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2009-07-23 13:00:00 | IISIAが読み解くマーケットと国内外情勢
去る20日、米国カリフォルニア州のシュワルツネッガー知事と州議会の共和・民主両党の幹部は、約260億ドルの財政赤字解消に筋道をつける予算案の成立で合意した。これまで同州の財政危機が場合によっては世界全体に影響を及ぼす危険性があると指摘されていただけに、一時的に緊張が緩む展開となっている。
今回の決定に至るまで、カリフォルニア州は財政危機への対策を既にいくつか講じてきた。まず、同州は今年2月の段階で巨額の財政赤字の削減を盛り込んだ州予算を成立させた。しかし、その後の景気悪化により税収が落ち込んだことなどから同州は再び財政赤字に直面、米国で新年度が始まる7月1日に知事は“財政危機を宣言”した。その対策として公共サービスの職員を中心に数万人の解雇を断行したことは各種メディアで大きく報じられたとおりである。また2日には、州民への所得税還付や業者への支払いに「借用書」(IOU)の発行を始めた。さらに米国の格付会社ムーディーズにより、同州が発行する州債の格付けがA2からBaa1に引き下げられた。
このような中で今回、法案成立までの道筋が見えたかのような今回の予算案については、これによって州議会の紛糾が収束し、150億ドルの歳出削減をもって解決できるかのような楽観的な報道が見受けられる。また、欧州系“越境する投資主体”のアナリストたちは、いざとなればオバマ政権がカリフォルニア州を救済するという見解すら示している。これらの動きからは、あたかも同州が「デフォルト(債務不履行)」を回避したかのようにも見えてしまう。
一方で、実のところ根本的な問題は解決していないという否定的な見方もある。
例えば、上記の「米国連邦政府の救済によるカリフォルニア州の『デフォルト』回避というシナリオ」が実現する可能性は低いとの指摘がある。オバマ政権は多額の財政負担を伴うヘルスケア改革や金融規制改革などの課題で“手一杯”であり、カリフォルニア州の「財政危機」にまで対応できない状況にあるからだ。
そして、米連邦政府も景気対策のために大量の米国債を増発しており、「州政府」の債務を肩代わりするのは事実上不可能であると言わざるを得ない。さらには、カリフォルニア州の他にも同様の財政難に陥っている州が多数ある。中には全米50州の内、46州が“デフォルト状態”という評価もある。 そのような中、カリフォルニア州のみを救済するという不公正さは許されない。そうであるにもかかわらず、オバマ政権が支援に踏み切れば、「モラル・ハザード」を生じる危険性すらある。
他方、今回の予算案は民主・共和両党の州議会幹部がそれぞれ所属議員に合意案を説明すると述べた段階で報じられたものであり、その正式決定は23日(日本時間24日)に行われる採決を待たねばならない。この法案の成立にはカリフォルニア州議会特有のルールにより3分の2以上の多数を要することを踏まえると、法案成立までは依然として予断を許さない状況だ。
とりわけ注意すべきは、この法案における150億ドル削減の中には刑務所予算削減も含まれているということだ。これには2万7千人に及ぶ囚人の判決を繰り上げて早期に自宅に戻らせることを内容としている。これに共和党勢が反発する可能性があることも留意すべきである。
そして来たる28日には、いよいよカリフォルニア州が発行している州債券の大口返済の期日が到来する。しかし、返済資金が枯渇しているため不渡りになる可能性が大きいとの報道もある。いずれにせよ、カリフォルニア州の「デフォルト」が回避したとは言い切れず、依然として予断を許さない状況にある。
今回の展開は、2008年にTARP(政府による不良資産救済プログラム)設立時の米連邦議会の法案審議の状況とある意味似通っている。当時、同法案は上院と下院の間を行き来し、法案成立が二転三転した結果、金融市場は激しく揺れ動いた。つまり、今回のカリフォルニア州における財政問題を巡る州議会の動向如何では、2008年と同様、米国、そして世界の金融マーケットに高いヴォラティリティーがもたらされる可能性があるのだ。
この点、23日(日本時間24日)にカリフォルニア州議会で行われる投票の結果は、米国マーケット、ひいては日本を含む世界全体のマーケットとそれを取り巻く国内外情勢に与える歴史的な“潮目”となる可能性を秘めているのである。この意味でも、カリフォルニア州の財政赤字解消を巡る動きとその影響を的確にとらえることがますます重要になってくると言えよう。