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JALは潰してこそ甦る/屋山太郎(政治評論家)、中条 潮(慶應義塾大学教授)
http://www.asyura2.com/09/hasan65/msg/888.html
投稿者 gikou89 日時 2009 年 11 月 12 日 11:06:54: xbuVR8gI6Txyk

(回答先: 日本株がどうしても上がらない理由を列記してみた 投稿者 gikou89 日時 2009 年 11 月 12 日 11:03:45)

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20091110-00000002-voice-pol

◇9割の空港が赤字◇

 屋山 民主党政権になって、自民党政権時代には動かなかったさまざまな問題が動き始めました。その1つが航空問題です。いま話題となっている日本航空(JAL)問題は、日本のずさんな官僚政治の象徴のようなもので、もうどうしようもないところまで来ています。

 去る9月15日に、国交省主催で「日本航空の経営改善のための有識者会議」があり、路線廃止や人員削減のリストラ計画が出されました。しかし会議のメンバーは皆、旧運輸省絡みの人で、前原誠司国交相はこれでは駄目だとその案を突っぱねた。それで、元産業再生機構の高木新二郎氏、冨山和彦氏ら5人からなる「再生タスクフォース」を設置したわけです。この再生チームが練った再建案はきわめてドラスティックなものでした。

 中条 私もこの再生チームには期待しています。さらに9月末に前原大臣は、空港整備特別会計(社会資本整備事業特別会計空港整備勘定。以下、空整特会)を抜本的に見直す、と明言しました。これには大賛成です。自民党政権時代では議論がまったく進まず、私も委員として参加していた規制改革会議では、とりあえず空港の収支を公開することまでしか国交省に認めさせられませんでした。空港が存在する地方の議員が、空港をなんとか維持しなくてはいけないと考えるものだから、必死に抵抗するんです。

 屋山 空整特会は、空港使用料、着陸料、財政投融資など、いろいろなものを含めて総額5280億円がつねにプールされています。当然、お金のない自治体は、くれという。そして必要がないにもかかわらずどんどん空港を造ってしまい、結果、いま国内に99も空港ができてしまいました。これは明らかに造りすぎです。特別会計に金が集まるシステムをつくり、未来永劫、ダム、河川改修などを続ける。最後は工事のための工事になる。それがいまの現状でしょう。

 中条 2010年3月の開港予定で進められている茨城空港も多額の空整特会が充てられています。じつは私は当初、茨城空港開港には賛成していたんですよ。なぜかというと、もともとある航空自衛隊百里基地の滑走路を共用するという話だったからです。それならばコストを抑えられる。ところが、新しく滑走路を造ってしまった。これは結局、新しい空港を造るのと同じことです。こういった無駄遣いが日本中で見られる。

 今年の5月、国交省と航空政策研究会が各空港の収支を算出したんですが、9割の空港が赤字です。ただ、すでに投資した分は除き、運営費用と運営収入だけで考えると、かなりの空港が黒字になる可能性はあります。また、日本では空港と空港ビルは別会社の経営で、空港ビルのほうはかなり収益を上げています。空港ビルは空港会社の施設(滑走路など)があってこそ稼げるわけですから、一緒に経営を行なえば、県庁所在地クラスにある空港は黒字になるでしょう。

 ところが、空整特会があるものだから、自治体側は空港のコストを抑えようとはしないし、自力で客を呼んでこようとも考えない。そして特別会計の資金を配分するのは国交省の官僚なので、自治体や地元の議員が国交省に圧力をかける。

 屋山 完全に中央集権なのです。たとえば、道路特定財源を一般財源化しろといったら、1800の自治体の首長がほぼ全員反対です。なぜかといえば、「あそこで反対しないと、あとでひどい目に遭うんです」と。「じゃあ他の補助金も要らないの」と霞が関に脅される。

 中条 かつ、省庁は完全に縦割りです。あるとき北海道のある市長さんが「高速道路を早く欲しい」というんです。ただ本音は大学が欲しいらしい。しかし、高速道路は要らないから大学にお金使わせてください、といったら一銭も入らない。だったら高速道路を下さいといったほうが得だという。

 屋山 その象徴が、後期高齢者医療制度です。医療費に対する財政負担を年間2200億円倹約するといって、75歳以上の高齢者からお金をふんだくった。一方で、道路特定財源を一般財源化した結果、5兆4000億円が道路以外にも使えるようになりました。この道路予算の25分の1でも老人医療費へ回せば、高齢者の負担は重くならずに済んだのです。しかし、国土交通省の予算を、役所の壁を越えて厚生労働省へ渡せなどとは、総理大臣であってもいえません。要するに、「省あって国なし」なんですね。

 中条 国の政治力はいまだ航空界に強い影響を及ぼしている。不要だと思われている空港をもつ、ある自治体の首長さんが、「うちは一銭たりとも自治体のお金を空港に使っていません。すべて国が面倒見てくれるんです」といって、威張っている(笑)。

◇天下りだらけの空港・航空会社◇

 屋山 航空問題は、自民党の族政治と中央集権の官僚政治のなかでねじられた縄のようなものです。というのは、小選挙区制になるまでは完全に利益誘導政治でしたから、地方選出の代議士は何か地元にもってきたい。議員が「ここに空港を造ってやる」というと、役所も権益を増やしたいから「お願いします」と呼応する。さらに、その地域の地場産業も、空港ができれば商売が栄えるので応援する。こうして政官業で利害が一致するわけです。

 中条 空港にしろ道路にしろ、費用を利用者が負担をするというシステムにすればいい。イギリスにブリストル空港という地方空港があります。この空港は条件的には静岡空港や茨城空港と同じで、空港の勢力圏の人口は同等、首都と結ぶ路線がない。日本の国内線は、東京との路線がなければ基本的に経営は成り立ちません。現に、静岡空港や茨城空港の需要予測は年間80万〜100万人といわれ、それさえオーバーじゃないかと批判されています。ところがブリストル空港は、ロンドンとの路線がないにもかかわらず、630万人の集客実績を誇っているのです。これは民営化して、空港が必死にマーケティング努力をしているからです。結果、ターミナルの商業収入もすごい。私は昔から「日本の空港を民営化しろ」と主張していますが、ブリストル空港に勤める人から説明を聞くと、その私でも辟易するぐらい、いかにして客を集めるのかを話します。

 翻って日本は、いまだ官僚や自治体関係者が空港経営をやっていて、儲けようという気がまったくありません。これを止めるためには、空港をすべて民営化して独立採算にしなければいけないと思います。

 屋山 空港を民営化するとなれば、おそらく問題となるのは外資規制です。2007年に、オーストラリアのマコーリーグループが、羽田空港ターミナルビルを所有する日本航空ビルディング(JAT)の株の20%近くをもって大騒ぎとなりました。政府は「国家の安全保障」を理由に、外資が入るのに大反対し、結果マコーリーは撤退してしまった。このとき羽田からマコーリーを追い出すようにもっていたのは経済産業省、つまり役所です。というのは、外資がはびこってくると自分たちの天下り先がなくなってしまう。

 中条 この問題に関しては、役所はとても敏感です。成田空港の完全民営化の際には、役所のほうから外資規制すべきという話が出たのですが、結局、いろいろな反対があって再検討することになりました。しかし、結果的にはもっと悪くなった。外資規制はやらないけれども、1株主が20%以上の株を保有することは禁止となったんです。

 屋山 空港を経営するためには過半数の株をもたなければいけない。これでは外資はもちろんのこと、国内の民間資本でも駄目だということになってしまう。

 中条 官僚はうまいです(笑)。彼らは、うまく問題をすり替えた。20%までだったら外資も投資できるから、外資規制はしていませんといえる。しかし実質、これで外資規制もできるわけです。

 屋山 日本の官僚って、そういうペテンみたいなことをやるんですよ。

 また、空港会社への天下りは昔からの慣行です。関西国際空港ができたときも、初代会長に元住友電気工業社長の亀井正夫さんが就任したのですが、彼が会長室へ行ったら、机に紙が置いてあって、もうすでに役員9人が決まっていた。見ると、各省から1人ずつだったそうです。

 成田空港でも2007年にやっと、民間人である元住友商事副社長の森中小三郎氏が社長に起用されました。これは安倍晋三総理の時代です。しかし、やはり1人ではどうにもなりませんでした。安倍さんもそれはわかっていたのですが、なにしろ足を引っ張る人間が周りに大勢いたので、結局、行政改革ができなかった。あのときに私は、もう自民党では駄目だ、政権交代しかない、と確信しました。

 中条 空港だけでなく航空会社自体も、官僚にとっては非常にいい天下り先です。昔は、国際線はJALのみで、いわゆる「ナショナル・フラッグ・キャリア」でした。そのため官と利害が一致して、持ちつ持たれつの構造ができあがってしまった。これはJAL側に特権意識をもたせた原因になっています。というのは、日本人にはどこか官尊民卑の考えがあるので、官に近いほうが偉いと思ってしまう。

 こういうプライドをもって、JALは会社を築いてしまったんです。だから、なかなか自分たちで自社を改革しようというマインドが育たず、どうせ国が助けてくれるという意識が働いてしまう。その結果が、いまの惨状ですね。

◇愛社精神のないJALの人々◇

 中条 そのJALの問題ですが、そもそも2006年にJAS(日本エアシステム)と合併させられた際に、余分な路線や人員、さらには飛行機も抱え込んでしまいました。これが今回の経営破綻の1つの原因となっています。

 屋山 日本の航空会社が不採算の路線をやたらに抱えてしまう理由は、先に述べたように政官業の癒着構造があるからですが、最近は、何とか航空会社を呼び寄せようと、空港の周辺自治体が搭乗保証を設けるようにもなっています。

 たとえば、昨今空港建設で揉めた静岡空港は、JALに60%の搭乗保証を約束しました。搭乗率が六割を切れば、1人につき1万5000円を県からJALに払います、と。JALが了承すると、今度は静岡県のほうが、「静岡からJALが飛びます」と宣伝する。すると県民は喜んで空港建設に賛成します。搭乗率が6割を切れば1人につき1万5000円も税金が払われるとは、県民も思っていません。

 中条 空港が搭乗保証をするというのは、航空会社にとってはだいぶましな状況になった結果です。昔はともかく有無をいわさず飛べ、だった。

 しかし、搭乗保証に苦しむ自治体は多いのです。たとえば鳥取県は、アシアナ航空が日本で最初に米子空港に飛んできてくれたので喜んでいたんですよ。しかし70%の搭乗保証付きです。最初は物珍しさで韓国へ行く客は乗りますが、だんだん減ってくる。世界の航空会社はそれがわかっていますから、初めから、飛ぶ代わりに搭乗保証をちゃんとしてくれ、と要求します。実際、70%の搭乗保証を維持するために、鳥取県は必死ですよ。しかし、そうまでして国際線は必要なのでしょうか。自治体は真剣に考えなければいけません。

 屋山 国内の空港については自由化されていますよね。ならば、自治体は赤字路線を自由に廃止できるでしょう? 昔は認可制で、国が審査をして認可が下りないと廃止できませんでした。

 中条 いまは届け出制になったのですが、ANA(全日本空輸)が新潟―福岡線を廃止しようとしたら、国交省の航空局が廃止の届け出を受け取らなかった。こういう拒否の仕方があるわけです。お役所の常套手段ですよ。逆に、新規参入したいという会社があっても、届け出を受け取らないということもできる。これは、実質的にはまだ自由化されてないのと同じです。廃止ができなければ、当然、航空会社は経営改善できません。

 屋山 路線の国交省支配ですね。航空会社はその犠牲になっている。本来は要らない路線がそうとうあると思います。

 話をJALに戻しますが、この会社自体が高コスト体質なのも問題なんです。先日CNNのニュースで、JALが褒められていましたよ。社長である西松遙氏の年俸が950万円に対して機長が3000万円なんて日本の社長は偉い、それに比べてGM会長は自家用機なんかに乗っている、と(笑)。

 社員の給料が高いうえに、退職者への企業年金の支給額がANAでは1人10万円以下なのに比べて、JALは1人につき25万円です。会社全体では年金財政は約3000億円の赤字です。JALはいま、日本政策投資銀行と民間金融機関とを合わせて総額1000億円の追加融資を要求していますが、これは焼け石に水でしょう。たとえ他の会社に買ってくれと持ち掛けたって、手を挙げる会社があるかどうか。一応、資産価値は4500億円と称していますが、実質的には2000億円ぐらいではないでしょうか。そして2000億円で買ったとしても、企業年金分の3000億円が自動的に負債としてくっついてくる。

 中条 いまのままでは、銀行はお金を貸さないでしょう。一時、銀行がJALへ融資を渋るのは風評被害で過度に不安が高まっているからだという意見もありましたが、私は風評被害ではないと思います。やはり相手は企業ですから、銀行はちゃんと財務状況を見たうえで判断していますよ。

 屋山 皆が、もう経営改善は難しい、と思っている。鳩山総理は公的資金を投入するといっていますが、公的資金で救済するつもりなら、いくらつぎ込めばいいのか分かりませんよ。国鉄民営化の際は結果的に27兆円もの税金を放り込んでしまいましたからね。本気でやろうと思ったら、それぐらいの単位のお金が必要でしょう。

 中条 アメリカの航空会社だったら、チャプター・イレブン(米連邦破産法第11条)でもって、自分から倒産してしまうんです。チャプター・イレブンを適用した企業では、すべての債権回収や訴訟がいったん停止され、過去の「負の遺産」が法律によって強制的に断ち切られます。ですから、給料が3000万円だったパイロットでも雇用契約をやり直して、たとえば1500万円で雇えるわけです。

 屋山 いったん会社を潰して清算して、新しい会社をつくったほうがいい。社員は大幅に削減し、いままでの給料の半額で雇う。退職者の年金も減額する。いまの経営者には辞めてもらう。債務に関しては管財人が処理をする。それしか再建の方法はないと思います。

 中条 その際、すでに高額の年金をもらっている人からは、反発が出るでしょうね。しかし、たとえば生命保険でも、会社が潰れて別の会社が引き受けた場合は条件が悪くなる。JALの場合も、少し勘弁してください、といわなければならないでしょう。

 屋山 2年ほど前、TBSが退職者の企業年金を勝手にカットしたことで訴訟となって、TBS側が負けました。だから会社は従業員の年金を勝手にカットできない。社員の3分の2の賛成が必要なのです。日本たばこ産業の場合は、企業年金の2割カットに全員が賛成しました。そうしないと、会社が潰れてしまうからです。しかしJALには、そういう愛社精神がない。ビタ一文もまけないといっています(笑)。

 中条 普通ならば従業員は「会社がつぶれたら元も子もないから、再生するためにはしょうがない。いやだけど」となりますよ。その協力が取り付けられるから企業再生ができるわけです。しかしJALではこれがたいへん難しい。

◇羽田は拡張してハブ空港に◇

 屋山 そういった協力を取り付けられないのは、労組問題が大きく関係しているんです。JALには8つも組合があって互いにいがみ合っている。

 JALは昔から労組同士の対立が激しいんです。もともとは乗務員組合があり、これは共産党系なので先鋭的で強かった。すると会社側は、それに対抗すべく御用組合をつくりました。客室乗務員組合も同様です。さらに1985年に御巣鷹山のジャンボ機墜落事故が起こり、その経営の立て直しのために、当時自民党総裁だった中曽根康弘さんに頼まれて、鐘紡の伊藤淳二氏が会長に就任したのですが、彼は機長組合まで認めてしまった。伊藤氏が就任した当時が労組統合・社内改革のチャンスだったのですが、失敗したんです。

 労働組合が二分裂、三分裂するというのは、国鉄も同じです。動労(国鉄動力車労働組合)と鉄労(鉄道労働組合)があって、一方は反官で徹底的に官僚と戦い、もう一方は、それはあまり良心的ではないという穏健派です。JALも基本的にはこれと同じ構造ですが、8つも乱立していると、当然、規律が乱れています。僕は講演なんかで飛行機を使う際は、条件に航空会社はANAと指定する。JALは違う組合の客室乗務員が乗り合わせると、口も利かないという。そんな会社は危なくてしょうがない。いつかは飛行機が落ちるんじゃないかと(笑)。

 中条 それがいちばん心配されるところです。国鉄の話が出ましたが、あのときも鉄道事故が起こることが一番の心配でした。ストライキだけならまだいい。大事故につながる前に、体制を整えるべきです。ただ、国鉄改革も、社員がストライキをして利用者に大ブーイングとなったことで国民的コンセンサスができあがりました。そういう状態にならないと、大臣もやむをえないといえないのが日本です。いまJALの問題はそこまで来ているかどうか。

 屋山 前原大臣はきちんと認識していると思いますよ。今回選ばれた「再生タスクフォース」は産業再生機構で成功した、いわば精鋭ばかりですから。おそらく、もう日本航空を潰す話にしかならないと思いますが、それでいいと思います。

 中条 私もそう思います。あとは再生チームがそれを実行してもよいという保証を、前原大臣が与えてあげないといけません。航空会社は国家にとって特別云々と横ヤリを入れる人がいるでしょうが、それを聞き入れてはいけません。

 屋山 会社の規模を縮小して出直して、銀行をバックにじっくり腰を据えてやればうまくいくと思いますよ。

 中条 そもそも日本人のマーケットに対しては、日本の航空会社は強いんです。若い人は違うかもしれませんが、やはり大半の日本人は、少々価格が高くても、日本語が通じて、きめ細かいサービスを提供してくれる日本の航空会社を好みます。だからJALも、そのマーケットだけに限定すべきだと思います。ブリティッシュ・エアウェイズやルフトハンザのようなグローバルエアラインはあきらめたほうがいい。

 屋山 たとえば国際線でいうとアメリカとか、アジアだと中国やシンガポールなど、本当の意味での幹線でやっていくことですね。ただ、昔からJALはプライドが高い。たとえば国際線の路線をばらして売るというときに、ANAにだけは売りたくないと思っている。

 中条 これもプライドの話で、羽田空港を拡張すると国内線に強いANAに得だからといって、JALはつい最近まで反対してきたんです。だから、ANAは羽田をベースに国内線中心、JALは成田をベースに国際線中心という構図ができあがってしまった。つまりJALには、会社を発展させるためにはどうしたらいいかという発想はないんですね(笑)。

 屋山 羽田空港については、今度、第4の滑走路ができますが、第5滑走路もつくって、ハブ空港をめざすべきです。そうしないと、韓国の仁川空港がハブ空港の地位を確立してしまい、欧米からの客がどんどん吸い取られて、航空業界全体が衰退してしまいますよ。

◇新規参入や海外ファンドを受け入れよ◇

 屋山 航空界の健全化という意味で、JALが新しく出直すという問題とは別に、今後、日本の航空会社で新規参入の可能性はあるでしょうか。

 中条 ローコストキャリア(LCC、低コスト航空会社)は十分ありうると思います。スカイマークやエア・ドゥが参入したころは、羽田の発着枠をもらえなかったのですが、いまは新規参入のところには優先的に枠が配分されますから、環境はよくなっています。

 おそらくJALは今後、稼げるビジネス路線だけに限定するでしょう。ANAの路線も基本的にはそこですね。一方で、LCCが新規参入して低運賃で対応するとしても、これもある程度の客がいる路線に限られる。となると問題は、客をそれほど見込めない田舎の路線をどうするのかということです。

 屋山 そういうのはコミューター(小型旅客機)に任せればいい。ヨーロッパでも東南アジアでも、コミューター的なものがあって、立派ではないけれど、ちゃんと利用されています。ヨーロッパで、たとえばパリからジュネーブやマルセイユへ行く便は小型で、運賃は非常に安い。日本の路線はどこへ行くにも値段が高すぎる。

 中条 金を掛けることだけが社会資本整備ではないですからね。

 たとえばイギリスでは、パパママ・エアラインというのがあって夫婦2人でやっているんです。夫が社長で元ブリティッシュ・エアウェイズの機長。奥さんが元ブリティッシュ・エアウェイズの客室乗務員で副社長。そして奥さんが自宅で機内食をつくっている(笑)。こういう形があってもいい。

 屋山 大きいジェット機じゃないと駄目だという認識をもっている人が日本にはたくさんいますが、運賃が安くなれば、その認識は変わっていくでしょう。

 中条 制度的には自由ですから。むしろ新規参入の場合、問題は日本人のベンチャー精神のほうです。最近は新規参入して頑張っていこうという人がなかなか出てこない。また先ほど外資規制について触れましたが、アジアには高リスク高リターンを狙うファンドがいっぱいあって、アジアのLCCには、そういうファンドからの資金がかなり入っています。日本もそれを見習ったらいいと思います。

 ただ、ここでも日本人の意識が問題で、じつはスターフライヤーにも外資のファンドが入っている。外資規制があるので3分の1以上の株はもてませんが、スターフライヤーは15%しか受け入れていない。ファンド側は出資を増やしたいといっているのに、外資に対するアレルギーがあるのか、スターフライヤー側が抑えているわけです。

 屋山 世界を見ると、英国のヒースロー空港はスペインの資本が入っていますし、コペンハーゲンの空港はマコーリーがもっている。先進国では日本だけがいまだ空港は実質、国家経営で、非常に閉鎖的です。

 日本人の意識転換ももちろん必要ですが、現状を変えるためには、やはりまずは政官業のコングロマリットをつぶさないことには始まりません。

 中条 この問題については自民党と同じで、じつは民主党内でも非常に幅広い考え方があるんです。自民党政権時代は議論していくなかで徐々に本質がわかってもらえたので、民主党の先生たちには、これからわかってもらわないと。

 屋山 そのためには前原大臣のリーダーシップが肝心です。いま八ツ場ダムの問題でもめていますが、あの問題は、今後を占うメルクマールです。ここで譲ってしまったら、あとはズルズルッと行ってしまう。そういう意味では、撤退の決意をバシッと述べて、ここから1ミリも引かないんだぞという意向を示したのはよかった。

 中条 それは政治家として大事ですね。今回の政権交代は、航空行政の問題を含め、いろいろなものをゼロにするチャンスです。そのチャンスをぜひ生かしてほしい。

 それからもう1つは、これはある民主党議員もいっていることですが、まだ民主党には族議員は育っていないので、育つまでのあいだにいろいろな問題を解決しなければいけません。政権与党になったら、必ず族議員が出てきますから。

 屋山 だからこそ政権交代が必要なんです。族議員が育ってきたら、また政権交代をすればいい。やはり50年もやったら大木になってしまいます。民主党がこれからどう取り組むか、われわれはしっかり見ていく必要があります。

 

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コメント
 
01. 2010年6月14日 19:15:17: WErkxdAyHE
潰れたら、潰れたきりだと思いますよ。
どこかの食肉冷凍会社みたいに。
水運でこそ成り立つエコの島国日本には
全日空を含めて、航空会社は一切不要です。

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