大勢は1%程度を中心と考えていることをより明確な言葉で表現することにより、物価の安定に関する日銀の考え方の一層の浸透を図る措置だ。したがって、先行きの金融政策運営について何らかのコミットメントを行うという意味での時間軸政策とは異なる」
「ただし、展望リポートで示している経済、物価の先行き見通しや、毎回の決定会合後に公表している金融政策運営方針とともに、この物価安定に関する日銀の考え方が一層浸透することによって、いわば、これら全体として、金融市場に金利形成にも相応の影響はあると考えられる」
「これを広い意味で時間軸的な効果というふうに呼ぶのであれば、そうした効果はあると思う。ただし、そうしたことを積極的に狙ってではなくて、先ほど申し上げた枠組み全体として、ということを申し上げたい」
――次に新しい資金供給手段の評価をお聞きしたい。
「これまで2回実施したが、それぞれ8000億円の入札額を大幅に上回る積極的な応札があった。このオペは実質ゼロ金利といえる極めて低い金利水準で、期間3カ月の資金を潤沢かつ安定的に供給することを通じて、短期金融市場における長めの金利の低下を促すことを狙いとして導入した措置だ」
「オペの導入を決定した後、短期の国債レートや銀行間の取引金利など長めの金利が一段と低下している。また、市場の心理もひところに比べ若干落ち着きを取り戻していると思う。従って、新しいオペは既にそれなりの効果を発揮しているとみられる」
――従来の「0−2%程度」という物価安定の考え方に何か問題があったのか。
「従来の表現は、0−2%程度で、委員の中心値は大勢として1%程度となっている、としていた。われわれ自身の理解とは別に、時として日銀がマイナスの領域を容認しているとか、あるいはデフレを容認しているとか、この物価安定の表現の仕方をもって、そういうふうに言われる声が一部にあったことは事実だ」
「これはわれわれ自身の理解とは異なるが、もしそうした誤解があるのであれば、その誤解は解いた方が良いというわけだ。そういう意味で、何か、実質を変えたというわけではない。ただ、われわれが考えていることを正確に伝えるために、あらためてこの表現を点検してみたということだ」
――ゼロ%以下のマイナスの値を許容しないということは、物価がマイナスである限り緩和を続けるということか。
「中長期的な物価安定の理解は、まさにそこに書いてある通り、中長期的ということだ。物価安定が日銀の政策目標である以上、物価安定というものを数値的な意味でイメージをしていくということだ。実際の金融政策運営は、そうした物価安定の状態に関する理解を前提にして、それから将来の見通しを基に政策を運営していく」
「金融政策を運営していくときは、先ほど2つの柱を申し上げたが、物価を通じて点検する面、これはもちろん大事なことだ。一方で、2000年代半ば以降、今回の危機に至るプロセスを振り返ってみてもそうだが、物価は各国で安定していた。むしろ、物価上昇率が低下するディスインフレという中で、低金利が続いた」
「物価は大事だが、物価だけを見ていると、もっと大きな経済全体の不均衡を実は見失ってしまう。したがって、その辺の配慮も大事だということも、今回の危機を通じて一段と明らかになったという感じがする。そういう意味で、足元の物価からストレートに金融政策の運営が決まってくるというものではない」
「これは、いわゆるインフレーション・ターゲッティングを採用している国、採用していない国を含めて、物価安定と考える時期に達する期間としてどういう表現をしているかをあらためて確認してみると、どの中央銀行も中長期ということを強調している」
「たとえば、欧州中央銀行(ECB)は中期という言葉を使っているし、米国はその期間はだいたい5年から6年という形で出している。英国は妥当な時期と書いている。いずれにせよ、多くの中央銀行に共通していることは、物価安定はもちろん大事だが、物価安定だけを見て、足元の物価だけ見て短期的に政策運営をすることは適切ではないということだ」
――広い意味での時間軸効果というのは・・・。
「広い意味での時間軸という言葉は使っていない。しつこいような気もするが、経済、物価の見通しや毎回の決定会合で公表している金融政策運営方針とともに、物価の安定に関する日銀の考え方が一層浸透することは、これら全体として、金融市場に金利形成にも相応の影響はあると考えられる。これを広い意味で時間軸的な効果と呼ぶのであれば、そうした効果はあると思うと申し上げた」
――そうした効果があるということは、金融緩和の強化に該当するのか。
「これはデフレもそうだし、量的緩和もそうだし、時間軸もそうだが、あまり定義論争をやっていくことは・・・、この記者会見の目的は、多分、私と記者の方を通じて国民に分かりやすく伝えていくというだと思う」
「これ自身は、これまで公表している物価安定の理解について、もし誤解があるとすれば、そういう誤解を払しょくすることを通じて、当然それなりの効果が出てくると思うが、いわゆる時間軸効果を狙ってこれを採用したわけではないので、強化という言葉の語感にちょっとそぐわない気がする」
「ただ、いずれにせよ、金利がそういう形で低下をするのであれば、それはそれで経済全体に対して、わずかな、わずかな低下幅かもしれないが、それはそれで影響はあると思う」
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920020&sid=a2NEeas63_T8