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オバマ医療保険改革にイデオロギーの逆風(JANJAN)
http://www.asyura2.com/09/hasan64/msg/258.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2009 年 8 月 18 日 16:03:20: twUjz/PjYItws
 

http://www.news.janjan.jp/column/0908/0908178841/1.php

オバマ医療保険改革にイデオロギーの逆風
保険に入れない「医療保険難民」が4,600万人も

                              片瀬ケイ2009/08/18


 米国で医療保険改革が大きな問題となっている。オバマ大統領は8月に連邦議会が休会する前に、改革法案のとりまとめを求めてきたが、反対論も強く譲歩せざるを得ない状況に陥っている。

 連邦議会は休会となり、各議員は地元に戻って状況説明及び有権者の声を聞くためのタウンミーティングを行っているのだが、そこに声高らかに反対意見を表明する有権者たちが押し寄せている。共和、保守系団体が参加を呼びかけているため参加者の8割は改革反対派。「声高らか」どころか、反対意見を怒鳴りまくる参加者やヤジ攻勢などで紛糾する集会が後をたたない。

 抗議活動の中には、改革推進派の民主党議員の名前を刻んだ墓石の模型を掲げたり、オバマ大統領の医療保険改革をヒットラーの政策になぞらえ卍マークを民主党議員の看板にスプレーしたり、民主党議員の人形をリンチしたりと、ヒステリックな行動も見られる。

 米国の場合、65歳以上及び低所得者以外は、民間の医療保険に加入するしか道はない。しかし民間医療保険は掛け金が高くなる一方で、経済的に加入できない人が4,600万人近くいる。また、保険会社が既往症のある人の加入を拒絶する場合も少なくない。

 医療費や保険掛け金を下げて、こうした無保険者が医療保険に加入できるようするというのがオバマ大統領の求める改革である。その柱の一つに、民間医療保険だけでなく、公的医療保険制度もつくり、競争の原理で医療保険のコストを下げることが含まれている。公的保険を主体にしている日本人にはわかりにくいが、これが大きな火種なのである。

 相互扶助の原理で保険コストを下げるなら、一元的な公的保険が理想的というのが民主党の本音である。しかし米国には、共和党をはじめとし、政府管理や社会主義を極端に嫌う人が多い。オバマ大統領もそれを理解しているため、一元的な公的保険は求めず、選択肢の一つとして公的保険制度をつくるという妥協を示している。

 しかし共和党は利益を追求しない公的保険と、民間医療保険会社が競争すること自体が無理なので、どんなものでも公的保険ができれば、民間医療保険は淘汰され、結局は政府が国民の医療を管理し、その費用は税金として国民に回ってくるという危機感を感じている。同時に、こうした危機感を国民に煽ることで、民主党に流れた人々を、共和党に呼び戻すチャンスと捕らえているのだろう。

 保守系の評論家はあらゆるメディアで、「オバマ医療改革は医療の社会主義化で、アメリカをソ連のようにするもの」とか、「政府が医療を管理する民主党の政策は、ヒットラーの政策と同じ」とか、「政府保険のイギリスやカナダでは、待ち時間が長くて、医者にかかる前に病人は死んでしまう」といった論調を展開している。

 連邦下院の医療改革法案の中に、「死期に近い患者が、医師と今後の対応方針を話し合う場合も、診療報酬の対象とする」とあるのだが、サラ・ペイレン元アラスカ州知事をはじめとする反対派は、これを政府が「死刑宣告委員会」をつくり、誰が治療を受けられ、誰を放置するか決めるもので、オバマ改革は「邪悪な提案」だと論じている。

 いまや米国で展開されているのは医療改革に対する議論ではなく、ヒステリックなイデオロギーの対立である。人は未知なものに不安を感じる。経済的な痛みを感じている市民は、政府に対する不満を高めている。オバマ政権は遅まきながら、正しい情報を市民に理解してもらおうと自らタウンミーティングを開き、ウェブサイトで情報を流しているが、ヒステリックになっている人々に耳を傾けてもらうのは容易ではない。

 15年前、クリントン大統領時代の医療保険改革は、秘密主義で進めたことで国民の反感を買い失敗した。皮肉なことに、この教訓を生かしてオープンに進めているオバマ医療改革は、言論の自由を盾にとったデマ攻勢で、頓挫しそうになっている。先週は医療従事者のボランティアによる無料診療イベントに、多数の「医療保険難民」が徹夜で並ぶ光景がテレビのニュースに流れていた。ヒステリックな人々の目には、こうした情景は映らないのだろう。

 在米のがんサバイバーである私も、職を失えば、今は会社が提供してくれている医療保険も無くなる。何かが変わらない限り、低所得者でない65歳以下のがん患者が加入できる医療保険など、米国にはない。イデオロギーのためではなく、人のための医療保険改革の議論に進める日を希望せずにはいられない。

 

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