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政治主導の意思決定の怖さを感じるGDP統計の作成方法見直し検討の表明(KlugView)2009/12/10 (木) 15:34
12月10日、内閣府の津村啓介政務官は、機械受注統計の記者会見で、国内総生産(GDP)統計の発表時期や作成方法の見直しについて検討する方針を明らかにしました。津村氏は、記者会見にて「08年度のGDP確報値にもミスが見つかり、統計の信頼性を高める観点から整理する必要がある」と述べています。
津村氏がGDP統計の作成方法等の見直しを表明した理由の一つに、2009年7-9月期GDPの修正があります。12月9日に発表された2009年7-9月期の実質GDP(二次速報値)の伸び(前期比年率)は、11月16日に発表された一次速報値より3.5%も下方修正されました。一次速報値では加味されない法人企業統計にて、設備投資や在庫投資が大きく減少したことで、GDP全体も下方修正されたためです。
マクロ経済指標に詳しくない方々と話をすると、一次速報値と二次速報値との間に大きな乖離があることに違和感を抱く方が大半でした。同じ統計なのだから、一次であろうが二次であろうが、大きな違いがあるのは不自然、という考え方は、一般の方であれば当然かもしれません。
しかし、一次速報値と二次速報値との間に大きな乖離が生じることを理由にGDP統計の作成方法を見直すのは、あまり合理的なこととは思えません。一般の方々の気持ちは理解しますが、速報値が二段階に分かれている以上、大きな乖離が生じることは承知したうえで統計を利用すべきと思われます。
現在の推計方法を採用したのは、公表が遅れがちだったGDP統計の速報性を高めるためでした。統計は速報性を高めれば高めるほど、推計誤差が大きくなり、速報性を無視すれば、ある程度、誤差を小さくすることも可能です。しかし、統計は正確であれば公表が遅くてもよい、というわけではなく、できる範囲で速報性を高めることも重要です。
今回、二つの速報値に大きな乖離が生じる原因となった法人企業統計は、調査対象企業数が多いこともあり、公表タイミングが遅れ気味の統計です。ただ、正確なGDPを推計するにあたり、法人企業統計はGDPを推計する際に必須といっていいほど重要な統計ですので、法人企業統計を使わずにGDPを推計することは現実的ではありません。
そこで内閣府は、2002年8月に推計方法を現在のものに変更することを公表しています。当時、内閣府は、欧米諸国に比べ公表が遅れ気味である日本のGDP統計の速報性を高めるべく、迅速に得られる統計のみを用いて一次速報値を作成し、その後、法人企業統計など公表が遅れ気味の統計を使って精度の高い二次速報値を作成する二段階方式を採用しています。
あくまで邪推でしかありませんが、GDP統計の作成方法見直しの検討を表明した津村氏は、こうした経緯をよく存ぜず、同じ統計なのに二つの速報値との間に大きな乖離が生じていることを問題視した気がします。また、津村氏が指摘した08年度のGDP確報値の誤りは、(内閣府が公表した理由によると)人的要因によるものであり、GDP統計の作成方法を見直すべき理由になるとは思えません。
経済統計を使って物事を考える人間としては、今回の件をきっかけにGDP統計の作成方法が見直され、せっかく速報性が高まったGDP統計が、以前のように速報性がないものになることを非常に懸念しています。政権交代により、行政の意思決定が官主導から政治家主導になることを否定するつもりはありませんが、官僚という専門知識を有するスタッフを使わずに意思決定する怖さは、こんなところでも表面化するのだと勉強させられます。
村田雅志(むらた・まさし)
●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●
GDP統計の一次速報値と二次速報値が乖離する理由は何?
●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●
二次速報値の作成には法人企業統計が用いられるため
(一次速報値では用いられない)
http://www.gci-klug.jp/klugview/2009/12/10/007657.php