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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2252
日本はまだ、債務が原因で極貧に陥る運命と決まったわけではない。 それは今、巷で一番話題のショーだ。人々は行列をなし、靴をスリッパに履き替え、テレビカメラが回っている体育館に入る。彼らが見にきたショーは、人気テレビ番組「ドラゴンズ・デン」(日本で放送された「マネーの虎」の英国版)とよく似ている。 しかし、大事なプロジェクトへの出資を求めるのは、起業家ではなく官僚で、承認か却下かを決めているのは政治家だ。これが日本流の財政均衡術である。
鳩山由紀夫首相率いる新政権は、大規模な支出計画を掲げて政権の座に就いた。その財源については、ライバルである自民党を半世紀も政権の座にとどまらせるのに一役買ってきたような「無駄な支出」の削減により確保したいと考えている。 テレビ視聴者の反応を見る限り、一般国民は感銘を受けているようだ。問題は、日本の財政赤字が2010年にGDP(国内総生産)比10%、額にして約50兆円に届こうとしているという点にある。事業仕分けのようなジェスチャーは、言ってみれば、爪楊枝を使って大きな穴を埋めようとするようなものだ。 つまり、経済成長が力強い回復を見せるか、政府が支出公約の一部を断念しない限り、日本は財源不足を補うために、来年度はさらなる国債発行を行う必要に迫られる恐れがある。 政府の借り入れ増加観測から、このところ国債市場は不安に怯えている。この不安は、来年度には総額ベースでGDPの2倍に達すると予測されている日本の公的債務の大きさを反映したものだ。純額ベース(政府の金融資産を差し引いた値)では借入金は小さくなるが、それでも経済協力開発機構(OECD)加盟国の中では最高レベルにある。
最近、国債の利回りがじわじわと上がったことを受け、ウォール街のいくつかの銀行は、債務返済コストが日本の大きな障害になる恐れがあるとの警告を発した。デフレ圧力の高まりを示す証拠と、人口が減りゆく日本は債務を返済するのに十分な成長を維持できなくなるという予測が、こうした主張を補強する材料になっている。 例えばJPモルガンは、日本の10年物国債利回りが今後10年間でわずか1ポイント上昇するだけでも(同時に社会保障をはじめとする財政支出の結果、財政赤字が年々増え続けるなら)、累積債務の増加により、政府の返済コストは3倍に膨れ上がると試算している。 またJPモルガンは、高齢化により家計の貯蓄額が減少し、2014年までに経常収支が赤字になる可能性についても触れている。そうなれば、日本が借り入れ需要を満たす際に外国人に頼る度合いは大きくなるかもしれない。 弱気筋でさえ、日本が近い将来破綻する可能性はほとんどないことは認めている。彼らが落ち着いていられる理由はいくつかあるが、特に大きいのは、過去15年間に日本人の国債保有者が示してきた、驚くほどの忠誠心である。 一部の推計によると、日本国債の93%以上が国内で保有されている。つまり、政府は紙幣を増刷するだけで負債を返済していけるため、決してデフォルト(債務不履行)しなくていいということだ。
巨額の累積債務を抱えているにもかかわらず、GDPに占める返済コストの割合が他のOECD加盟国よりも比較的低い状態にあることも、国債保有が国内に偏っている「ホームバイアス」で説明できる(図参照)。 直近の金利上昇のピーク時でも、10年物の日本国債の利回りはたった1.43%という低率だったが、デフレ環境下においては、実質ベースで考えれば、国内投資家にとってはまだ魅力的な金利と言える。さらに日本政府は世界最大の債権者であり、売却できる海外資産を豊富に所有している。 また、日本の家計は1410兆円もの個人金融資産を抱えている。これらは政府の負債額を優に超えている。政府が窮状に陥った場合は、最後の手段として個人資産に重税を課すという策を取ることもできる。 確かに、日本が経常赤字に陥るようなことがあれば、海外の債権者への依存が高まるだろう。しかしそれは、世界経済が悪化し、なおかつ原油価格が高騰した場合に限られる――この2つが同時に起きるとは考えにくい。 それよりも可能性が高いのは、経常収支の悪化が円安を招く事態だろう。円は11月26日、ドルに対して14年ぶりの高値をつけた。 問題は、国の借金については落ち着いた態度を崩さない向きですら、日本経済の他の側面については非常に悲観的なことだ。ドイツ銀行は、財政赤字、経常黒字、円高、デフレ、低い名目金利、景気停滞で構成される「鉄の六角形(iron hexagon)」について言及している。 同行系列のドイツ証券でチーフエコノミストを務める松岡幹裕氏は「日本経済がたどる最も現実的な道筋は、破綻ではなく、持続的な衰退か冬眠状態だ」と述べている。
冬眠状態は何も目新しいことではない。1991年以降、名目GDPは年間0.1%ずつ成長してきた。2009年第3四半期(7〜9月期)には、日本の実質 GDPは前期比1.2%増と、G7諸国の中で最も大幅な成長を見せたが、その一方で名目成長率はデフレの致命的な影響を受け、前期比0.1%減となった。 デフレは別の逆風も引き起こしている。厳しい景気後退から抜け出したばかりの国にしては、実質金利が異常なほどに高くなっているのだ。このデフレ状態が続く限り、GDPに対する債務比率は今後も着実に悪化するだろう。 これが意味しているのは、当局は昏睡状態の経済に刺激を与え、円を安くし、経済を再膨張させる思い切った対策を取るべきだ、ということだ。しかし奇妙なことに、日銀は穏やかなデフレの汚名よりもインフレの再燃の方が、自らの信用を傷つける危険性が高いと考えているようだ。デフレスパイラルが起きない限り、経済はいずれ自然に回復すると日銀は信じているのだ。 鳩山政権は、長期的な債務返済どころか、景気回復を持続させる方法についてさえ、まだほとんど検討を始めていない。選挙のマニフェストの「経済成長戦略」にしても、後付けのように盛り込まれたものだった。 アナリストたちは、同政権は来夏の参議院選挙に勝つことばかりに気を取られているため、経済政策に対しては日和見的な態度しか取れないと見ている。日本は、短期的には刺激策を、長期的には緊縮財政に向けた信頼に足る政策を必要としている。今のところ、日本にはそのどちらもない。
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