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http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20091118/196063/?P=1
2009年11月18日
住宅業界も例外ではなく、法的規制が多い。住宅は「高い買い物」であるし、そこに住む人たちの健康や安全を守らなければならないものであるから、一定の規制が必要なことは理解できる。しかし日本の場合、行きすぎた規制のために国民がしわ寄せを受けている。たとえば建材一つとっても、世界の最適地で生産したものを最適な価格で購入できることがベストだが、日本では規制のためにそれが難しく、結果として国民は不当に高い住宅を買わざるを得ないのが現実である。
世界に名だたるトヨタ自動車は10月23日、100%子会社であるトヨタホームに住宅事業を集約し強化すると発表した。トヨタ本体にある住宅の企画・技術開発・生産部門をトヨタホームに2010年10月までに移管し、企画から生産・販売まで一貫して手がける体制にするという。
わたしはこれを住宅関連の規制を打破する好機と見ている。トヨタの強みを生かしながら他社にない住宅づくりができれば、この業界は大きく変わるだろう。トヨタグループなら無駄な規制を撤廃することもできるはずだ。
自動車事業の改革と同時に、住宅事業で世界トップを目指す
トヨタはこれまで住宅の企画・技術開発・生産を行い、自動車部門とのシナジーを図ってきた。その事業をトヨタホームに集約するのは、まずはトヨタが自動車の事業改革に専念するためであろう。しかし、この住宅事業の統合計画が、余計な事業は外に出すという目的だけではないはずだ。今後、トヨタグループとしての中核事業に育てる狙いがあるのではないか。
最初に住宅業界の現状を見ておこう。国土交通省の10月末発表によると、2009年度上半期の新設住宅着工戸数は、前年同期比33.9%減の38万4175戸だった。1965年以降、上半期ベースで見ると戸数が最低、減少率も最大となった。
こうした厳しい環境のもとで、トヨタは住宅事業の強化に取り組むわけである。そこにあるのは「国内の住宅産業には期待が持てない」という観測であり、「今後は海外へ積極的に進出し、メジャーな事業を手がけることも必要だ」という判断であろう。トヨタの住宅事業を考えるとき、ミサワホームの存在を忘れてはならない。トヨタ自動車がミサワホームの株式の13.4%を持っている。最近のミサワホームの経営はトヨタがバックアップしないとおかしくなってしまう状況にあった。トヨタ自動車社長の豊田章男氏の頭にあるのは、おそらくトヨタホームとミサワホームを将来的に統合して、両者の技術や経験を持ち寄って大きな住宅会社にしたいという思いだろう。
初代・豊田佐吉氏(1867-1930)が世界初の自動織機を作って拡販に成功。その長男の喜一郎氏(1894-1952)が豊田自動織機製作所(現在の豊田自動織機)内に設立された自動車部の中心人物として活躍し、その後、トヨタ自動車工業の第2代社長に就任する。いわゆる「一代一業」と言われる豊田家の伝統の始まりである。そして1975年には当時の豊田英二社長の頃に住宅事業部が発足している。初代の佐吉氏から数えて4代目、曾孫にあたる章男氏(1956年生まれ)にしてみれば、自動車事業の再構築という重い課題が目の前にあるのも事実だが、住宅事業でも世界トップを目指す、という目標を掲げて4代目の存在をアッピールしたいところだ。
誰もが知っているように、日本の住宅は欧米と比べると狭いうえに価格が高い。次のグラフに示したように、日本の戸建住宅の平均価格が3700万円であるのに、欧米諸国はその5〜6割程度である。もちろん日本と欧米とでは床面積などの諸条件が異なるので単純な比較はできないが、わが国の住宅が貧弱な割に高価であることは確かだ。
【身をもって体験した日本の住宅業界の無意味な規制】
プアな住宅事情に国民が甘んじているのは、やはり冒頭でも述べたように、無意味な規制が山のようにあるからだ。何しろ建築規制、防火規定、水回りの規制など、至るところに規制が張り巡らされており、これが住宅の高コスト化を招いている。規制の主なものを次の表にまとめてみた。
わたし自身の体験を紹介しておこう。以前、わたしは千葉市稲毛区にあるアクティブシニアのために施設「スマートコミュニティ稲毛」の建設プロジェクトに参加した。建材や設備・機器は、性能や耐久性が同じなら安いに越したことはない。そこでシンガポールやタイ、イタリア、オーストラリアといった国で安価な資材を仕入れて、それを日本に持ってこようとした。
だが、行政はそれを認めてくれなかった。ガラス、アルミサッシ、石膏ボードなどでは耐火性の認証がとれてないとか、便器や洗面台などではJWWA(日本水道協会規格)のマークがないといった理由で、通水しない、などさまざまことがあった。結局、ウオーターシャワー付き便器は日本からタイに輸出し、それを組み込んだ浴室・台所ユニットを再びタイから日本に持ち込む、というコストのかかる方法を取らざるを得なかった。世界で最も安くて良いモノを労賃の安い国で組み立ててそれを日本に持ち込めば住宅は半値で建つ。
坪30万円で立派な家が建つとなれば、30坪の家をリフォームするのと値段は対して変わらない。古い家の建て替えや、若い人にも十分支払える金額となれば、日本中が再び建設ブームで沸くことになる。トヨタにとっては従来の家の建て方なら住宅市場は衰退マーケットであるが、このようなイノベーションを込めてやれば、自動車を上回る巨大市場への参入となる。その住宅市場にトヨタらしい参入の仕方を考えることこそ、豊田章男新社長に相応しいテーマ、と言うことになる。
40年前、トヨタがアメリカに「パブリカ」や「カローラ」で進出した時にはGMとの差が20倍もあり、またアメリカのクルマはタンクのように大きかった。その矛盾を突いてトヨタはクルマとはかくあるベシ、という主張を貫いて世界一のポジションを獲得した。今の日本の住宅業界を見ると、当時のデトロイトのクルマ作りと同じくらい顧客目線から離れた規格と値段になっている。トヨタが原点に帰ってその「良いモノを安く」の精神で日本の住宅産業に革命を起こす、というのが、私の期待するトヨタの住宅産業戦略ということになる。
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