★阿修羅♪ > 国家破産64 > 209.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
(回答先: 外国人投資家:日本株取引4カ月連続で買い越し 投稿者 gikou89 日時 2009 年 8 月 11 日 22:36:17)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20090810-00000001-facta-pol
詐欺まがいのごまかしを重ねた石川前知事。川勝新知事はとんでもない重荷を背負った。
◇
「380万人県民の夢と希望を担い、明るい未来を開く空港の開港をここに宣言する」
6月4日、晴れの開港式典に臨んだ石川嘉延知事(当時)は、さすがに感慨無量の面持ちだった。4期16年の任期をほぼすべて費やし、最後は自らの首まで差し出した富士山静岡空港が、ようやく開港したのだ。
しかし、その言葉とは裏腹に、空港は崖っぷちに立たされている。
空港には最も多い日で国内線9便、国際線3便が発着する。だが、これらの便がすべて満席になっても、年間の利用者は国内、国際線合わせて110万人にとどまる。静岡県が目標とする138万人の8割にしかならない。しかも、その110万人すら、すでに達成は不可能といえる。
開港翌日の6月5日、中国・上海行き一番機の出発式に臨席した中国東方航空の章華0日本支社長は「7、8、9月の搭乗率を見て上海線の存廃を判断する」と、早くも撤退を示唆した。石川知事は上海の同航空本社に乗り込んで週4便の就航を念押ししようとしたが、逆に「当面は週2便にして状況を見たい」と通告されてしまった。無理もない。上海線の搭乗率は当初見込みの70%を大きく割り込み、40%に届かない日もあるのだ。6月は15便のうち6便が欠航し、すでに7月に5便、8月も4便の欠航が決まっている。
国内線はさらに悲惨だ。一日3便の福岡線は開港からの搭乗率が58%に低迷し、「搭乗率が70%を下回った場合、県が日本航空に1席当たり1万5800円の支援金を支払う」という搭乗率保証の発動が濃厚なのだ。このままなら、県は日航に年間約4億6千万円もの支援金を払うことになる。
■狡猾な経済効果の水増し
搭乗率保証は石川県の能登空港も行っているが、こちらは搭乗率が目標を上回った場合は、全日空が地元に協力金を支払う仕組み。県だけが支払い義務を負う片務契約は、静岡空港の福岡線にしかない。当初は朝夕2便の就航を予定していた福岡線を一日3便にするため、石川知事が破格の搭乗率保証を日航に示し、県民の税金で1便を買ったのである。
高い買い物の事後承諾を求められた静岡県議会は激怒したが、石川知事は「搭乗率保証はまさかの時の下支えにすぎない」と言いくるめた。その「まさか」が半年もたたずに現実になるようでは、知事の釈明は詐欺と変わらない。
一事が万事、この調子なのだ。新幹線の駅が六つもあり、羽田にも中部国際空港にも近い静岡県に空港が必要なのか、県民の多くは、ずっと疑問に思ってきた。しかし、石川県政は16年もの間、「言いくるめ」や「ごまかし」を重ねて、空港建設を既成事実化してしまったのだ。
空港建設の裏付けとなる需要予測もその典型。「国内線106万人、国際線32万人の計138万人」とする予想は、2005年2月に中部国際空港が開港する前に作ったものだ。ところが、「中部開港の影響は織り込んでおり、修正の必要がない」として、5年近く見直されていない。
中部国際空港は開港以来、静岡県西部の空の玄関として定着し、浜松市などとの交通アクセスも年々改善されている。にもかかわらず、「浜松市の住民の7割以上が静岡空港を使う」という中部開港前の甘い見積もりがそのままになっている。
「便益効果は1.3以上」「経済効果は500億円超」という数字も、この古い予測を根拠にはじき出したものだ。実に狡猾な水増しである。
利用者を増やすため、空港の直下を走る新幹線に新駅を建設する構想もぶち上げられたが、JR東海が敵に塩を送るようなまねをするはずもなかった。けんもほろろな態度が腹に据えかねたのか、石川知事は県議会で「『のぞみ』が県内の駅に全く停車しないのはおかしい。のぞみを県内に停めないならJR東海から通行税をとる」と息巻いたが、八つ当たりとはこのことだろう。
■頼みの日航も路線撤退か
01年には空港建設に反対する県民の署名が27万人も集まり、石川知事は「空港建設の是非を住民投票で問う」と公約して3選を果たした。だが、住民投票のための条例案が県議会で否決されると、この公約は反故にされ、これまた大風呂敷を広げただけで終わっている。
空港建設用地は土地収用法まで使って強引に確保したが、その際の測量ミスで、用地周辺に航空法に違反する高さの立ち木が173本も残ってしまった。だが、石川知事は「立ち木が収用後に伸びたのだ」とごまかしてミスを認めず、その一方で地権者には「地滑り対策のため」とうそをついて立ち木を切ろうとした。
おかげで交渉はこじれ、開港は3カ月も遅れた。地権者は態度を硬化させ、立ち木の伐採と引き換えに知事の辞職を求めた。
石川知事はこれをあっさりと受け入れたが、「辞職は空港建設を進めるためで、建設をめぐる不手際の引責ではない」と強弁している。うそやごまかしを重ねた責任を感じたわけではないらしい。では、なぜ身を引く決心をしたのか。
1986年に静岡空港の建設を具体化させるために設立された「静岡県民間空港開設研究会」には、ゼネコン数社が参加していた。石川知事の後援会は、西松建設OBが代表を務める二つの政治団体に100万円のパーティー券を購入してもらっていた。西松建設はパーティー後の06年8月に5億4700万円、07年2月にもJVを組み9億8200万円の空港整備事業を落札している。
何とも胡散臭い。これだけで知事と西松との癒着を決めつけるわけにはいかないが、静岡空港の建設に相当な土木利権があったこと、知事が建設推進を共通の利益とする政官業の要にいたことは疑いようがない。要としての役割は空港の完成で終わる。知事はうまい引き際を探っていたのではないか。
石川知事の辞職に伴う静岡県知事選では、民主党などが推薦する川勝平太氏が勝利した。衆院選の前哨戦として注目され、選挙戦で空港問題が脇に追いやられてしまったが、川勝新知事は政権公約で静岡空港の活用策について、(1)トップセールスによって日本の表玄関としての利用率を高め、空港を活用して種々の国際会議を誘致する、(2)年度内に不平等な搭乗率保証契約を見直す――の2点を挙げた。言うは易しだ。
自民党総裁の座を所望する知名度抜群のタレント知事と違って、新知事のトップセールスが成功する保証はない。搭乗率保証を打ち切れば、業績不振にあえぐ日航は静岡路線の撤退を考えるだろう。
そうなれば空港の利用者はさらに減り、年間4億円の赤字予想ではとても収まらなくなる。1900億円もかけた空港を今さら廃港にもできない。新知事は、とてつもない重荷を背負わされたのだ。
片や石川前知事は、荷物を新知事に回したので身軽。無用な空港を造った責任も問われずにすみそうだ。今回の知事選の真の勝者は、傷を負わずに逃げ切ることに成功した石川前知事なのかもしれない。
(月刊『FACTA』2009年8月号)