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(回答先: フランスのPPRの子会社イタリアのGUCCIが、FSC認定の再生紙のみ使用の方針 【ペーパー・トレード ブログ】 投稿者 hou 日時 2009 年 11 月 15 日 10:16:05)
http://yamada-shuzo.blog.drecom.jp/archive/112
持続可能な経済学と省資源税[2008年09月23日(火)]
経済学とは、「生産=消費=所得」の三面等価が成立することが大前提である。しかし、これでは、ドンドン生産してドンドン消費することが良い行為であるような錯覚に陥り、大量生産・大量消費型の経済政策を黙認することになってしまう。経済学は元来、為政者が世の中を治め人民を救う「経世済民」の方策を研究する学問であり、慶應義塾の創設者である福澤諭吉先生(1835-1901)は明治維新と文明開化の渦中、西洋から持ち込まれたヒト・モノ・カネの仕組みである「エコノミー」を経世済民に由来する「経済」と語訳した。そして、21世紀の今、地球環境時代に合致した「持続可能な経済学」にパラダイムシフト(規範転換)する時機が到来している。
現在の経済活動を支える基幹エネルギーである化石燃料について、以前、「衆ノ雑感」枯渇年数と可採年数でも紹介したとおり、ピークオイル(石油減耗)説に見られるような資源枯渇は杞憂であり、それよりも化石燃料を工場や発電所等で使用して温室効果ガス(二酸化炭素)を排出することによる地球温暖化、大気汚染物質(窒素酸化物・硫黄酸化物)を排出することによる公害・酸性雨被害が深刻な社会問題となっており、化石燃料が抱える環境負荷という欠点がその使用に際しボトルネック(隘路)となっている。特に中国では、急速な経済成長が経済を過度に膨張させ、石炭の大量消費に伴う外部不経済を引き起こしているにも係わらず、不合理な経済発展から恩恵を得て富の果実を増やし続けているので、爆食経済を改めない限り国家が早晩破綻をきたすだろう。外部不経済を放置すれば、定常状態を維持しようとする健全な社会が損なわれることから、外部不経済を包含した新しい経済学である持続可能な経済学が必須となる。
三面等価を原則とする現代の経済学では、規模の経済に即した安定的な税収確保が至上命題であり、弱者である低所得者層に対し相対的に重い負担が強いられる逆進的な消費税や所得税、住民税等が税制上の主な財源となっている。まさに人間の飽くなき儲けたい欲望や豊かさを追求することこそ経済活動の目的であるが、所得格差が拡がって富裕層を中心とした強者のみが満たされる持続不可能な経済活動に拍車が懸かれば、ますます地球環境を悪化させ、人間が地球と共生している以上、結果的に地球とともに一蓮托生である人類の破局を早めるだけである。それ故に、環境と経済が両立する持続可能な経済学を考慮した税制が主体となる。税制改革の柱として三面等価を見直し、資源の過剰供給を抑制して環境負荷を減らす「省資源」に繋がる公正な分配原則、つまり、「使用した一資源あたりの生産=消費=所得」に置き換え、使った資源量に対応する税率を決めて課税する「省資源税」の適用と財源一元化が望ましい。
◇現代の経済学=持続不可能な経済学
【三面等価】生産=消費=所得
⇒税制上の財源:消費税、所得税等
◇新しい経済学=持続可能な経済学
【三面等価】生産/使用資源=消費/使用資源=所得/使用資源
⇒税制上の財源:省資源税
昨今、日本でも導入が議論されている環境税(炭素税)は、既に石油石炭税がその機能を果たしているほか、逆進性の高い対処療法であり、ペナルティー(懲罰)の意味合いも強く前向きな自発性に欠け、抜本的な課税には到底なり得ない。翻って省資源税は、予め無駄な資源の使用を省くことが与件となっていることから、自ずと環境負荷は軽減され、省エネルギーにも寄与する。例えば、先ほど述べた化石燃料の場合、理論的に天然ガス、石油、石炭の順にクリーン性が高いことから、天然ガスに課せられる省資源税は、化石燃料のなかで最も少なく設定され、天然ガスの導入促進策に傾注する強靭なエネルギー政策が講じられる。また、身近な家庭でも、家計を預かる主婦がスーパーへ買い物に出かけた折、中国産冷凍餃子食中毒問題に端を発して消費者の安心・安全志向が強まっている社会風潮から、店頭の食品に記載されている賞味期限や内容物表示をチェックするほか、資源使用が少ないものほど省資源税の課税率が低く設定されておれば、資源を大量使用する割高な食品を手控える。よって、主婦に省資源の意識がなくても安価な食品を購入することで、知らないうちに地球環境保全に貢献していることとなる。ましてやカロリーベースの食料自給率が4割を切る日本にとって、海外からの輸入に依存する多くの食物は、空輸(ジェット燃料)・海運(船舶重油)等で膨大な資源やエネルギーを消費して遠路遥々運ばれてくる訳で、食のライフサイクルアセスメント(LCA:農産物等の生産から流通に至る過程での環境負荷評価)を示す指標である「フード・マイレージ(=食物の総重量×輸送距離、単位:t・km)」に、「カーボン・フットプリント(炭素の足跡)」と呼ばれる概念に基づき輸送手段ごとの炭素換算排出係数を掛け合わせ数値換算し、共通の尺度としたうえで省資源税(海外向けの名称は「炭素関税」)が課せられれば、季節ごとの旬を意識した食育や地産地消の動きが活発になり、日本の農業行政も食料自給率向上に向けた大胆な舵取りが可能になるだろう。
<出所>http://www.footprintnetwork.org/gfn_sub.php?content=app_carbon_footprint
カーボン・フットプリントは、既に地球の生物学的許容限度を30%も超えた「エコロジカル・フットプリント(生態学的足跡:1991年、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学で開発された地球の環境収容力に係る指標で、同志社大学経済学部の和田喜彦准教授が日本に初めて持ち込んだ第一人者)」全体の半分を占めている。
例えば、1袋のポテトチップスは、じゃがいもの栽培→製造→包装→配送→廃棄に至るまで75gの二酸化炭素を排出する。これをパッケージ等に表示した手法がカーボン・フットプリントである。
エネルギー需給構造の変革と省資源が最大効用を創出する経済政策、つまり、企業や国民一人ひとりの環境に優しい行為が自国の経済活性化にも結びつくようなインセンティブ(誘因)として、持続可能な経済学に基づく省資源税が禁止税制から誘導税制への移行に向けた媒介となるものと提案したい。