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世界危機の足音が遠のきつつある一方で、さらなる景気後退観測も根強く囁かれている。金融市場は、この先どこへ向かうのか? 伝説の投資家として名高いジム・ロジャーズが、独自の相場観を披露する。「米国に代わる国は中国しかない」と主張し、アジアに移住した氏が今目を付けているのは、「コモディティ」だ。原燃料の需給逼迫と世界的な通貨危機不安を考えると、商品は確実に魅力的な投資対象になるという。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也、撮影/宇佐見利明)
ジム・ロジャーズ/1942年生まれ。米国アラバマ州出身。エール大学、オックスフォード大学卒業後、ウォール街に就職。73年ジョージ・ソロスと共にクォンタム・ファンドを設立、驚異的な投資パフォーマンスで注目される。その後引退し、株式、債券、通貨、商品なをグローバルに手がける投資家として活躍。鋭い相場観で「伝説の投資家」の異名をとる。
――世界危機の足音が遠のきつつある一方で、さらなる景気後退観測も根強く囁かれている。金融市場の先行きは依然不透明だ。そんななか、世界的に有名な投資家の一人として常に名前が挙がるロジャーズ氏が、最も注目している市場はどこか?
今後世界経済をリードして行くのは、間違いなくアジアだろう。私は1999年〜2001年の3年間に、世界116ヵ国を旅行して、各国の現状をこの目で観察してきた。
その中で、アジアのパワーには他を圧倒するものがあった。特に日本、中国、台湾、韓国など、アジアには信用力の高い国が多い。
欧米人の多くは気づいていないが、世界中のカネやモノは、今やアジアを目がけて集まっている。裏を返せば、米国のように、借金まみれの国からカネが逃げ出すのは当たり前とも言える。必然的に、投資家も欧米からアジアに軸足を移している。
私は投資家として、特に中国に興味を持っている。最近市場が過熱してきた新興国株は全て売ってしまったが、中国株だけは変わらず持ち続けている。好んで買っているのは、「水処理関連」銘柄だ。しばらくは、他の新興国株を買う予定はない。
――何故それほど中国に注目しているのか?
実際のところ、中国ほど資本主義国としてのパワーを持っている国は他にない。
そもそも戦後に共産化されるまで、中国経済はずっと資本主義をベースとしていた。現在の経済成長は、ここ十数年来の市場開放政策により、彼らが持つ本来のパワーが発揮されたことによる。
何より、中国人はとても勤勉だ。国民は、収入の3割程度を貯蓄や投資に回している。貯蓄率がわずか数%に過ぎない米国と比べれば、その差は歴然としている。
過去100年間で最も成功した国が米国、過去50年間で最も成功した国が日本だとすれば、今後50年〜100年間で最も成功する国は、中国と言える。
そのため私は 2007年にニューヨークの家を売り払って、家族共々シンガポールへ移り住んだ。家族の銀行口座もアジアに移した。娘2人にとって、アジアで育って北京語を学ぶことが、「最良の教育」だと思ったからだ。
――基軸通貨であるドルの信頼が揺らぐなか、成長著しい中国の人民元が、「ドルの立場を脅かす存在になるのでは」と見る向きも多い。ロジャーズ氏自身も、以前から人民元の将来性を指摘してきた。
確かに、基軸通貨としてのドルの信用は揺らいでいる。しかしだからと言って、人民元がすぐにドルの立場を脅かす存在になるとは考えにくい。ましてや、将来ドルに代わって基軸通貨になることなど、少なくとも現時点では想像できない。
人民元は、先進国通貨のように自由に交換できないし、今後世界に開かれたとしても、限定された範囲に留まる可能性が高いからだ。人民元の将来性を語るには、20〜30年先を読む必要がある。
もし現段階で、「ドルに代わって基軸通貨になり得るものは」と聞かれれば、言うまでもなくユーロだろう。
――同じアジアでも、日本株や日本円には注目していないのか?
もちろん、日本株や日本円にも注目している。実は、私は米ドルや米国株よりも日本円や日本株を多く保有している。
日本は米国と同様に巨額の財政赤字を抱えているが、先の金融危機で信用が失墜した米国と違い、世界的な信用を保ち続けている。投資先としては、十分魅力がある。
ただし、大きな不安もある。出生率が先進国で最低水準にあり、人口減少が止まらないことだ。これは、ゆくゆく日本の経済力を低下させることにつながりかねない。今の日本には、チェンジ(変化)が必要だ。
私が日本に求めるチェンジは、(1)子供を増やすこと、(2)移民を受け入れること、(3)そのどちらもできないのであれば、国民が生活水準を落とすことだ。
現在持っている日本株は、「ハローキティ」で有名なサンリオ、大手玩具メーカーのタカラトミーなど、子供関連の銘柄が中心だ。もし日本にチェンジが訪れ、若い女性がもっと子供を産んでくれるようになれば、これらの株はどんどん上がると目している。
ただし、今後日本にポジティブなチェンジが起きない限り、ここ2〜3年の間に日本の資産を手放す可能性が高い。
それは、米国資産も同様だ。今の米国には魅力を感じられない。今持っているドルは、少し上がったときを狙って売ってしまいたいくらいだ。
――近い将来、日本には「チェンジ」が訪れるだろうか?
新政権が発足した日本には、まさに「変化のチャンス」が到来している。重要なのは、変化の内容よりも、まずは「変化そのもの」を起こすことだと思う。
ただし、財政赤字への懸念から経済政策に関する議論が紛糾し、「出口戦略」の検討も遅れているなど、見過ごせないポイントが多いことは事実だ。日本人は、政策のよいところも悪いところもよく理解しながら、「チェンジ」への意識を高めていくべきだろう。
――他にも、中長期で注目できる投資分野があれば、教えて欲しい。
中長期で考えるなら、ずばり、コモディティ(商品)が注目だ。原油、非鉄金属、農産物などの原燃料は、世界的に需給が逼迫しており、価格が上昇傾向にある。金融危機後もファンダメンタルズが損なわれておらず、今後も堅調に推移すると見られる。
実際、過去25〜30年間に、コモディティ市場は底値からじわじわ復活してきた。よい例が、21世紀に入って高騰し始めた原油だ。
米国では、過去40年間も大油田が発掘されていない。英国の北海油田も、メキシコの油田地帯も同様だ。アジアでも、かつて産油国として有名だった中国、マレーシア、インドネシアなどは、今や「原油の輸入国」に変わってしまった。世界中で需給逼迫が著しい。
一方で、世界経済の動向も、コモディティに大きな影響を与えるはずだ。
大借金を抱える米国をはじめ、金融危機以降、先進国の中央銀行は軒並み市場に大量のカネを注入し続けている。これは早晩、本格的なインフレを招く可能性が高い。そうなれば、コモディティは過熱するだろう。
また、アジアの信用が高まり、欧米の地盤沈下が進むなか、この先1〜2年の間に「世界的な通貨危機」が発生する可能性もある。過去の通貨危機時にそうだったように、株式市場もズルズルと下落していくだろう。
そうなれば、コモディティ投資の魅力がいよいよ際立ってくる。
――今後は、ロジャーズ氏自身もコモディティへの投資割合を増やしていくつもりか?
私は将来を見越して、すでにあらゆるコモディティに投資している。自分の娘にも、株や債券でなく、コモディティ投資を勉強させているところだ。
コモディティは、今後必ず注目を浴びる市場だ。選択肢の1つとして、検討してみてもよいだろう。
*今回、ジム・ロジャーズ氏は、ラーニングエッジ社(本社:渋谷、社長:清水康一朗)の主催により11月6日に開催された「Wealth Management Forum 2010」セミナーで講演するために来日しました。このインタビューは、来日時の独占インタビューとセミナーの講演内容を基に、構成したものです。