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(回答先: バフェット氏:ダウが9000ドル水準であれば、国債よりも株を保有する 投稿者 gikou89 日時 2009 年 7 月 30 日 05:35:28)
http://mainichi.jp/life/money/news/20090727org00m020019000c.html
人口減少、医療・介護負担増大、財政悪化、問題山積の社会保障制度…。日本には経済の成長を妨げる要因があまりに多い。どれも解決は容易でないうえ、それらは相互に作用して、スパイラル的に日本経済を悪化させる。ここから抜け出すのは簡単ではない。
◇外需低迷、人口減少、財政悪化 日本経済の中長期的見通しはどう考えても暗い
いったいどこまで落ちるのかという不安に包まれていた輸出や生産がようやく下げ止まり、景気は最悪期を脱したとの見方が広がっている。しかしそれでも、日本経済の中長期的な見通しは暗い。今年2月時点の内閣府の調査によると、企業が予想する今後3年間の実質成長率は年平均プラス0・2%とほとんど成長が見込まれておらず、今後5年間でもプラス1・0%とかなり低い成長が続くとの厳しい見通しだ。
100年に1度の金融危機が今回の経済危機の引き金を引き、景気の低迷を長引かせていると言われているが、果たして金融危機が終息すれば、世界や日本の経済成長率は、2000年代半ばの水準に戻るのか。それはおそらく無理だろう。世界と日本をとりまく環境が、すでに大きく変わっているからだ。
世界経済はゆっくりではあるが、大きく変化してきた。1970年には毎年2%増えていた世界の人口は、今は1%強の伸びに留まっている(図1)。一方で、豊かさを示す1人当たり所得は2倍に拡大した。かつて、1人当たりの国民所得が1万ドルになれば、先進国の仲間入りと言われたが、今や世界全体の平均が1万ドルに達した。つまり世界経済は成熟化して豊かになってきたわけだ。
所得水準が高まることは、自動車や家電など耐久財に対する需要を増加させ、日本からの輸出を拡大させる要因となった。しかし、所得水準が高まってくるにつれて、そこからさらに同じペースで所得を拡大させることは難しくなる。「経済成長率」は「人口の増加率」と「1人当たり所得の伸び率」の合計と考えることができる。70年当時に比べて人口の増加率が半減し、1人当たり所得が倍増しているなら、成長力はかなり低下していると考えるべきだろう。
にもかかわらず、2000年代半ばにかけて世界経済が5%成長という30年ぶりの高成長を実現できたのは、米国の過剰消費と経常赤字の拡大をテコにして、成長ペースが押し上げられたからだ。しかし現在、多額の借金を抱えた米国の家計は、消費を抑えて貯蓄を増やし、借金の返済に回っている。また、米国の経常赤字は06年には8000億ドルを超えて、GDP比6%強にまで拡大していたが、今や半減している。
世界はもはや米国の過剰消費に頼って成長することはできない。だとすれば、人口と1人当たり所得の伸びが鈍化した世界経済の本来の成長力を考えるべきだろう。金融危機が終息して世界経済がマイナス成長から脱するとしても、元の5%成長に戻ることはなく、せいぜいその半分程度の成長が実力とみるべきだ。
◇日本経済はバブル崩壊を上回る試練
世界経済の成長率の低下は日本経済にとって大きな打撃である。世界中で所得水準の高い人が増えることに支えられて、自動車など付加価値の高い製品の輸出や現地生産を拡大していた日本株式会社が、かつてのように儲けることができなくなる。貿易黒字大国と言われ世界各地で貿易摩擦を起こしてきた日本だが、輸出の急減などによって、08年度の貿易収支は7266億円の赤字となった。貿易赤字は第2次石油危機の影響を受けた80年度以来28年ぶりのことだ。加えて、海外資産からの収益である所得収支も黒字幅が縮小している。
こうした状況は90年代のバブル崩壊の時よりも厳しい環境変化と考えるべきだ。バブルが崩壊した時は、不動産や株など資産価格の下落によって多くの企業が不稼働資産を抱え、設備投資や住宅投資が大幅な調整を強いられた。しかし、輸出は底堅く推移し、個人消費はしっかりした伸びを維持し、公共投資は大型の経済対策の効果で大幅に拡大し景気を下支えした。バブルに踊った会社はダメージを受けたが、本業で堅実な経営を続けていたところは健全性を維持していたといえよう。
今回は戦後の日本経済の発展を牽引してきた国際競争力のある輸出企業が軒並み厳しい状況に直面しており、日本経済の成長戦略そのものが問われている。一部には「外需に依存していてはダメだから、これからは内需主導で経済成長を」との声もある。しかし、少子高齢化が進み、人口も減少に転じているなかで、個人消費や住宅投資などの内需がこれまで以上に力強さを増してくるとは考えにくい。
◇政治が変わっても
7月21日に衆議院が解散され、8月30日には総選挙が実施される。いよいよ政権選択選挙ということで盛り上がってきた。政権が交代したとしても日本経済が直面する厳しい環境が変わるわけではないが、経済政策の違いが景気に影響を与えてくるのだろうか。
まず、麻生太郎政権による経済対策はどう評価できるか。政府は、08年8月の福田康夫政権時代の「安心実現のための緊急経済対策」から今年4月の経済危機対策まで4度にわたる一連の大型経済対策(合計の総事業規模132兆円、財政支出27兆円)を打ち出してきた。
これらの対策は、過去最大規模ではあるが、その中身を見ると雇用対策や金融対策に使われる金額が大きい。成長率を押し上げるというよりは景気の底割れを防ぐことに重点が置かれていると考えるべきだろう。
その分、成長率を押し上げる効果の大きい公共投資のウエートは低くなっているが、一方で環境対応車の買い替え促進、省エネ家電の購入支援、あるいは地デジ対応テレビの購入補助といった、民間需要を引き出す「呼び水」となる対策が入っている。たしかに政府も知恵を絞っており、一連の経済対策によってGDPは1〜2%程度押し上げられると推測できる。
しかし、こうした「呼び水」的政策の効果は将来の需要の先取りという要素が強く、効果が一巡すれば成長率を下げる要因になってくる。
民主党は、政府が経済危機対策を打ち出したのと同じ4月に「生活・環境・未来のための緊急経済対策」を発表しており、2年間で21兆円の財政出動が見込まれている。子供手当や高校無償化など家計支援に力点が置かれ、14兆円強は可処分所得を拡大する家計支援に向けられることになっている。
民主党主導の政権が誕生すれば、これらの公約の一部が早ければ10年度にも実現する可能性が出てくる。しかも、マニフェストでは政策の期限が設定されておらず、恒久的な政策と位置づけられている。一方で、09年度補正予算のうち、いわゆるアニメの殿堂関連の予算など一部の予算の執行は停止される可能性がある。民主党政権誕生による経済政策の変更が景気に与える影響は強弱両面あるが、成長率に与える効果という点では自民党の経済危機対策と大きな違いは出てこないだろう
◇財政悪化と金利上昇リスク
政権選択選挙の争点として重要なことは、短期的な景気動向よりも年金制度のあり方やその財源の問題、あるいは財政の悪化に対する取り組み方針などではないか。外では世界経済の成長力が低下し、内では少子高齢化の影響が本格化して、日本経済を取り巻く環境は厳しさを増している。成長力を高める努力が必要なことは言うまでもないが、それでもこれまでと同じ成長を実現するのは難しく、成長率が低下すれば財政は一段と悪化する。
日本の税収は、90年代初めのバブル崩壊以降、成長率の低下に加えて、景気対策として大型減税が行われたことも影響して、90年度の60兆円をピークに低迷している(図2)。09年度は46兆円とピーク時の7割台の水準が想定されているが、さらに下方修正されるのは確実だ。
一方、歳出は、バブル崩壊後も社会保障関連費や国債費の増加が続いたことに加えて、数度にわたって大型の経済対策が実施されたため00年度まで増加が続いた。その後は財政再建の流れが強まり歳出は抑制されたが、08年度以降は経済危機に対応すべく大型の経済対策が矢継ぎ早に打たれ、09年度の歳出規模は102兆円と一気に拡大している。
税収が低迷し歳出が拡大した結果、バブルのころは7兆円前後まで減少していた新規の国債発行額は90年代終わりには30兆円台に拡大し、09年度は40兆円を超えている。前述のとおり09年度は税収が下振れするであろうことを考えると、国債発行額はさらに拡大して、税収を上回ってしまうことがほぼ確実な情勢だ。
財政悪化は金利を上昇させる要因となる。期待成長率が低下していることもあって金利は今のところ低い水準で推移している。しかし、社会保障制度、年金制度、税制度など現在の制度はいずれも人口が増加し経済が高い成長を遂げている時に作られたものである。人口が減少し、低成長が続くであろうという現実に目をつぶって、昔からの社会制度をそのまま維持しようとすれば、財政が一段と悪化し日本の社会はいずれ立ち行かなくなる。
経済が低迷している時に金利が上昇すれば、より困難な状況に陥る。金利の上昇が資金調達コストを高め、ただでさえ低迷している設備投資や住宅投資などの投資活動を一段と冷え込ませてしまうからだ。そこで、日銀による国債買い切りオペの増額や国債引き受けで金利の上昇を抑え込もうという意見が強まるかもしれない。しかし、国の財政悪化を懸念した金利上昇圧力を、日銀による緩和的な金融政策で抑えることは無理だ。国の借金を一層増加させ、さらなる金利の上昇をもたらす結果になろう。
ある程度の痛みを覚悟し、戦後作られた諸制度を抜本的に見直して持続可能な新しい制度を構築しなければならない。今回の総選挙をそのきっかけにしなければ、中長期的な日本経済の見通しは暗いままだ。【三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員・鈴木明彦】