★阿修羅♪ > 国家破産65 > 512.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11942120091014
[東京 14日 ロイター]日銀の白川方明総裁は14日、金融政策決定会合後の記者会見で、12月末に期限を迎えるコマーシャルペーパー(CP)や社債の買い入れなどの企業金融支援策について「それぞれの効果や必要性をできるだけ包括的に点検したうえで、次回以降の適切なタイミングでとりまとめて判断する」と述べ、判断を先送りした。
リーマン破たんによる「急性症状」に対処するために導入した「異例の措置」の打ち切りと、景気下支えのために実施している金融緩和からの「出口」が混同されるのを懸念したためだ。ただ、CP・社債市場については「政策に支えられている面は後退している」との判断をあらためて示し、次回以降の買い入れ打ち切り決定をにおわせた。一方で「時限措置の取り扱いのいかんにかかわらず、日銀は現在の超低金利を維持するとともに、潤沢な流動性供給を行うことを通じて極めて緩和的な環境を維持して、景気回復をしっかり支えていきたい」と超低金利を維持する姿勢も強調した。
<異例の措置はとりまとめて判断>
白川総裁は、リーマン破たん後の金融市場の極端な収縮という「急性症状」に対処するために導入した各種時限措置について「それぞれの効果や必要性をできるだけ包括的に点検したうえで、次回以後の適切なタイミングでとりまとめて判断することが適当という結論になった」と指摘。その上で、判断を先送りした理由について「CP、社債(の買い入れ)の部分だけ発表すると、全体として日銀が考えていることが正確に伝わらないおそれがある。そういう意味では、経済・金融環境を全体的に包括的に点検し、その中で金融政策、さらにさまざまな時限措置を包括的に点検し、できるだけ誤解のない形で発表したい」と説明した。
ただ、異例の措置のうち、CP・社債の買い入れについては「CP・社債市場では低格付け社債を除き、良好な発行環境となっている」として「政策に支えられている面は後退している」と強調、予定通りの打ち切りをにおわせた。
また、企業金融支援特別オペについても「金融市場の安定に大きな効果を発揮してきた」と評価したものの「最近では金融市場が安定を取り戻すとともに、特別オペと従来からある共通担保資金供給オペとの差は小さくなってきている」と述べ、解除に向けて一歩踏み込んだ。
白川総裁は「例えば実際の金利をみてみると、特別オペは0.1%で固定しているわけだが、期間2カ月、あるいは3カ月で実行している共通担保資金供給オペのこのところの落札レートは0.12%あるいは0.13%となっている。差として0.02%ないし0.03%と非常に小さい。さらに特別オペは企業の証書貸付債権等も担保にとるために、さまざまな事務コストがかかってくる。そうした事務コストも考えてみると実質的な差は、より小さくなる」と指摘。
判断にあたっては「固定金利、金額無制限という特別オペの特殊な機能が依然として必要とされるのか、あるいは特別オペの担保を含む広い範囲の担保を利用し、市場に与えるゆがみの小さい形で資金供給を行う共通担保資金供給オペなどを積極的に活用した方が有効かつ望ましい局面になっているのかといったことが判断基準になる」と説明した。
<緩和的な金融環境は粘り強く確保>
白川総裁は「通常、出口戦略として議論しているのは、マクロの財政・金融政策をどうするか、金融システムの安定化策をどうするかが念頭に置かれている」として、「異例の措置」の打ち切りと、伝統的な金融政策とは分けて考えるべきとの考えを示した。
そのうえで「日本経済は、ようやく持ち直しの緒についたばかり。金融政策運営では、持続的な成長経路への復帰を支援するために、緩和的金融環境を粘り強く確保していく」との決意をあらためて示した。
日銀は今回の決定会合で、政策金利である無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.1%前後で推移するよう促すとの姿勢を維持。「当面、景気・物価の下振れリスクを意識しつつ、わが国経済が物価安定のもとでの持続的成長経路へ復帰していくため、中央銀行として最大限の貢献を行っていく」との方針を確認した。
<景気判断は2カ月連続で上方修正>
日銀は景気の判断を、9月の「持ち直しに転じつつある」から「持ち直しつつある」に上方修正した。景気判断の引き上げは2カ月連続。金融環境については「厳しさを残しつつも、改善の動きが広がっている」との見方を据え置いた。
一方、消費者物価に関して、白川総裁は「前年比で見たマイナス幅は今月くらいが一番大きくて、これから前年の裏がでるので、マイナス幅自体は幾分縮まっていく」との見通しを示した。総裁は「物価下落が原因となり、追加的に景気が悪化する可能性については、これからも注意深くみていく」と注視する姿勢をみせたが、先行きの物価予想に関するデータなどから「今、悪化しているということではない」とも付け加えた。
上振れ要因として挙げている新興国経済については、新興国への輸出が日本の輸出全体の増加に寄与していると指摘したが、今後については「先進国のバランシート調整と新興国の景気回復を丹念にみていく」と述べた。
白川総裁は、今回会合に出席した財務省・内閣府の政務官から「政府として、日銀法の規定にのっとって、日銀の金融政策運営の独立性を尊重し、日銀との十分な意思疎通図っていきたい」との発言があったことを紹介した。しかし、政府側からの時限措置についてどういった発言があったかについてはコメントを控えた。
政府で議論している中小企業の借り入れの返済を猶予する法案についても直接のコメントを控え、「経済回復を確かにするために、中小企業を含めた金融仲介機能が円滑に働くことが重要な要素のひとつ」と述べるにとどめた。
<政治との関係を勘ぐる向きも>
今回の会合では異例の措置の打ち切り決定を先送りしたが、民間エコノミストの間では、政治との関係を勘ぐる向きがある。みずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は「亀井静香金融担当大臣は中小企業金融に関連する返済猶予法案を主導しており、企業金融問題を論じる上では、こうした政府の動きを日銀は無視できない」と指摘。第一生命経済研究所主席エコノミストの熊野英生氏は「年末から年度末にかけての二番底懸念の行方と、政府の二次補正の動向が読み切れないことが、日銀を躊躇(ちゅうちょ)させたという理解もできる」との見方を示した。
一方、藤井裕久財務相は14日午後の会見でCP・社債の買い入れに関し「応札はほとんどない。いずれ政策決定会合で(議論が)出るかも知れない」と打ち切りに一定の理解を示している。
また、大企業製造業の想定為替レートである1ドル=94円程度から大きくかい離した為替相場も要因になったと指摘する声もある。クレディ・スイス証券チーフエコノミストの白川浩道氏は「異例の措置は為替とは直接関係はないが、金利上昇の憶測を呼ぶリスクもあった」と指摘した。