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COLUMN-〔インサイト〕「金価格革命」の到来か、流入マネーの構造変化進む=Mストラテジィ 亀井氏
2009年10月09日 13:27
ドル建て金価格が過去最高値を更新した。ニューヨーク・コメックスの先物価格で取引の中心となっている(中心限月)12月限は、10月6日の取引で1オンス=1045.00ドルと08年3月17日の1033.9ドルを大きく更新した。
08年3月を含め、過去2度の台替わり局面ではいずれも直後に急落。「瞬間タッチ」で終わった感が強かったのに対し、今回は大台乗せ後も比較的底堅く推移。「相場つき」が変わったといえる。
急騰の背景にあるのはヘッジファンドなど大口投資家の資金流入だ。当初は「ポールソン&カンパニー(以下、P&C)」など、このところの「当たり屋」と市場で注目されているファンドを主体とする動きとみられたが、その後多くのヘッジファンドや旧投資銀行系も買い参入してきたことで買い圧力が強くなった。
米商品先物取引委員会(CFTC)が毎週公表している大口投資家の買い建玉と売り建玉の推移を見ると、最近の価格上昇と軌を一にして買い建玉が増加。買いから売りを差し引いたネットの買い越し残高は9月22日時点で23万枚超(1枚=100オンス)と、重量換算では736トンと過去最高を記録。
直近9月29日時点のデータを含め3週連続して700トン超の大幅な買い越しとなった。
<新規参加者の増加、売り要因の変化促す>
市場関係者の多くは今、この買い越し残の大きさに警戒感を強めている。なぜなら急激に膨らんだ先物市場での買い建て玉は、やがては売り戻され、将来の売り要因以外の何者でもないからだ。
実際、上昇が止まるとほどなくファンドの手仕舞い売りが進み、金価格は急反落という流れを循環的に繰り返してきたのが金市場だった。
その点で今回も当面の価格分析上の問題点は、膨れ上がったファンドの買い越し残をどのように捉えるのかという点にある。
この点で1つ指摘しておきたいのは、金市場では新たな投資家の参入や関連商品の登場で需給構造に大きな変化が表れており、従来の経験則が生きない状況が増えているということである。
記録的な買い残の規模であっても、新規資金の流入で金市場の参加者のすそ野が広がり、市場規模が拡大していると読めば、単なる数字の多寡だけで判断するのは危険だろう。
なぜならば、器が大きくなればファンドの残の「重さ」すなわち「買ったものは売り戻される」という「売り要因」の影響も自ずと軽くなると解釈できるからだ。
9月初めに至る直近半年間(28週)のNYコメックスにおける買い越し残の平均値をみると527トンになる。この数値は、以前の感覚では相場の過熱を示唆するもので「高値圏」を意味し、相場には赤信号がともるような規模といえるのである。それにもかかわらず過去半年間の金相場は、目立った乱高下もなく、レンジ相場の中で静かに下値を切り上げてきた。
この背景にあるのは、金市場に流入している「投機資金」とひとくくりに呼ばれる資金の質的な変化ではないかと見ている。
より具体的には「運用方針の変化」としたほうが的確だろう。
一般的にヘッジファンドというと「ホット・マネー」という言葉があるように、短期投資主体の運用というイメージがある。
確かに最近では、超高速コンピューターを導入し1000分の1秒といった注文スピードで他の投資家を圧倒し利益を捻出する「フラッシュ・オーダー」なる手法を駆使するヘッジファンドまで登場し、問題視されているほどである。
ところが、年始以降金市場への資金シフトを鮮明にしてきた「P&C」などいくつかのファンドは、先物市場よりもむしろ大手金鉱株の大株主になったり、金ETFや金鉱株連動のETFの大量取得というふうに、幅広く総合的な金関連のポジションを構築しているといえる。
その資産構成の組み方からみて、長期とまでは言えないが少なくとも中期的スタンスで金市場と対峙していると見ていいだろう。こうした観点に立って、年始以降のNYコメックスの高水準の買い越し残の存在を考えるならば、先高見通しを基にしての限月間の乗り換えを繰り返した結果とみている。
すなわち足元で700トンを超える買い越し残の核になる部分は、以前から維持されてきた存在である。どんな相場にも、調整局面はつきものである。金市場も早晩、循環的な下げに見舞われるだろう。その際の下げの規模は、米国の金融政策の方針転換など外部要因の大きな変化が見られないのであれば、足元の表面的な買い越し残の規模ほどには、大きくならないと見ている。すなわち、経験則は当てはまらないのではないか。
<循環的ドル安、金へのマネーシフト促進要因に>
なにゆえ「P&C」を代表とするヘッジファンド群が金市場に参入しているのか。しかも、従来にないタームでの運用スタンスで──。
底流にあるのは、米金融政策のかじ取りに当面変更はないとの読みだ。
米国景気の「二番底」シナリオへの懸念が払しょくし切れない現状では、出口戦略をめぐる議論など時期尚早。こうした市場のムードを映し、金利は低下傾向をたどる。
外国為替市場では量的緩和などを通じてジャブジャブにあふれたドルを売る動きは、需給上の観点からも合理性があると映る。今やオバマ政権が掲げる「国際的不均衡の是正」という方針は、FRBの政策自体が合致する形で為替調整(ドル安)を通じてもたらされている。
波乱なく循環的なドル安は望むところだろう。
この環境の中で、ファンドなど機関投資家は「代替通貨」の側面を持つ金へと目を向けているわけだ。
足元の金市場は、過去最高値圏ということもあり、インドや中東などいわゆる実需の買いは止まったままとされている。ヘッジファンドという金融主導型の上昇相場であることから、実需を伴わない相場は短命に終わるというのが、今なお多数意見だろう。
果たして、どうか。
そもそも実需とは何か。
一般に宝飾品需要や工業用需要など、現物の買いで一度購入されると市場への再還流はないという意味でこの言葉が使われてきた。
しかし、そうした定義も時代の流れの中で変化してきていると言えるのではないか。退蔵された宝飾品も今や需給の中では流動化している。
買い取りビジネスの隆盛で、市場への還流(売り戻し)という点や、供給(売り)という点で投資分野と遜色はないといえないか。
逆に投資需要がすべからく短期的な行動に始終するのかという点も、すでにここまででわかるように、必ずしもそうとは限らない。年金基金の金市場への参入はその際たるものだろう。
おそらくこうした金市場の構造的変化が、金価格に反映され始めたと見るならば、足元での1000ドル大台突破は、次の上昇へのステップとなるとみている。需給構造の変化がもたらす「金価格革命」といえば、言い過ぎか。
亀井幸一郎 マーケット ストラテジィ インスティチュート代表 金属・貴金属アナリスト (9日 東京)
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