★阿修羅♪ > 国家破産65 > 645.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1970
【ダウ平均の1万ドル台回復を待つまでもなく、世界の株式市場はバブルの様相を呈していた】〔AFPBB News〕
我々は何も、ダウ工業株30種平均株価の1万ドル台回復まで待つ必要などなかった。世界の株式市場が再びバブル化していることは、少し前から明らかだったのだから。
表面的には、今の状況は2003年や2004年に似ている。低い名目金利や物価の落ち着きも手伝って、住宅、信用、コモディティー(商品)、株式市場でバブルが膨らみ始めたあの頃だ。
ただ、当時と今とでは大きく異なる点が1つある。今回のバブルは早々に弾ける、という点だ。
足元の相場がバブルだと、どうして分かるのだろうか。筆者は、株式市場が割高かどうかを判定する指標として、「景気循環調整後株価収益率(CAPE)」と「Qレシオ」を愛用している。
CAPEは、エール大学で経済学とファイナンスを教えているロバート・シラー教授が考案した指標で、物価変動を調整した後のPER(株価収益率)の10年移動平均値である。株式時価総額を純資産で除して得るQレシオは、経済学者のジェームズ・トービン氏が提唱した概念で、アンドリュー・スミザーズ氏がQレシオに関するデータを収集している*1。
CAPEとQレシオは全く別のものを測る指標だ。だが、市場の値づけが相対的に高すぎる(あるいは低すぎる)のではないかという問いには、大抵同じ答えを出す。
【9月半ば時点で、米国株は35〜40%割高だった】
例えば今年9月半ばには、どちらの指標も米国の株式市場が35〜40%割高だと示唆していた。株価はその後、企業利益の移動平均をはるかに上回るペースで上昇しているから、現在がどういう状況であるかは誰にでも計算できるだろう。
バブルが再来した理由はただ1つ、名目金利が極めて低いことにある。人々はこの金利の低さに促され、あらゆる種類のリスク資産に資金を投じているのだ。住宅価格でさえ、再び上昇し始めている。
住宅市場が割高か割安かを判断するには、家賃に対する住宅価格比率や所得に対する住宅価格比率などの指標が頼りになるが、米国の住宅価格は今回の危機下で、両指標の長期平均から見て適正と言える水準には一度として下落していない。
ただ、5年前と違うのは、中央銀行が物価の安定と金融システムの安定という2つの目標を背負っていることである。既に何度も指摘されているように、この2つの目標はすぐに相反する危険性を孕んでいる。
【ECBは通常であれば、とっくに利上げに踏み切っているはず・・・】〔AFPBB News〕
例えば欧州では、通常であれば欧州中央銀行(ECB)がとっくに利上げに踏み切っているはず。
にもかかわらず、まだ金利を据え置いているのは、慢性的な自己資本不足に陥っている銀行システムにダメージが及ぶ事態を避けたいからだ。欧州の銀行システムはまだ、ECBの生命維持装置に依存した状況にあるのである。
欧州以外の地域も、多かれ少なかれ、同じような状況にある。
筆者は、向こう12カ月以内にインフレ率が大幅に上昇する可能性はゼロだという見方を支持している。しかし2010年以降は、その可能性が大いに高まる。
インフレが再来するとの認識がいったん根づくと、各国中央銀行は比較的速やかに――前回のサイクルと比べるとかなり速いペースで――、非常に厳しい金融引き締めスタンスに移行せざるを得なくなるかもしれない。そして、インフレを伴う短期間の景気拡大はやがて景気後退に変わり、銀行危機が再び生じる。デフレに陥る可能性だってある。
【中銀がコントロールを失い、物価が大きく変動する時代】
インフレとデフレは正反対のシナリオではなく、連続して起こり得るシナリオと考えるべきなのだ。実際、我々はこの先、中央銀行のコントロールが及ばなくなり、物価が上にも下にも大きく変動する時代を迎えようとしているのかもしれない。
これはまさに、経済学者のハイマン・ミンスキー(1919〜1996年)が、金融不安定性仮説*2で予言していたことにほかならない。ミンスキーはこの中で、金融セクターが巨大で、投資財の生産に過剰に重点が置かれる世界では、生産と物価の両面で不安定性が生じると論じていた。
またミンスキーによれば、これらは不安定性をもたらす大きな理由ではあるが、不安定性をもたらすメカニズムは、政府と中央銀行の危機への対応の仕方にある。国家は景気後退を終わらせる手段を持っているが、国家が用いる政策が次の不安定性を生じさせてしまうのだ。
ミンスキーはこうした議論を、1970年代から1980年代初めにかけてのデータを中心に分析したうえで展開したのだが、彼の理論はその後の世界経済の様子、特に過去10年間の展開を実に見事に説明している。
世界が目の当たりにした金融バブルの拡散と経済の極度の不安定性は、確立されたどんなマクロ経済モデルでも説明できていない。我々が頼れるのは、ミンスキーの理論ぐらいなのである。
彼が提唱する政策は、心が穏やかになる類のものではない。足元で実際に起きていることと照らし合わせると、なおのことである。世界金融危機が勃発した後、各国首脳は金融機関の高額なボーナスなど、どうでもいいような問題に目を向けてしまい、金融セクターの規模という問題には全く手をつけていない。
従って、もしミンスキーが正しければ、不安定性は今後も続き、さらに悪化する公算が大きい。
【どちらに転んでも避けられない危機】
現在の世界の状況からは、2つのシナリオ(あるいは、それらが組み合わさったもの)が進展する可能性がある。第1のシナリオは、中央銀行が2010年のある時点で「出口政策」を実行に移し始め、それが引き金になってリスク資産の価格が再び下落するというものだ。
例えば英国では、金融政策が通常のものに戻れば、住宅市場が再度下落することはほぼ避けられないだろう。現在の市場は、超低利の住宅ローンによって支えられているからだ。
第2のシナリオは、中央銀行が物価の安定よりも金融システムの安定を優先し、マネーをできる限り長期間、じゃぶじゃぶと市場に供給し続けるというものだ。この場合、世界はすべての金融市場危機の母である「債券市場の暴落」を経験し、大恐慌とデフレに突入するだろうと筆者は考えている。
言い換えれば、中央銀行がどう対応しても、金融危機に再突入する危険性は免れない。その意味で、うまくいっている金融政策とは、左右両側に不安定性という断崖絶壁が口を開けている、高い山の尾根を歩いているようなものかもしれない。
そして我々の知る限り、麓まで安全に下りられる道はないのかもしれないのだ。