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http://www.y-asakawa.com/message2009-1/09-message69.htm
(11月27日)
建設が止まったドバイのビル群 (ロイター)
サウジアラビアに隣接し、アラビア海に面した地にドバイという国がある。首都はカタール。石油価格の高騰にわき、高級リゾートマンションや高層ビルラッシュに湧いていたのがつい数年前。石油の下落とリーマン・ショックによる世界的な景気後退によって、建築中のビルは軒並み工事がストップ、今、街の一角は幽霊ビルが林立したまま荒んだ状況を呈している。
ここに来て、ドバイ政府が株を保有する政府系の不動産開発会社ドバイ・ワールドやナヒール社が資金繰りに行き詰まり、債権者に返済の延期を要請する事態に至った。当面の返済額は5兆円ほどであるが、債務総額は20兆円規模に達していると言われている。
こうした状況は、ドバイの隣国アラブ首長国(UAE)でも発生し始めているが、問題は両国への融資をしているのが東欧・北欧を含めたヨーロッパ諸国やロシアの銀行であることだ。
これらの銀行はアメリカの商業銀行のように巨大銀行でないために、痛手は大きく、破綻する銀行が出るのではないかと危惧されている。昨夜のヨーロッパの株式市場の急落状況を見るとその衝撃の強さが分かる。バークレイズやドイツ銀行、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドなどが、いずれも4%を超す下げとなっている。
アメリカはFRBがドルを刷りまくって景気後退懸念を隠しているが、ヨーロッパ各国は欧州連合に加盟しているためにそういったことが出来ない。それゆえ、ドバイやアラブ首長国の倒産劇が広がってくると、その打撃は大きく、新たな金融危機がヨーロッパから始まり出すことになりかねないのだ。
火の粉は欧州だけに飛んでいるわけではない。実は、我が国にとっても対岸の火事というわけにはいかないのだ。今回の倒産劇で心配なのは、日本の大手ゼネコン数社が両国の不動産開発に関わっている点である。ビル建設だけでなく、高速道路や地下鉄工事などのインフラ事業に総額で8000億円を上回る資金が投入されていると言われており、あるゼネコンは春先から資金回収が出来なくなったときの問題が話題になっていただけに、来春の決算発表が気がかりとなってきた。
こうして遠く離れたアラブの国の動向が一瞬にして世界に波及し、銀行や企業に大きな影響を及ぼすのである。グローバル化と言えば聞こえはいいが、一旦火の手が上がるとマイナスのエネルギーがスパイラル的に世界に広がるだけに、世界の隅々の出来事から目を離すことが出来なのである。
世界銀行や各国政府は景気後退の底打ち宣言を発表しているが、それは各国の景気刺激策による一時的な底打ち感に過ぎず、リーマン・ショックによって世界に広がった本当の傷口はこれから本格的な膿(うみ)が出始めることになるのだ。
その一例が今回の中東諸国の不動産破綻劇である。年を越した当たりから、こうした出来事の発生を契機に、景気後退の大きなうねりが始まって来ることなるなりそうである。
ドバイ政府系企業の債務問題で欧州市場に動揺
ロンドン 26日 ロイター] 25日浮上したアラブ首長国連邦(UAE)ドバイ政府系企業の債務問題に欧州で動揺が広がった。26日の欧州株式市場では、エクスポージャー(投融資)のある銀行や中東から出資を受けている企業が売られた。
ドバイ政府は25日、ドバイ・ワールドと系列の不動産開発会社ナヒール[NAKHD.UL]が抱える数百億ドルの債務について、債権者に返済の延期を認めてもらうよう要請すると発表した。
26日の欧州株式市場は急落。FTSEユーロファースト300種指数は3.31%下落し、3週間ぶり安値で引けた。DJユーロSTOXX欧州銀行株指数は5.04%安と5月中旬以来、最大の下落率となった。
ロンドン証券取引所(LSE)など中東勢を大株主に持つ企業は、債務返済のため保有を減らされるのではないかとの懸念から売られた。
動揺が広がるヨーロッパの証券市場 (ロイター)