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http://blog.goo.ne.jp/memo26/e/aaa6508d9a060374bb537ac8e75c70d4
FRB の金融緩和は効くのか
2009-11-22 | 日記リチャード・クー&村山昇作 『世界同時バランスシート不況』 ( p.145 )
〇九年の春から景気回復への期待感を手がかりに株価が上昇したが、同じ期待感は人々のインフレ懸念を拡大することにもなった。最近、市場で急浮上しているこのインフレ懸念も、バランスシート状況に対する無理解が原因になっていると思われるので、コメントしたい。
今回のインフレ懸念は主に三つの要因が背景にある。それらを順番に挙げると、まず、今回の金融危機に対応するために各国の中央銀行が行ってきた巨額の流動性供給がある。実際、現在のFRBのバランスシートは、数年前では想像ができないくらい膨張してしまっている。
次に、この巨額な流動性の供給に加え、各国の政府債務が、これも数年前では考えられなかった規模で拡大している。現時点で英米両国とも財政赤字はGDPの一二%を超えており、日本を含め他の国々の財政赤字も急拡大している。
これに加え、ここ数か月は石油価格や一部の商品価格が上昇し、金の価格もずっと高水準を維持していた。こういったことが人々のインフレ懸念に火をつけ、実際にかのグリーンスパン氏は、英フィナンシャルタイムズ紙 ( 六月二十六日付 ) でインフレ問題が今後、各国経済が直面する最大の問題になりかねないと警告している。
(中略)
しかし、歴史を細かく見れば、政府が巨額の財政赤字を出し、中央銀行が国債を買いながら巨額の流動性を供給したにも拘わらず、全くインフレにならなかった事例がある。そしてこの事例こそが、まさに過去一五年間の日本である。日銀は一九九〇年からの一五年間で、中央銀行が供給する流動性であるハイパワード・マネーを三倍にしたにも拘わらず、物価は全く上昇しなかったばかりか、九〇年代末からは上昇率がマイナスになり、デフレが騒がれる事態となった。本来ならハイパワード・マネーを三倍にすればインフレが三〇〇%になっても不思議はないのに、全くそうならなかったのである。
また、そのデフレを止めようとクルーグマン氏のような欧米の学者たちは日銀に量的緩和を要求し、最後は日銀も渋々それを受け入れて、二〇〇一年から銀行準備を当初の五兆円からその六倍の三〇兆円にまで拡大した。それにも拘わらずこの間、経済活動も資産価格も減少を続け、当初欧米の学者たちが想定したようなインフレは全く発生しなかった。本来なら銀行準備を六倍にすればマネーサプライも六倍になって不思議はないのに全くそうならなかったのである。
この量的緩和が空振りに終わった理由は、以前から多くの日銀や国内の市場関係者が指摘していたように、日本国内に民間の資金需要が全くないということであった。つまり、中央銀行の資金供給がインフレをもたらすには、その供給された資金を民間が積極的に借りて使っていかなければならない。そのような民間の行動があってのみお金は回り出し、需要が増えていくからだ。
ところが当時の日本は、バブルの崩壊で借金だけが残った民間がバランスシートの修復を最優先しており、過剰債務を抱えた民間はゼロ金利でもお金を借りようとしなかった。だからこそこの一五年間、ゼロ金利も量的緩和も全く景気浮揚効果を持たず、空振りに終わってしまったのである。
このことは、バランスシート不況下では金融政策に期待するものは何もないということだが、このことは日銀が量的緩和を解除した二〇〇六年に再び証明された。
当時は、日本がバランスシート不況にあることに気付いていなかったIMFを含む多くの人々が、日銀が量的緩和を止めることに反対したが、実際に量的緩和を止めても何も起きなかった。当時、多くの人たちは長期金利が急上昇することを心配したが、解除直後に二〇〜三〇ベーシスの上昇はあったものの、その後は解除直前と同様の一・五%台という人類史上最低水準に戻ったのである。その結果、人々が心配した国債の暴落は起きなかった。
この日本の事例は、民間が債務の最小化に向かっているバランスシート不況下では、量的緩和をやっても大きな効果はないし、また、量的緩和を中止しても大きな影響はないということを証明しており、このことは今回の世界金融危機にも重要な教訓を含んでいる。
つまり、いまの米国ではゼロ金利下で資金需要が落ち、家計の貯蓄率が急上昇しているが、このことは同国がバランスシート不況下にあるということを示している。このような不況では、前述の日本と同様、FRBの金融緩和が効く理由はほとんどない。金融緩和が効く理由がないということは当局が供給したお金が回らないということであり、そのことはインフレになる理由もないということになる。
逆に言えば、よほど同国のディレバレッジが短期間に完了し、家計の貯蓄率が再び急低下することを見込まない限り、FRBの金融緩和がインフレにつながる可能性はほとんどないということになる。
過去一五年間の日本は、政府が巨額の財政赤字を出し、中央銀行が国債を買いながら巨額の流動性を供給したにもかかわらず、インフレにならなかった事例である。この事例は、バランスシート不況下で量的緩和をやっても大きな効果はなく、量的緩和を中止しても大きな影響はないことを証明している。
いまの米国はバランスシート不況下にあり、FRBの金融緩和が効く理由はほとんどなく、インフレになる理由もない、と書かれています。
バランスシート不況においては、金融緩和はほとんど効果がない、という部分は、すでに見てきていますので、問題はないと思います。
また、金融緩和を中止しても、ほとんど影響はない、という部分も、効果がないことをやめるだけなので、そのまま認めてよいと思います。
問題は、「いまの米国はバランスシート不況下にあり、FRBの金融緩和が効く理由はほとんどなく、インフレになる理由もない」 のか、です。
すくなくともバーナンキ議長は金融緩和が効くと思っており、また、インフレになるかもしれない、と思っているわけですから、この部分を考えます。
まず、金融緩和が効くのか、から考えます。著者の考えかたは、次第に支持を得つつあると思われますが、「米中の政策スタンス」(http://blog.goo.ne.jp/memo26/e/15ededa7530234ed946d04c1e6675497) で引用した報道記事でわかるとおり、バーナンキ議長は、「貸し渋りと失業率の高止まりが景気回復に制約を課している」 と言っています。
バランスシート不況の特徴は、「借り渋り」 ですから、「貸し渋り」 が起きているのであれば、米国は、バランスシート不況ではない、と考えられます。
ここで、考えられる可能性は、
「借り渋り」 が起きている ( バーナンキ議長の勘違い )
「貸し渋り」 が起きている ( リチャード・クーの勘違い )
「借り渋り」 と 「貸し渋り」 の両方が起きている
です。まず、バーナンキ議長は、実態を知り得る立場にあり、当然、実態を知っているはずですから、この点に関して、バーナンキ議長の勘違い、という可能性は、考え難いと思います。次に、リチャード・クーの勘違い、という可能性についてですが、米国も日本と同様、巨大なバブルが崩壊しましたので、「借り渋り」 は発生していると考えてよいと思います。したがって、
「借り渋り」 と 「貸し渋り」 の両方が起きている
と考えるのが、実態に近いと思われます。これは当然のことで、どんなときにも ( 景気がよいときにも ) 、「借り渋る」 人・企業もあれば、銀行が 「貸し渋る」 人・企業もあるわけです。要は、その、どちらの影響が大きいか、なのですが、
影響の度合いは、実態を細かく調べないと ( データがないと ) わからない
と思います。結局、ここでは 「わからない」 と結論しておきます。
次に、インフレになるか、ですが、金融緩和が効くのかどうかがわからないのですから、こちらについても、「わからない」 と結論せざるを得ないと思います。
なお、これに関して、「わからない」 以外の答えも用意してはいるのですが、( 推測にすぎないので ) とりあえず、いまは書かないでおこうと思います。