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財政膨張で「日本リスク」―CDS・オプションが示す円売りマグマ 11月16日
(ブルームバーグ):
日本の財政規律に対する不安が払しょくされない。
クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場では日本国債の保証コストが7カ月ぶりの水準まで上昇。今後、財政再建への道筋が見えないまま、日本の格下げリスクが表面化した場合、株・債券・円がともに売られる「日本売り」のシナリオも考えられ、通貨オプション取引では円の先安観の高まりを示唆している。
日本では税収の大幅減収に伴い、今年度の新規国債発行額が過去最大の50兆円台に膨らむ見通しだ。来年度の概算要求額は、子ども手当など民主党がマニフェスト(政権公約)で掲げた新政策を盛り込んだ結果、95兆円超に膨張。政府は「事業仕分け」などで歳出削減に切り込み、来年度の新規国債発行を44兆円以下に抑制するとしているが、景気の下振れリスクが残る中、財政膨張を懸念する声は根強い。
ソシエテ・ジェネラル銀行外国為替本部長の斉藤裕司氏は、「海外投資家には『日本リスク』を見る向きも増えており、日本の財政悪化を背景に、今後、日本円からの資金フライト(逃避)が起こる可能性も否定できない」と指摘。「ドル・円は足元もみ合っているが、日本国債のCDSスプレッドやドル・円のリスク・リバーサルをみると、潜在的な円売りのマグマは溜まってきている」と語る。
日本国債の保証コスト
債券が債務不履行(デフォルト)に陥るリスクに備える保証料を示すCDSスプレッドをみると、日本国債の期間5年のスプレッドは、9月16日の鳩山内閣発足時は39.5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01ポイント)だったが、その後、2カ月間で2倍近くに拡大している。10月からは英国債の保証コストを上回り、今月9日には76.16bpまで拡大。一時、イタリア国債の保証コストを上回った。
一方、オプション需給を見極める目安となるドル・円のリスク・リバーサル率は、円を買う権利を付与するオプション(円コール)への需要が、円を売る権利を付与するオプション(円プット)の需給との比較で減退していることを示唆している。
ブルームバーグ・データによると、3カ月物25デルタのドル・円オプションのリスク・リバーサル率で、円コールのプレミアムは先週末に1.49%と2007年7月以来の水準まで縮小。1年物のリスク・リバーサル率も過去2年間で最小となっている。
最悪の財政状況
主要国の中ですでに最悪の日本の財政状況は今後、一段と悪化する見通しだ。
国際通貨基金(IMF)は今月公表した報告書で、金融危機前の07年時点で2.5%だった日本の財政赤字の国内総生産(GDP)比は09年に10.5%に拡大すると予測。政府債務残高のGDP比は07年の187.7%から09年は218.6%、14年には245.6%に達するとしている。財務省によると、国債や借入金など「国の借金」は9月末時点で864兆5226億円となり、過去最大を更新した。
モルガン・スタンレー証券の経済調査部長、ロバート・フェルドマン氏は10日、ブルームバーグラジオとのインタビューで、日本経済は引き続きデフレに悩まされており、投資家は日本国債に不安を抱いていると語った。同氏は、鳩山内閣の「新しい財政アプローチ」が理にかなうかどうかについて疑問の声があるとし、「日本経済は弱く、経常黒字で日本国債市場を保護できるかどうかという懸念がある」と話した。
財政膨張による国債増発懸念から、債券市場では先週、指標となる10年債利回りが一時、1.485%と約5カ月ぶりの水準まで上昇。藤井裕久財務相は、長期金利の上昇について「非常に危惧(きぐ)している」と述べ、「国債増発懸念が影響しているのは分かっている。それに対する是正は何としてもしなければならない」と強調した。
バークレイズ銀行チーフFXストラテジストの山本雅文氏は、「日本国債の外国人保有率は6%程度。郵貯も含め日本の金融機関は今後も国債を買い続けるとみられ、国債市場が落ち着けば、海外勢の懸念も徐々に収まる」と予想するが、「景気回復のめどが立たない中、政府により説得力のある財政再建計画が示されず、日本の格下げ懸念が高まれば、円売りになるというリスクシナリオも考えられる」と指摘する。
格付け会社フィッチ・レーティングスの世界ソブリン格付け責任者デービッド・ライリー氏は10日に発表したリポートで、「日本経済の2010年の回復プロセスは緩慢で脆弱(ぜいじゃく)なものとなる」との予想を示し、デフレ長期化が日本国債の見通しに「実質的なリスク」をもたらすだろうと指摘した。
米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の小川隆平ディレクター(シンガポール在勤)は、ブルームバーグ・ニュースとの電話インタビューで、日本の財政赤字は日本のソブリン格付けにおいて「もっとも重要なネガティブ要因の一つ」と語った。ただ、現段階で「安定的」としている日本の格付け見通しを見直す考えはないとしている。
フィッチによる日本国債の格付けは「AA−」で、上から4番目。スタンダード・アンド・プアーズとムーディーズは、それぞれ「AA」と「Aa2」とフィッチよりも一段高い格付けを与えている。主要7カ国(G7)で、格付け3社から最上級格付けの評価を得ていないのは、日本とイタリアだけだ。
円キャリー復活の下地
財政悪化懸念の高まる中、外国為替市場では10月下旬に一時、約1カ月ぶりとなる1ドル=92円台前半まで円安が進行。その後は90円前後でのもみ合いが続いているが、フォルティス・アセットマネジメントの山本平社長は、日本が深刻なデフレに直面し、金利正常化の見通しが立たない中、「いずれ円キャリー(低金利の円を借り入れ、高利回り資産に投資する取引)が復活する下地は整っている」と指摘。今後、「ドル・円で100円台を回復する可能性はある」とみている。
ブルームバーグ・ニュースが実施した調査では、回答したストラテジスト37人中32人が2010年6月までに円が現状の1ドル=90円近辺に比べて下落すると予想している。また、別の調査によると、日本銀行は来年中も政策金利を現行の0.1%に維持すると見込まれている。
SBIリクイディティ・マーケットのリクイディティ統括部部長の小島誠氏は、「現政府にはもともと成長戦略がなく、郵政の人事にみられる改革の後退は、日本への成長期待はさらに後退することになり、日本資産の魅力を弱める」と主張。「日本はいまや新興衰退国(NDC)のトップランナーだ」と指摘している。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=akGNCDLarPV4