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(回答先: <トヨタの評判>急拡張に誤りなく、本当の問題は?―中国報道 投稿者 gikou89 日時 2009 年 10 月 02 日 10:41:21)
http://president.jp.reuters.com/article/2009/10/02/24D25F94-A9A9-11DE-842F-0D193F99CD51.php
公務員の給与は地域を問わず異常な水準にある。「賃金コンサルタント」として名古屋市で中小企業への経営助言を行っている北見昌朗氏は、労働組合などの資料からトヨタ自動車と名古屋市役所の給与を比べて驚いたという。
「トヨタの給与は日本一というのが、愛知県の常識です。でも高卒の基本給を比較すると、新入社員から退職間際の職員まで、すべての年代において市役所のほうが高かったんです」
トヨタ自動車は高卒の労働組合員平均で、30歳で30万円、40歳で40万円、50歳で46万円。毎月ほぼ年齢と同じ1万円札がもらえる。一方、名古屋市職員はこれをやや上回り、30歳で32万円、40歳で44万円、50歳で48万円である。北見氏は思わずうなった。
「トヨタと名古屋市役所の労働密度には差がある。ことに生産現場は肉体的な負担も大きく、多くが途中で退職すると聞く。それに比べ、住民課の窓口で座っている50歳の職員が48万円とは……」残念ながら大卒での比較は難しい。トヨタは40歳前後で管理職になり、労働組合を脱退するケースが多いからだ。ただし、マキタ、東海理化、アイシン精機、名古屋鉄道など愛知の主要企業の45歳時点での大卒給与データと比較する限り、市役所のほうが給与は高い。
しかも、世界に冠たるトヨタも「100年に一度」の不況の影響を受ける。08年のボーナスは年間253万円(組合員平均)だったが、今年は186万円と3割減の見込み。管理職9000人の賞与は半減だ。名古屋市のボーナスは07年で192万円(全職員平均)だった。
トヨタを定年退職した大卒社員は「ボーナスはトヨタのほうが上だったが、名古屋市のほうが退職金は高い」と話す。高卒男性の場合、トヨタの退職金は、勤続35年で1900万円、勤続40年で2000万円。名古屋市役所は、35年で2400万円、40年で2700万円。大卒では算定基準となる最後の給料が月額60万円にもなるため、これより1000万円ほど上積みになる。
中小企業では比較にすらならない。北見氏が経営助言を行った中小企業の社員1万人分の退職金を分析したところ、大卒社員が管理職として定年を迎えた場合の退職金は約850万円が相場だったという。ただし、定年まで勤められる中小企業は数少ないのが現状だ。
官民格差は定年後も続く。政府の社会保障審議会の試算では年収562万円の場合、民間の厚生年金保険料は年80万円だが、地方公務員は71万円で済む。また社会保険庁によれば、厚生年金の月額平均は16万5211円で、受給権者の平均報酬月額は37万2770円。ところが総務省によれば、地方公務員の年金は22万875円。現役時代の平均報酬は不明という(いずれも06年度)。
これらは、公務員の年金だけに「職域加算」と呼ばれる税金からの上乗せ給付があるからだ。政府は一昨年、官民の年金一元化を閣議決定したが、もう2年も法制化されないままだ。
また、公務員はあまり辞めない。査定がないので、ノルマや業績のプレッシャーがないのだ。倒産もない。育児休職は3年で、子供が小学生になるまでは時短勤務を選べる。有給休暇も初年度から法定基準の倍である20日。病気になれば3カ月間は給料満額で、3年までは給料の6割をもらいながら休職できる。
公務員給与は、本来「民間給与の相場を参考に決める」とされている。人事院や地方の人事委員会が、該当地の民間企業の給与を調べる。なのに、なぜ、公務員の給与や退職金が異常に高いのか。
前出の北見氏はこう憤る。
「人事院は、従業員50人以上の会社の退職金は3000万円が相場などといっている。まったくナンセンスだ」
からくりはこうだ。人事院の民間給与調査は、「企業規模50人以上かつ事務所規模50人以上」の大企業の事務および技術系正社員に限定されており、中小企業や派遣社員は切り捨てられている。さらに、たとえば、課長職なら、「二係以上または構成員10人以上の課長」に限られている。北見氏の顧客の中小企業では、課長職の持つ部下は平均で6人だという。部下10人以上を持つ「課長」になれる人は一握りだろう。
だが、役所では、誰でも必ず(少なくとも俸給表上は)課長並みの給与がもらえるようになる。部下の人数は関係ない。役所の「課長」はその多くが、部下が一人かゼロの「名ばかり管理職」なのだ。
しかし、もはや地方には公務員の厚遇を賄うゆとりはない。大阪府の橋下知事は、昨年、府職員の基本給を最大で11.5%まで減らすことを決め、年度途中からさっそく実施した。4月に行われる名古屋市長選挙へ立候補している衆院議員の河村たかし氏は、年収500万円を超す市職員の給与を減らす「人件費1割減」をマニフェストに掲げた。
役人側の抵抗は根強い。岡山県では、昨年、石井正弘知事が職員給与を一律9.5%減らそうとしたが、労組などが県職員やその家族など5000人を動員してデモ行進。交渉の末、約7%減に後退した。財政再建団体に転落目前の北海道では、すでに9〜7.5%の給与削減を実施しているが、退職手当も減らそうとしたところ、労組の猛反対で取り下げた。
「わたり」知らぬ首相官民格差を直せるか
多くの自治体は職員の退職金を支払うため、06年度から「退職手当債」の発行、すなわち新たな借金を始めている。金額は08年度だけで6300億円にものぼる。今年3月の参院予算委では、元長野県知事で参議院議員の田中康夫氏が鳩山邦夫総務相に対し、こう質した。
「(職員の)退職金を満額払うために借金しなさいという法律を(当時の)与党の方々が推進されました。総務大臣であられる鳩山さんは見直しされるご意思があられますか」
鳩山総務相は弱腰だ。
「財政規律という面では問題が生じるかもしれないが、地方がしっかりやっていけるならば問題ないと思っております」
この答弁は官僚が考えたものだろう。ちなみに、田中議員の質問は筆者が協力したものである。続いて田中議員は財務省作成の資料を配った。この資料では東京都を除く道府県で地方公務員給与が民間給与を上回ることが示されている。さらに地方公務員の6割が管理職の俸給を得ており、その原因として職務に対して俸給が高い「わたり」の問題を指摘していた。田中議員は、資料に見入っていた麻生太郎首相に問いかけた。
「麻生さん、地方公務員のわたりということに関してはご存じですか」
首相は顔を上げ、立って答える。
「そんなに詳しく知っているわけではございません」
鳩山総務相が慌てて助け船を出した。
「わたりは、出世しないと言ってはいけないかもしれませんが、下のクラスにずっといる方へ温情で、例えば肩書は係長のままでも課長補佐ぐらいの給料にするというようなことで行われてきたもの」
先のトヨタの元社員は憤る。
「公務員の給与が高いのはおかしな話。遅れず、休まず、働かずと揶揄されたような、楽して儲かる世界は、日本の競争力を弱めるでしょうね」
荒波にもまれる民間企業より倒産の心配もない市役所のほうが厚遇なら、学生は役人になる。だが住民票の発行は高給に値しない。自浄は期待できない。民間企業の活力を取り戻すため、政治主導による官民格差の是正が望まれる。
※本文中の大臣(相)は2009年4月雑誌掲載当時。