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Rueil Infos リュエイユ・アンフォ
フランス人のバカンス
(2004年8月/2005年11月)
昨年(2003年)の今ごろ、フランスでは「猛暑」の話題で持ちきりでした。戦後最高気温を記録した去年は、暑さにあまり慣れていないフランス人にとっては大変な夏だったそうです。今年(2004年)の夏は幸いにも例年並、むしろ涼しい夏を迎えているようでほっとしていることと思います。そうなれば、彼らの関心事はひとつ。特に子供たちが夏休みに入った6月末からは、家庭でも職場でも話題の中心は「バカンス」です。
バカンス期に入ると、公共機関を含め全ての活動が滞ります。郊外へ行く電車やバスは少なくなり、新聞や雑誌も休刊したりページ数が少なくなったりします。毎月東金市へ送られてくるリュエイユ市の広報誌もご多分に漏れず休刊です。今回はそんな「フランス人のバカンス」をご紹介します。
普段の生活を空にする
7月14日の革命記念日を境に、街の雰囲気は変わります。道行くフランス人は少なくなり、パリを中心に外国人観光客が増えてきます。グラン・デパール(大出発)というバカンスへ一斉に出発する波が7月から8月にかけて3回ほどあります。この時は、駅や空港では大きなカバンを持った人が行列し、高速道路では大渋滞が起こるという日本でもおなじみの光景が見られます。商店もレストランも休業し、シャッターには休業期間を書いた紙が貼り付けてあります。パン屋や薬局などは、1地区に1店は必ず営業していなければならないので、彼らは順番でバカンスに出かけます。バカンスの間は遠いパン屋まで車を使って買いに行かなければならないなど、市民の日常生活は少々不便になりますが、フランス人は文句も言わずに列を作りパンを買っていきます。お互い様、というところでしょうか。
では、彼らはバカンスでどこを目指すのでしょうか。人気のトップは海です。フランス人というと、皆が競ってコートダジュールなど有名避暑地へ出かけるような気がしますが、そんな贅沢に過ごす人はあまり多くありません。大体は知名度のない海岸で釣りをしたり寝そべったりして過ごします。山も人気があり、山登りに向かう家族もよく見かけます。もちろん外国へ行く人も多く、今年(2004年)はオリンピックの影響でギリシャへ行く人が増えているそうです。
フランス人のバカンスは日本でいう旅行とは異なります。外国を旅行する場合も含めて多少の名所旧跡巡りはしますが、最大の目的は「のんびりして普段の生活を空にする」ことです。日本人にとって何もしないで過ごすことは難しいかもしれませんが、「何もしないのがバカンス」と思っているフランス人は一日中本を読んだり日光浴をしたりしてのんびりと過ごします。バカンスとは語源的にも「空っぽ」を意味するラテン語のvacuumが起源で、何もしない彼らの過ごし方は正しいのかもしれません。
5週間の有給休暇
フランスは5週間もの長い有給休暇の制度を持ち、これはEUの中でドイツの6週間に次いで2位の長さです。歴史的に見ると、1936年、人民戦線内閣が全ての労働者に年2週間の有給休暇を保証するマティニョン法、いわゆる「バカンス法」を初めて立法化しました。その後、1956年には3週間に、1969年には4週間となり、1982年には5週間へと延長されました。日本人から見ると羨ましい限りですが、これもフランス人が少しずつ勝ち取ってきた苦労の賜物なのです。それゆえ、5週間の有給休暇を消化するのは権利であり、先人の努力に報いる義務のようにさえ感じているのかもしれません。その証拠に、ほとんどの人が1日も残さず消化します。有給休暇取得率が50%程度の日本では考えられないほどです。
休暇の日程は、会社全体や部署の仕事の流れ、本人の希望そして細かい約束事など(例えば、連続取得は最長4週間、また、2週間以上の連続した休暇が必要など)を考慮し雇用者が決定します。
しかし、バカンスは取るものの経済上の理由で出かけられない人も多いのです。「aoûtien(アウシアン)」という新しい単語が1960年代から使われていますが、この単語は「8月にバカンスを取る人」という意味と、「8月にバカンスに出ずに家に残っている人」という反対の意味を持っています。権利として休暇を取ったもののお金がなく、見栄を張ってバカンスに出たかのように家のシャッターを閉めたままにしておいた人が多かったことの表れです。
現在は、政府が補助するようになり状況はかなり良くなりました。政府は経済面からだけでなく国民が楽しく安全にバカンスを過ごせるよう、国土環境などを保全する努力もしています。
私たち日本人から見ると、みんなが夏の間、一斉に長い休みをとったら経済はどうなるのだろうと他人事ながら心配してしまいます。心配はご無用と言いたいところですが、実はバカンス中は仕事にならず政治経済の全体が停滞してしまいます。例えば2003年、ヨーロッパの猛暑では大きな被害がでましたが、その時も大統領を始め政府高官、医療関係者がバカンスをとっていたため処置が遅れたという問題が生じてしまいました。
長く楽しいバカンスにも終わりがあります。8月の末から9月第1週に、最後のUターン・ラッシュが発生してバカンス期の終わりを知らせます。市内の交通量が増え次々と店が開き、町が活気を取り戻し始めます。人々は友人と久しぶりに会い、キャフェでバカンスでの出来事を語り合います。子供たちはすぐに通常の授業が始まるので大変です。
「1ヶ月のバカンスのために11ヶ月働く」と言われているフランス人。そんなに遊んでばかりでいいのかしらという私たちの心配をものともせず、彼らは今年のバカンスが終わるとすぐに、来年のバカンスを目指して貯金を始めることでしょう。