★阿修羅♪ > 国家破産65 > 906.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
(回答先: 東京・国分寺市 東京都内で ”公契約条例” 実現に最も近い自治体 【連合通信】 投稿者 hou 日時 2009 年 11 月 13 日 19:51:57)
http://homepage1.nifty.com/kensetu-union/koukeiyakuhou/koukeiyakuhou.htm
ILO第94号条約と建設労働問題
公契約法(条例)制定にむけて
1、はじめに 2、建設労働者の就労構造と賃金のあり方 3、建設生産現場の実態
4、公契約法(条例) 5、公契約法・ILO第94号条約ができるまで 6、現在の状況
1、はじめに
日本における労働環境は悪化の一途を辿っているのではないだろうか。それは「規制緩和」という耳ざわりの良い言葉とともに加速度的に進んでいる。確かに経済だけではなく、あらゆる部門でグローバル化への対応が要請されてはいる。それでは「何でも」規制緩和なのかと言うと、そうではないのではないか。事実、国民の強い要望によって作られた情報公開法も施行されることになったが(2001年4月施行)、その内容が国民の要望に応えられえるようになるには、今後の国民の強い運動が必要かもしれない。そうした情報公開などは多いに規制緩和されなければならないと思う。そしてともすれば国民にとって必要な規制緩和は放置されながら、無闇な規制緩和の拡大というなかで不必要な競争を激化させ、そのしわ寄せは中小零細業者や労働者を否応なく蝕んでくる。
規制緩和を急速に進めたニュージーランドでは、労働時間の最低基準である「8時間労働」について経営者団体から撤廃の要望が出されたと言われているし、派遣労働や裁量労働制が横行していると聞く。日本でも、それは対岸の火ではないと言わなければならない。あるキャリアOLから「夜になって、私はまだ仕事をしたいのに労働基準法で女性への規制があるから残念ながら帰らなければならない」というこの一撃は、男女雇用均等法へと発展し、労働者の募集の場合「女性に対して男性と均等の機会を与えなければならない」ことになるとともに「深夜業」が堂々とおこなわれるようになってきた。
21世紀の労働者の就労構造に見合った法整備が必要であるからと言って、労働者派遣法や裁量労働制が導入されることが、日本の労働環境にほんとうに必要なのだろうか。労働者派遣法でもその基本的趣旨は「専門知識や特殊技能を持つ労働者を一企業のものにするのではなく、数企業へ働く道を開き『産業や社会の発展に寄与』してもらうことが望ましいことである」ということで作られた法律である。
しかし、派遣法の基本を逸脱し平成12年の派遣部門のほぼ全面的な解除(建設・港湾・警備など除く)は、あらゆるところで労働環境の悪化を招いている。派遣労働者を使うことによって労働者の福祉の切り捨てや賃金カットが横行していることは勿論、派遣先企業でのトラブルなど実際に働いている労働現場からの報告を聞けばすぐわかることである。現在の厳しい経済情勢の中で派遣労働者は急増を示しており、既に100万人を越えたと報告されている(2001年5月現在)。さらに裁量労働制の導入は、一見すると労働時間が自由であるかのように聞こえるがそれは残業代のカットや労働強化へと進んでいるのである。
こうした社会全体の労働環境の悪化も然ることながら、日本の労働法制の枠外におかれている日雇い労働者や建設職人・労働者の労働環境の悪化は一言では言い尽くしがたいものがある。とりわけ最近は長期不況のなかでの建設労働者・職人の賃金の下落傾向は目に余るものがある。それに歯止めをかけなければならないと思う昨今である。さらには建設関連の零細業者の倒産や夜逃げ、また建設職人・労働者の自殺は日常的に起きており話題にすらなりにくくなっているのが現状である。それらを何とかしなければならないと思いながら、歯痒い日々の中で活動をしている。そこで世界先進58ケ国にある公契約法(公共工事における賃金等確保法)、いわゆるILO第94号条約に基づき建設労働者の労働環境の整備が臨まれるし、これは建設労働者の問題だけとしてではなく、21世紀における建設産業全体の発展と建設生産活動の健全性にとって必要なのである。
2、建設労働者の就労構造と賃金のあり方
1)建設労働者の就労構造と賃金労働条件の課題
建設業界にとって「丁場」という言葉は日常用語であり、建設にたずさわる者にとって、さして違和感はないが、建設関係以外の人達にとっては何のことか分かりにくいと思うので、ここで若干「丁場」について説明を加えておきたい。丁場とは建設業の場合「仕事の区域」と言った方が良いのではないだろうか。これを大雑把に分けると〈1〉町丁場、〈2〉住宅企業丁場、〈3〉野丁場になる。
町場とは、住宅を建てる大工・工務店を中心とする職域であり、1973年(昭和48年)のオイルショックころまでは、住宅の新築は概ねこうした大工・工務店が消費者と話し合って住宅を生産していた。しかし、都市への人口の流入によって都市部では住宅戸数が不足して、総住宅戸数と総世帯数のバランスが崩れ、かつての住宅戸数不足からミニ開発や分譲住宅の販売によって住宅の余まり傾向へと変化していくなかで「住宅の商品化」が進んできた。一時は「建てて売って逃げる」という陰口が不動産屋などで言われるように粗悪品、いわゆる欠陥住宅が作られてきた。これらにも一部の町場工務店が関わっていたことも事実である。バブル期の全国の新設住宅着工数は180万戸代あったが、バブル崩壊後は110万戸から120万戸代へと新設住宅戸数は減少してきた。それとともに都市部においては町場(丁場)業者の住宅新築の機会は極端に減少してきた。しかし、地方では今だ町場業者が住宅新築市場においては大きな力をもっている。
1959年(昭和34年)ごろ大和ハウスが増築用として販売した「ミゼットハウス」は、工場生産住宅の第1号ではないかと思うが、その後住宅不足に目を付けた業者は、競って工場生産住宅を販売し始めた。これらが“プレハブ住宅”“ツーバイフォー住宅”(壁組み工法ともいわれ壁の力で建物をもたせる方法)といわれる住宅が多い。中には“在来工法”といわれる軸組住宅(柱の力で建物をもたせる方法)、現在そうした工場生産住宅を多くのメーカーが新築住宅として生産販売している。いわゆる営業マンが新築しそうな住宅を訪問して売り込む方法や住宅展示場に顧客を呼んでセールスする方法、宅地を開発して宣伝し、土地住宅とも売り込むなどで生産活動をおこなっている。そうした業者のもとに従事している零細業者や労働者・職人を〈2〉の住宅企業丁場と呼んでいる。
野丁場とは、多くの公共工事、そしてビルやマンション、再開発やリゾート開発・ゴルフ場開発、海の上に橋をかける工事やトンネル工事・鉄道、原発やダム工事などをおこなう建設・土木会社の現場のことをそう呼んでいる。現場の最先端の4次や5次の下請業者間では、見積もりや契約書もなく工事を行うことが最優先されている。「いついつから工事にかかってくれ」と親会社からいわれると弱い立場にある下請業者は「わかりました」と言って労働者を引き連れて現場に入る。工事も半ばを過ぎたころ「予算はこれしかないので頼むよ」と言われた下請業者は泣く泣く赤字覚悟で工事を完了させる。こうしたことを業界では「指し値発注」や「あてがいぶち」と呼んでいるが、これらが一度や二度だったら何とかなるだろうが、たび重なる指し値発注は零細業者を苦しみの中にたたき込んでしまい。中小零細業者や労働者の倒産や夜逃げ、自らの尊い命を絶つこという結果を招いてしまう。皮肉にもこれらの悲惨な現象が集中しているのが野丁場である。そしてまた一部の政党や政治家との癒着や公共工事を巡る汚職構造はこの野丁場に巣づくっている。企業と政治家との金をめぐるスキャンダルは後を絶たない。ゼネコンに対して政治家は「公共工事をとってやる」、その見返りに「手数料をよこせ」、政治家に対して「弱い立場」にある行政マンは、「自分の仕事を遂行するため」に政治家の「言うことを聞いておく」という構造が、ゼネコン・政治家・行政マンとのスキャンダルとなってマスコミに時々叩かれることになる。とりわけ地方自治体の首長や一部の国会議員の「賄賂事件」は後を絶たないのは建設業界である。
茨城県知事へゼネコンが1千万円の賄賂を渡した事件の裁判で、裁判長は「組織的に賄賂を渡しており、極めて悪質だ」(平成12年9月12日朝日新聞)など組織的な汚職事件や中尾元建設大臣の汚職問題は利権を貪るその最たるものであるが、株価が50円を割っている建設会社、通称ゼネコンと言われているが、その企業ですら金融機関へ数千億円という常識では考えられない規模の債権放棄を要請し、それが認められておきながら片方では一部の政党への政治献金をするという行為はいったい何を意味するのだろうか。いつ倒産するかわからないので「夜もおちおち眠れない」建設会社の「生き残り」(いずれもセネコン幹部の声)をかけた低単価受注競争は多くの零細業者や労働者を犠牲にして、今その建設生産活動がおこなわれている。零細業者や建設職人がバブル期に「どれだけ美味い汁を吸った」というのだろうか。そしてバブル期に作った不良債権への責任が建設職人にどれだけあるというのだろうか。
「こんなに安い単価や手間でまともな仕事はできない」「こんな建物がどのくらい(何年間)もつのだろうか」という現場労働者・職人の生の声が聞かれるようでは建設業界の健全な発展は望めない。国民の税金を使いながら、こうした声が聞かれるような「公共工事」や堂々と賄賂が渡されるような「汚職構造」が存在していて、健全な建設生産活動は望めないし、グローバル化する経済活動のなかで建設業界だけが、こうした問題を孕んでいて21世紀はどうなるのだろうか。とりわけ公共工事における工事代金の透明性が必要であり、そのためには現場労働者の賃金の明確化こそ大切ではないだろうか。
2)賃金体系
建設業の場合は賃金形態が次のように別れている。
〈1〉月給賃金、これは電気工事や水道工事に従事する労働者は比較的この形態が多い。これは言うまでもなく多くの産業の労働者と同じようなシステムである。
〈2〉常用賃金、これは通常アルバイトや派遣労働者の賃金体系と同じように「1日いくら」といわれ労働基準法でいわれる「日々雇い入れらる者」と同じ意味であり、業界用語で労働日数のことを出面(でずら)といい、出勤簿のことを出面帳という。この出面帳に従って毎月支払われる賃金体系のことである。
〈3〉手間請賃金、この賃金は建設業以外の人には、なかなか理解されにくい賃金体系であるが、この形態が建設生産活動のなかで窮めて多いこともまた事実である。そして低単価構造を招いているのもこの形態によるところが多い。これは労働基準法第12条の「出来高払制」である。そこでビル建設現場を簡単に頭のなかで描いてもらいたい。いわゆる出来高と言うのは、分かりやすく言えば基礎工事が終わってコンクリートで平らな面を作り鉄筋を組みコンクリートパネル(コンパネ)で枠をつくり(これを型枠と言う)ポンプ車で生コン(コンクリート)を流し込み乾燥してから型枠を解体するという工程がある。この中で型枠を組むのは型枠大工という職人、鉄筋を組むのは鉄筋工、ポンプ車でコンクリートを流し込むのは圧送工、型枠を解体するのは型枠解体工(通称バラシ屋とも言う)などの職人がおこなう。こうした躯体工事をそれぞれの職人・労働者が分担して行っている。これらの場合、その形態によって違うが、型枠大工は「何平米(ヘーベー=平方メートル)組んでいくら」鉄筋工も「何トン組んでいくら」、圧送工は「何立米(リュウベ=立法メートル)打ち込んでいくら」、解体工は「何平米解体していくら」という出来高制になっている。これらの工事を親方が仕切っていて、労働者を多い場合は数十人、少ない場合は3から4人で施工をして常用賃金として労働者に支払っている。中には3から5人くらいで工事をおこない、毎月20日なり月末に締め切って出来高に従って契約会社に請求をして翌月の5日などに支払いを受ける。その金額を工事に携わった仲間(労働者)で請負金額を山分けする仕組みになっている、これを手間請賃金と言う。
3)景気の変動と建設労働者の賃金
景気の変動によってこれほどまでに労働者の賃金が変動するところはあまりないのではないだろう。特に野丁場といわれるゼネコン現場労働者の賃金の変動は由々しき問題である。かつてバブル期には、「良い思いをした」建設労働者も居たことは居た。例えば、ある現場では「釘袋(大工が腰に下げている釘を入れる白い袋)を下げていれば、技術・技能がなくても1日に3万から4万円もらった奴もいる」と言う声を何度か聞いたことがある。また、町場の大工が「町場で1日に1万5千円の常用賃金で仕事をしているなら、野丁場の型枠大工は1日に2万円だ」といって、町場の大工が野丁場へ流れて行った。「水は高い方から低い方へ流れるが、職人は手間の低い方から高い方に流れる」と良く言われたものである。そうした労働者は、しばらくすると「1日に2万5千円になった」、また「2万8千円になった」「常用で1日に3万円でしかやらないよ」ということなどが言われていたが、バブルが崩壊すると「1日の手間を3千円下げられた」「2千円下げられた」こうした声が方々から聞かれるようになってきた。そして「野丁場の型枠大工は1日に1万3千円から1万6千円が普通じゃないか」「まだ下がっているし、これじゃまともな仕事は出来ねーや」(平成12年暮れ)こうした現場労働者の声が聞かれるようでは決して健全な姿とは言えない。
業者による低単価受注競争は、先端の零細下請業者や労働者を犠牲にしている。こうした事態は悲しむべき出来事である。技術・技能を持った労働者の賃金が学生アルバイトなみの賃金の時もあると聞く。経済の大きな波に晒される労働者の賃金体系で将来的な生活設計は不可能であるし、このような労働現場に若い世代が自分の将来を託して入職してくるだろうか。ましてや労働者の最低基準である労働基準法の枠さえ与えられていない。
公共工事の見積もり積算は、公共工事設計労務単位(二省協定賃金=国土交通省・農水省)によって現場労働者の賃金台帳の調査をおこない各職種の賃金が発表される。それを基本に積算をおこなうことになっているが、そしてその積算された三省協定賃金が現場労働者に支払われることにはなっていない。例えば1日2万円で見積もり積算されても元請のゼネコンの下に名義人(最近名義人は減少傾向にある)が1次業者となっている、その下に2次業者・3次業者が存在する。それらの業者が次から次に施工金額をピンハネしていく。その中に労働賃金も含まれているから、当然賃金もピンハネされることになる。現場労働者の賃金は先にも触れたように1日に1万3千円から1万6千円になってしまう。1万6千円の賃金で20日稼働して月に32万円である。年収にして3百84万円で、そこから健康保険や生命保険、国民年金・税金を支払うわけだから、生活のレベルは押して知るべしである。ましてやボーナスや退職金(建設業退職金制度に加入している事業所も1部にはある)は皆無であるばかりではなく、ともすれば現場での手道具や現場へ行くための車(道具を運ぶため車が必要)の費用も自腹である。現場で暑さにも寒さにも耐えながら仕事をしなければならない。そこには高度な技能・技術が要求されながら4百万円くらいの年収で「こんな賃金でまともな仕事はしていられないや」という“うめき声”のような建設労働者の言葉が自然に耳底に聞こえてくるのも当然かもしれない。
建設業全体が住宅企業やゼネコンなど大手企業が賃金の決定力を持ってきている。それは建設投資の全体的な減少のなかで、それまで住宅生産の主要業者であった町場工務店の受注が減少し、資本力と基礎体力のある大手企業が零細業者や労働者を吸収しながら受注競争に勝ち建設生産への支配力が強くなったためである。
それまで建設業界の労働賃金は、古くからある「太子構」という業者の集まりや全建総連などの労働組合が賃金を協定して発表し、業界に一定の影響を与えていた。しかし、先にも触れたように建設投資の減少のなかで、業者による低単価受注とそれから派生する指し値発注は、太子構や組合の「協定賃金」を破壊してきている。さらに、労働者は企業に対して「賃金交渉をする能力」すら持ち合わせていない。それは労働基準法などでいう「雇用契約」すら交わさない構造になっている。もしも賃金交渉をしようものなら「明日から現場に来なくても良い」という構造を知っているから「なにも言えない」のが現実である。
職人特有の手間請という賃金体系が「仕事をもらっているのに賃金のことを言えるわけがない」という構造をつくっている。だからこそ法的な処置が望まれるのである。
3、建設生産現場の実態と課題
1)建設投資と公共工事
日本全体で建設業に使われるお金、いわゆる建設投資総額は国民総生産の約14%に当たり、全労働者の1割が建設業に従事している。その建設投資総額は1996年度(平成8年)は82兆5千億円だったが1999年度(平成11年)は70兆8千6百億円(建設省の建設投資推計)になっている。その約47%が公共工事である。全体でみると公共工事は削減の方向にあるが、建設投資の約半分を担っている公共工事について、その透明性が図られ、建設労働者の賃金が明確になれば建設生産活動にとってすばらしいことになるだろう。そこにおける汚職構造は排除され健全な発展を遂げ、若者にとって魅力のある労働現場となるだろう。これは決して理想ではない、何故か。それは先進58ケ国に公契約法があり、建設生産活動がこの法に従っておこなわれているからである。「世界の先進国を誇る日本」であるとするならば、公契約法に従った公共工事が必要であるし、ゼネコンの多くが海外に営業所をもって建設生産活動をおこなっているわけだから、その法律があることをゼネコンの幹部は知っているはずである。にもかかわらず、なぜゼネコンはグレーゾーンのなかで公共工事を受注し、談合構造にメスを入れないのだろうか。あらゆる部門がグローバルリゼーションするなかで、外国企業も建設業に参入してくるだろう。それらも視野に入れながら業界の発展を考えなくてはならない。
そうした国際的視野にたって業界の発展を考えるならば、労働者の賃金を企業利益の対象とするのではなく「建設生産物の質」や「企業経営への努力」こそが重視されなければならない。
2)下請構造の実態
日本の建設工事は数次に渡る下請構造となっている。特にゼネコンの工事現場では、望ましいことではないが4次・5次などの下請は普通であり公共工事でも同様の形態をとっている。ゼネコンが下請に対して、2次までの業者しか現場には入れないと言って契約しても、実際には2次のヘルメットをかぶり作業着を着て施工台帳の労働者名簿に2次の労働者と記載してあれば、元請のゼネコンの現場所長は2次の労働者であると信じるかもしれない。また、発注官庁の担当者もそれらの施工台帳を見て2次の労働者であると信じるだろう。しかし、労災事故や労働賃金の不払い問題が起きてから4次や5次の労働者であることが判明することもある。これらが現場の実態である。
公共工事では、予算決算及び会計令によって工事の契約の予定価格は「総額について定めなければならない」(第80条)となっており「単価についてその予定価格を定めるこができる」となっていて、確かに単価は決めるが個別労働者の賃金を決めることにはなっていない。「総価によって決める」方式がひとつのグレーゾーンとなっているのであって、そこを改めなくては建設工事の透明性は確保されない。
150臨時国会において「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」が2000年(平成12年)11月8日に参議院で成立した。この法律そのものは非常に重要であるが、このことによって公共工事について完全な透明性が確保されるとは思われない。確かにこの中で「建設労働者の賃金、労働条件が適切に行われるように努めること」という付帯決議が参議院でつけられたが、これで公共工事に透明性が確保されたとは言えない。今後この法律によって施工台帳が数次にわたる下請まで明らかになり、さらに発注者へもその施工台帳が提出されることにはなる。そのことは大変すばらしいことであるが、しかし、この法律の中でも「労働者の賃金が明確でなはい」ことが問題である。
3)現場労働者の実態
これまで現場労働者の実態について若干触れてきたが、簡単に言えば「景気の変動によって労働の賃金が変動」し、これほどまでに不安であっていいのかということである。建設業は、日本のGDPの14%であり、全労働者の約1割を占める基幹産業である。“土建国家”と言われるように公共工事をめぐる汚職構造、低単価受注競争の中で零細な下請業者の倒産や夜逃げ、自殺が日常的であると述べたが、「安ければいいと言う時代ではない」「受注の最低価格を決めなければ建設産業はダメになる」(ゼネコンの幹部)と言うのも本当の言葉ではないだろうか。確かに重層下請制をなくし、無駄をはぶき安い価格で建設生産がおこなわれることは誰でも臨むところである。しかし、低単価による手抜き工事や職人の生活を脅かしての建設工事は誰も臨まない。職人は「いいものを作って施主(消費者)に喜ばれることが俺たち職人の生きがいだ」と言う職人の言葉を良く耳にするがこの生産の喜びを現在の建設業界は奪ってしまったと言わなければならない。「このビルは俺が作ったんだ」と言う建設職人の誇りの言葉が消えてしまった.
4,公契約法(条例)
1)先進58ケ国にある法律
公契約法は現在58ケ国にあるがこの法律は日本にはない。公契約法は国が発注する建設工事に適用し、公契約条例は地方自治体の発注する工事に適用するために国なり地方自治体で決められるべき法及び条例である。この法律よって公共工事における腐敗構造にすべてメスを入れることにはならないと思うが、この法律なり条例を創設すれば日本におけるあらゆる公共工事をめぐる汚職構造を一定程度排除するとともに、工事の透明性を確保し、21世紀の建設生産活動がスムーズにおこなわれ、建設業界の健全な発展を臨むものである。これは単に建設労働者だけではなく、経営者も下請業者や労働者も含め業界全体としてとしてとりくむべき課題である。
この公契約法を一言でいうと「公共工事について労働者の賃金・労働条件を決めて、その決めた内容が実際に現場労働者に適用される」ことである。例えば型枠大工の賃金が1日2万5千円と決めて、その金額で見積もりをして入札をし落札したら「実際に型枠大工にその2万5千円が支払われる」と言うシステムである。日本の建設業の場合は、これまでも述べてきたように数次に渡る重層下請制の中で建設生産活動がおこなわれている。下請業者のなかの「労働賃金をピンハネする」ことで成り立っている業者も沢山いるし、ペーパーカンパニーや暴力団など闇の世界の手配師も現存している。これらを改めるためにも公契約法はつくられるべきである。そこで、この問題に対して全建総連(全国建設労働組合総連合72万人、中央執行委員長加藤忠由)は、その試案を作成した。この試案がそのまま作られるべきであるとは思わないが、ILO第94号条約を基本として、日本の建設生産構造に見合った公契約法が作られるべく業界・行政・労働者の三者による検討が必要だろう。次にその試案を述べたい。
2)公契約法(条例)・公共工事における賃金等確保法の試案(詳しくは資料を参照)
〈1〉目的
国等が発注する建設・土木の工事に従事する労働者にその対価(労働賃金)が公正に配分されとともに労働時間など労働条件が確保され、工事の質が確保されるようにすることを目的とする。
〈2〉適用範囲
国の機関や特殊法人(道路公団や都市整備公団など)で工事代金の過半数以上が税金で支払われる建設・土木工事をその範囲とする。
〈3〉元請負人の責任
公契約工事の受注者である元請は労働条件の確保の義務を負う。
〈4〉賃金額
工事を請負った者は労働者に対して標準賃金額を決め、決めた額を下回らないように支払わなければならない。
〈5〉標準賃金額以外の労働者を使用する場合
@、未熟練労働者の場合は労働大臣が告示する標準賃金額でなくても良い。
A、前項の未熟練労働者は公契約工事現場では各職種ごとに3分の1以下の労働者しか使用してはいけない。また、未熟練労働者の賃金は標準賃金額の3分の1の額を下回ってはいけない。
B、標準賃金額の規定を受けない労働者を使用する場合は、書面で標準賃金を受けない旨の同意書を受けなくてはならない。
〈6〉労働時間
労働基準法による。
〈7〉賃金及び労働時間以外の労働条件
@、公契約工事のその地域における同職種の労働者に適用される労働協約を下回ってはいけない。
A、その地域に労働協約がない場合はその隣接地域の労働協約を適用する。なお、その地域一帯に労働協約がない場合は、労働大臣及び都道府県知事が、その地域の過半数の労働者に適用されている労働条件を認定し告示する条件による。
〈8〉下請を含む受注者の連帯責任
決められた標準賃金額を下回って支払われた場合はその差額分の支払い責任を下請業者も負う。
〈9〉労働者への周知の義務
賃金を含む労働条件等について、現場の見やすい場所に掲示をして労働者に周知させる。その内容は次の通りとする。
@、標準賃金額(例えば型枠大工・鳶土工・鉄筋工・塗装工・電工などの各職種ごとの賃金額)
A、所定労働時間や休日
B、前記以外の労働条件
C、前記の項に関する責任を負う者の氏名と連絡先
D、国及び自治体等発注者の名称と連絡先
〈10〉履行の確保の方法
@、支払いの留保
受注者が労働者に対して標準賃金を支払っていない旨の申し出があった場合は、発注者は受注者に対してその金額の支払いを留保する。
A、労働者に対する直接支払
受注者が労働者に対して標準賃金を支払っていない旨の申し出があった場合は、発注者はその差額分を直接労働者に支払う義務がある。
〈11〉公契約で定める受注者の義務
@、労働者に標準賃金額を支払う義務を負う。
A、労働者に標準賃金を支払わなかった場合は、下請業者も含め連帯責任を負う。
B、賃金以外の労働条件についても遵守するよう万全な措置を講じる。
C、関係労働者に労働条件を周知させる義務を負う。
〈12〉監督と制裁
@、是正命令・契約解除
イ、義務違反があった場合は、発注者は是正を命じる。
ロ、義務違反があった場合は、契約を解除することができる。
A、新規契約締結の停止
重大な義務違反があった場合は、一定期間入札を禁止する。
B、調査
イ、発注者は公契約が遵守されているかどうか調査をおこなう。
ロ、労働基準監督署は公契約が遵守されているかどうか調査をおこなう。
ハ、労働基準監督署は違反があることを知った場合は、発注者に速やかに知らせる。
ニ、労働基準監督署は違反があることを知った場合は、会計検査院に速やかに知らせる。
5、公契約法・ILO第94号条約ができるまで
公契約法は1949年(昭和24年)にILOで採択されたのでILOについて若干述べておきたい。
1)ILO(International Labor Organization)
ILOは1919年(大正8年)に設立され本部はジュネーブに置かれている。加盟国数は174ケ国(1997年現在)である。
ILOは世界の恒久的な平和と社会正義の実現を得るために労働条件や生活水準の改善を目的としている。従って、賃金や雇用条件について勧告したり条約を採択したりする。ILO総会で採択された条約は、国際労働条約となり条約の批准に反対した国であっても自国の国会等権限を持つ機関に提出することになっている。総会と54ケ国で構成される理事会で運営されている。総会の参加者(いわゆる組合大会などの代議員)は、政府2・使用者1・労働者1の4人が参加することになっている。
2)ILOと日本の関係
日本は1938年(昭和13年)ILOへの協力を中止した。
1929年(昭和4年)にアメリカから始まった世界恐慌は日本へも、その影響は大きかった。繊維などの問屋の倒産もさることながら、絶対に倒産しないといわれた銀行も、公的資金を投入しながらも倒産という事態が発生した。建設職人も「我々大工も昭和の始めの不況のときは仕事がなく下駄の歯を直して食いつないだものだ」(首都圏建設産業ユニオンの大工・故鴨田丈吉さんの談)といわれるような状況だった。また、大学を卒業しても就職できない者も多かったし、就職できない学生を映画化した「大学を出たけれど」という映画が人気を呼んだとも言われている。
世界恐慌から脱するために先進国は競って軍拡へと走った。これに危機感を覚えた先進首脳は、1930年(昭和5年)1月のロンドン軍縮会議へと進んだ。ロンドン軍縮会議に参加して調印したものの、残念ながら日本は徐々に「天皇を中心とした神の国」として、あの悲惨な軍国主義の道を歩くこととなった。1936年(昭和11年)2月26日、いわゆる2・26の皇道派青年将校が軍隊をひきいての皇居を占拠しようとし失敗した事件は、その後東条英機陸軍幹部などが政権を握り一挙に日本ファシズムへとひた走った。その後、ILOとの関係は絶たれたのである。
ジュネーブでは1940年(昭和15年)非協力的な日本をILOからの脱退扱いとした。その後再加盟は1951年(昭和26年)である。
3)ILO第94号条約
公契約法であるILO第94号条約は1949年(昭和24年)に採択された。当時の日本は連合軍の支配下にあったことは周知の事実である。しかし、日本の将来展望を意識した日本の代表者はILOの規定に基づき総会に政府代表2人・使用者代表1人・労働者代表1人の合計4人を送った。
1947年(昭和22年)に法律171号、いわゆる「政府に対する不正手段による支払請求の防止等に関する法律」が施行され、その中で「労働大臣は一般職種別賃金を定め政府に対し物または役務の提供を行った場合の支払請求の労務単価および政府直用の駐留軍労務者や公共事業労務者の賃金はこれによること」として一般職種別賃金、PW(Prevailing Wages by ocupation)制度を実施した。
なぜ、そうした法律が施行されたのか。それは戦後のインフレと流通機構が闇市場であり、公共事業に対する不正請求を防止しなければならなかった。
しかし、インフレが一定の落ちつきを見せると法律171号の廃止を求める動きが強くなってきた。1950年(昭和25年)4月25日法171号廃止案は閣議決定され5月20日廃止された。その後、PW制度は労務賃金の部分だけ残され、1963年(昭和38年)の5省協定(大蔵・農林・運輸・建設・労働)へ移行となりPWは廃止された。5省協定は、その後3省協定賃金いわゆる公共工事の設計労務単価へと移行された。
1950年(昭和25年)7月22日の参議院労働委員会で政府委員(寺本廣作氏)は山花秀雄議員の質問に対して「労働省で研究いたしております政府を相手方にする契約における労働条項に関する法律、昨年の国際労働会議(ILO)で採択されました条約に依拠して作ろうという法律では、従来のように使用者を処罰して間接的に労働者の賃金を保護するというこではなく、工事代金の支払分から未払賃金相当額を事業官庁なり支払官庁が押さえ、それを労働者に払い込み得るようにすれば、その方が賃金保護としては徹底するのではにいかということで、目下その案が研究されています」(参議院労働委員会議事録抜粋)と言う答弁になっている。遅々として進まない労働省の研究に対して業を煮やした労働組合は1951年(昭和26年5月15日)に参議院労働委員会へ「国等を相手方とする契約における労働条項に関する法律制定の請願」が特別調達要員労組から原虎一議員を紹介として提出された。
その後労働省は「国等の契約に於ける労働条項に関する法律案要綱」を発表した。その説明に対して経営者側から「労働基準法があるのに屋上屋に屋根をのせるようなもので必要ない」「行政監督上の混乱を招く」「不平等な義務を課し違反者を処罰することは憲法違反である」「下請業者の違反を元請に課すことは民法上の原則に反する」「契約の自由に対する制限である」と言う猛反対がおこなった。
一方、戦後の民主化運動や労働組合の誕生は「労働者の賃金を政府が決めるのは可笑しい。労働者の賃金は経営者と労働者が交渉して決まるものであり、労働者の団結した力で闘い取るものである」ということが支配的であった。労働省の公契約法の法案要綱の提出と説明は、時代背景もあったことは否めないが、「国等の契約に於ける労働条項に関する法律案」は一部の労働組合(全駐労=全国進駐軍労働組合)がスローガンとしてかかげるだけの運動として片隅に追いやれることとなった。
4)ディヴィス・ベーコン法
ILO第94号条約は、アメリカのディヴィス・ベーコン法がそのモデルとなっている。従ってアメリカでこの法律がどうやって生まれたかという時代背景を簡単に触れてみたい。
ILOでの採択を18年ほど逆上る1931年(昭和6年)にアメリカで誕生した。なぜこの法律が誕生したか、それは1929年(昭和4年)の9月3日(火)のニューヨークの株式市場の急騰と世界恐慌に端を発する。当時のニューヨークの株式市場は、小きざみの変動はあったものの急騰をしていた。1年半前に比較して2倍になった株もあると言われている。1920年代のアメリカは、将にバブルそのものであり繁栄にバランスを欠いていた。農業や紡績・石炭などの不振や生産技術の進歩による失業者の増大など繁栄と窮乏は限界に達していた。
「絵描きは絵を描くことを止め、大学教授は大学で教鞭を取るこを止め株を買い、株談義に花を咲かせた」と言われるくらいにバブルの絶頂期にあったのである。1929年10月21日に株価の急落がはじまり、10月24日「暗黒の木曜日」と言われるように、株価の暴落によりニューヨークの株式取引所の周辺は不穏な空気に包まれ警察官が出動する事態となった。そして10月29日株式取引所は半日で閉鎖され、その時の株価は絶頂期の半額になったとも言われ、ビルの屋上から飛び下り自殺する者もいたといわれるくらい混乱を来たしていた。現在の東京株式市場の株価が下落し平均株価が数日間で半額になったとすればどうなるか想像を絶するものがあるだろう。
当時のアメリカは、失業者が街にあふれ、特に耐久生産材と建設に従事する労働者の失業者が多かったと言われている。労働者は未来への希望を失い、生活をきり詰め、若い夫婦は親元に居候(いそろう)をし、旅行を控え新しい物を購入することを控えなければ生活が苦しかったと記録されている。
アメリカの中央にあるカンザス州で1889年(明治22年)に州法として公契約法を成立させる意見が出された。その中で立法推進派から「政府事業の受注について、建設業者間の激烈な低単価受注競争から労働者の賃金を切り離し一定に保たなければならない」という主張がおこなわれ、ダンピング受注をして建設労働者の賃金にしわ寄せすることを防ぎたいということで出された。 しかし、カンザス州の公契約法の動きは「最低賃金制の確立によって労働者の賃金は確保できるが、契約の自由に対する国家の介入である」という理由から、アメリカ国家としての公契約法の立法化にはならなかった。
こうした反対論を打破しディヴィス・ベーコン法を成立させるには、世界恐慌という経済的な背景の助けをかりなければならなかった。
大恐慌は建設業界に壊滅的な打撃を与えた。建設投資の激減は労働者の供給過剰となり、とりわけ建設労働者の賃金が下落することになった。建設業者にとって恐慌による仕事の激減は公共工事が命の綱であったし、政府も公共工事に予算をつぎ込んだ。
大恐慌は業者間の受注競争を激化させた。そうした中でニューヨークなど都市部の地元業者は公共工事を容易に落札するこができなかった。それは、アメリカ南部の「渡り業者」が賃金の安い労働者(主に黒人労働者といわれている)を引き連れ全国をかけ巡り、公共工事を奪い取るという現象が顕著になってきた。このため主に北部の地元業者は安価な労働力を利用して入札価格を低く抑え公共工事を落札する南部の「渡り業者」に太刀打ちできなくなり、公契約法を支持するところとなり、1931年にアメリカでディヴィス・ベーコン法が成立することになった。また、ヨーロッパではアメリカの法成立を30年も逆上る1891年(明治24年)イギリスで公正賃金決定がおこなわれ、フランスでは公契約規制といわれるミルラン命令が1899年(明治32年)に成立して、それらの国ではその後建設労働者の賃金は確保されている。
6、現在の状況
1)衆議院労働委員会
1991年11月22日の衆議院労働委員会で故沖田正人衆議院議員(当時の社会党)が「公契約における労働条項に関する条約、すなわち第94号条約は既に42年前に制定されているということでありますが、我が国ではなぜこの94号条約が批准されていないのか、その理由と現況についてお答えをいただきたいと思います」という質問をした。それに対して佐藤(勝)政府委員は「我が国におきましては、ご承知のように労働基準法なり最賃法等で最低労働基準の確保を図っておりますけれども、ほかの産業と同じような労働条件を保障するという意味で法制度がとられていないわけでございまして、個々の労働条件につきましては関係の労使の間で決定されるという全体的な枠組みになっているわけでございます。
そういう意味で、現在これを批准することは困難な状況でございますし、また、この条約が採択されました当時の状況と現在の社会経済情勢が非常に異なってきているということで、現在はその批准の可能性について検討も行っていない状況にございます」(衆議院労働委員会議事録抜粋)というやりとりがあった。
2)企業の反応
1983年(昭和58年)に全建総連東京都連合会で全建総連の首都圏組合に呼びかけ大手ゼネコンなど建設・住宅企業に対して賃金引き上げや労働条件改善を求めて交渉をおこなった。その翌年の1984年9月26日に全建総連関東地方協議会で第1回の企業交渉をおこない、それから年に春と秋の2回、継続して企業交渉をおこなっている。それも2002年(平成14年)春で18年間、36回を数えることになった。その交渉で企業側に対して公契約法の賛同について要求をおこなているが、企業側から公契約法について「賃金・福祉向上の点から評価するが、疑問点もある」「行政が主体となり業界を巻き込んでいくべきだ」「基本的には賛成だが、国がやるべきだと思う」「公契約法が一番有効である」「後継者育成に有効である」「公契約法に賛成している」などの回答がある。これらの回答がすべて企業としての考えとは言えないが、労安担当部長などの個人的な考え方のほうが強いと言えるけれども以上のような企業側の回答がある。
3)今後の運動の方向
国会は勿論のこと地方議会でもほぼ全会派の賛同を得なければ公契約法(条例)は成立しないだろう。従って、重要なことは地元の建設業者の賛同も必要であるから、業者を含めた勉強会や研究会も行わなければならない。
また、地方自治法の直接請求の運動も必要に応じておこなわなければならない。地方自治法第74条では「普通地方公共団体の議会の議員及び選挙権を有するものは、制令の定めるところにより、その総数の50分の1以上の者の連署を以て、その代表者から、普通地方公共団体の長に対し、条例の制定又は改廃の請求をすることができる」ことになっている。直接請求が成功して地方議会に出されたとしても、地方議会での議員各会派の賛同が必要である。直接請求の運動も必要ではあるが議員や議員とつながりのある地元業者の賛同を得る運動を抜きに直接請求だけでの運動では困難であるので、公契約法を理解してもらうため関係者との研究会を含めたあらゆる運動の選択肢を考えていきたい。
ゼネコンを中心とする建設業界の現在の姿は決して正常とはいえない。1日も早く正常な状態、いわゆる建設に働く労働者が他産業労働者と同じような労働条件下におかれ、企業も健全な姿にもどり、常識では考えられないような低単価受注競争を止め、正当な受注競争の中で21世紀における建設生産活動が行われ国土の発展に寄与しなければならないだろう。そのためにも、政府や地方自治体の担当者・各級各会派の議員・建設業者・労働組合が一体となって研究し、日本に見合ったILO第94号条約、いわゆる公契約法(条例)=国等の契約に於ける賃金等確保法が成立するように望むものである。
現在、各地区や関係団体を含め学習会を積み重ねながら、地方議会で公契約条例の趣旨採択の運動を関係議員方々を通しておこなっていきたい。