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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2145
(2009年11月13日付 )
日本の株式市場では以前から、「内と外」の違いが1つの特徴になっていた。同じ出来事であっても国内の投資家と外国人投資家とでは見方が割れるという意味だ。今冬は、この国内勢と「ガイジン」勢の見解の相違が国債市場でも起きている。
ここ数週間、ニューヨークやロンドンの資産運用会社の間では、日本の財政の持続可能性を巡って激しい議論が展開されている。とりわけ熱を帯びているのは、向こう数年間で大量に発行されるだろう日本国債を投資家が吸収できるかどうか、という議論だ。
【「日本の財政は一線を越えてしまった」】
外国人投資家の間で、日本の財政に対する懸念が強まっている(写真は衆院予算委員会で答弁する鳩山首相)〔AFPBB News〕
例えば、強い影響力を誇る米系ヘッジファンド、グリーンライト・キャピタルのデビッド・アインホーン氏は先月、日本の財政が「一線を越えてしまった」可能性があると警告し、大変な議論を巻き起こした。多くの外国人投資家が抱いていた懸念を見事に言い当てていたことなどがその背景にある。
日本の国内投資家はこれまでのところ、はるかに楽天的であるように見える。大半の金融機関が国債を買い続けているうえに、日本人投資家の大半が、少なくとも短期的な市場の見通しはかなり良いと考えているようだ。
国内勢と外国人勢の見解の相違は、日本国債の現物市場と「スワップション*1」セクターの比較に垣間見ることができる。
国債市場(95%を国内投資家が保有している)では、ベンチマークとなる10年物国債利回りが11月上旬に1.48%という5カ月ぶりの高水準に上昇した。注目に値する動きではあるが、10年前に見られたものほど劇的な変動にはならず、11月12日にはこれより若干低い1.37%で取引を終えた。
【国債現物市場とスワップション取引の歪みが物語るもの】
ところが、10年物スワップションの取引ではアインホーン氏の警告が材料視され、3.6%だったボラティリティー(変動性)が4.5%という異常な水準に跳ね上がった。現在もかなり高いレベルにあり、現物市場との間には通常では見られない大きな歪みが生じている。
2〜3年前であれば、そのような歪みはあっという間に解消されると大半の市場関係者は考えたかもしれない。
*1=権利行使日に一定条件のスワップ取引を行うことができる権利を売買するオプション取引のこと
その理由はいくつかあるが、特に重要なのは、日本市場にはレラティブバリュー系のヘッジファンドが数多く乗り込んで取引をしていたことである。しかし、世界金融危機の結果、レラティブバリュー系のヘッジファンドはほとんど撤退してしまった。
従って、スワップションセクターの変動と現物市場との間に見られるズレは、外国の大型マクロファンドが最近になってこの取引に進出したことを反映していると考えられる。日本国債を空売りし、いわばアインホーン氏のコメントを実践しているというわけだ。
【「いずれは我が身」と外国政府も注視】
このパターンがいつまで続くかは定かでない。ただ、外国の政策当局者や投資家は、日本国債を巡る状況への関心を日増しに強めている。英国などでも国債の発行残高が増加しており、政治にも不透明感が生じる恐れがあることから、いずれ日本と同様な状況に直面するかもしれないと考えているのである。
日本では、デフレが続いているために、国債以外に投資先がなかった〔AFPBB News〕
日本国債の利回りはここ数年、全般に低位で安定してきた。デフレが続いているために国内投資家には購入すべき資産がほかにほとんどなかったこと、自民党政権下では国の財政計画が比較的予測可能であるように見えたことなどがその理由である。
ところが、今年8月の総選挙で民主党が初めて政権を獲得したことで、予算編成作業の行方は劇的に読みにくくなった。民主党はまとまりが悪いうえに、官僚主導の予算編成作業を変えようとしているためだ。
しかも、民主党が改革に取り組んでいるその最中に、今年度の税収が落ち込んで歳入欠陥となる可能性も浮上した。景気の悪化と、自民党中心の前政権による過大な支出がその原因で、このことも今後の国債発行額を押し上げる恐れがある。
【利回り上昇は借金大国日本に大きな痛手】
さらに、金利上昇が続けば、日本国債を巡る状況は一段と厳しい――そして予測しづらい――ものになりかねない。というのも、日本の債務負担は極めて大きい――GDP(国内総生産)比200%に迫っている――ため、金利が徐々に上昇するだけでも元利返済に要するコストは大幅に増える可能性があるのだ。
バークレイズ・キャピタルによれば、利払いを含む「国債費」は既に、今年度(2010年3月期)の一般会計歳出総額の約25%という記録的な水準に達している。
「(問題の)1つは、今のところ政府による明瞭な議論がなされていないことだ。すなわち、中長期的な財政目標について全く説明がない。これでは先行きに対する自信が市場に生まれてこない」。バークレイズ・キャピタルのシニア債券ストラテジスト、ステファン・リーチャヌ氏はこう語る。「今は新発債が供給過多であるうえに、発行残高も以前よりはるかに多くなっている」
ここ数日、民主党政権の一部が外国人投資からのこうした懸念に理解を示し、対策を講じようとする兆しが出ている。
【財務相発言でひとまず収まったが、問題は長期の財政展望】
藤井裕久財務相は11月10日の閣議後の記者会見で、最近の長期金利の上昇傾向について「非常に危惧している」と強い懸念を表明した〔AFPBB News〕
例えば藤井裕久財務相は、長期国債利回りの上昇は国債費の増加に結びつく危険性を孕んでおり、非常に気にしているとの認識を示した。また来年度の新規国債発行額について、本年度の44兆円を下回るようにしたいとも語った。
藤井発言も手伝って、日本国債の利回り上昇はひとまず止まった。少なくとも短期的には、国内投資家の大部分が、国内銀行の大量購入によって国債市場は強い状態が続くと見ている。
「この経済環境だから、事業会社は設備投資を控えている。その結果、銀行には預金が積み上がっており、これが国債投資に向かっている」。日本の大手資産運用会社DIAMアセットマネジメントで機関投資家のための債券運用を担当しているエグゼクティブ・ポートフォリオマネジャー、枡田明敏氏はこう語る。
また同氏によれば、生命保険会社はまだ資産と負債のミスマッチ修正に取り組んでおり、それによって長期債の需要が維持される可能性もあるという。
しかし、本当に重要な問題は、中期的な展望だ。特に、景気がある程度回復して銀行(あるいは、ほかの投資家)が日本国債以外の資産に投資したいと考え始めたらどうなるか。
「リスクがあるのは、長期だ」と枡田氏は言う。「国内投資家は今後、民主党政権が彼らの信頼を勝ち得ながら、政権公約を実行し、財政を健全化していけるかどうかに注目していく。できないかもしれないと国内投資家が思い始めたら、その時はやはり問題になる」
By Lindsay Whipp and Gillian Tett