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商品コラム・価格は語る
金市場でも存在感増す中国
編集委員・志田富雄(7月21日)
http://www.nikkei.co.jp/news/kakaku/column/20090717e1j1700z17.html
中国が、準備資産として金を積み増した。新華社が4月下旬に伝えたところでは、2003年から昨年までの増加量は454トン。それまで公にしていた600トンの4分の3に相当する。合計した1054トンはスイスや日本、オランダを抜いて5位(IMFを除く)に浮上した。
今世紀に入って新産金の世界地図も大きく変わり、今や中国は世界最大の金産出国でもある。南アフリカは資源枯渇で生産が減り、オーストラリアなどでも金産出コストの上昇が顕著だ。
金が史上最高値を更新した昨年、スクラップの還流は増えても、価格が上がれば供給は増えるという市場原理に反して世界の鉱山生産量は前年比3%減の2416トンと96年以来、12年ぶりの低水準に落ち込んだ。金の希少性=価値も通貨量との対比で決まる。経済危機を乗り越えるため各国が国債発行や通貨供給を急増するのと同時に、新産金が減少している、つまり地上在庫の増加ペースが落ちている現状は今後の金価格に影響してくるはずだ。
ブッシュ前政権の末期から大量増発しても米国債は安心ですから今まで通り買い、保有してくださいと“中国詣で”を続ける米国に対し、中国はドル不安が価格を押し上げる「反ドル資産」の金を着々と積み上げていた。しかも金は価格面で反ドル資産でありながら、いざという時にはドルに換金しやすい「半ドル資産」(マーケット・ストラテジィ・インスティチュートの亀井幸一郎代表)でもある。
年金基金などの機関投資家が動いたように、ドル資産に偏った構成に金という反ドル資産の楔(くさび)を打ち込むポートフォリオ戦略は、資産価値の安定につながる。中国共産党中央政策研究室の李連仲・経済局長は6月下旬に開いた金融関連のフォーラムで「長期的に見てドルの価値が下がるのは必然であり、(外貨準備で)金の購入を増やすのは一つの良い選択だ」と語り、一段の買い増しを推奨した。
対米輸出の減少や設備過剰、所得格差など中国自身が抱える問題は多い。しかし、足元では欧米など先進国経済に比べ、中国は底堅さを見せ、世界経済の中心は想定より早いペースで中国に移行しつつある。自動車をはじめ産業界も中国など新興国へのシフトを加速する。それをかぎつけるかのように金の動きも急ピッチだ。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)とGFMSが5月に発表した1〜3月期の需給統計で、中国の需要は105トンとインド(18トン弱)を抜き世界最大の需要国に躍り出た。婚礼需要期にあたる4〜6月期はインドの再逆転もあり得るが、中国とインドは首位争いを続けながら世界の実需をけん引していきそうだ。
素材市場では鋼材や合成繊維、セメントなどに続き、製紙でも08年に中国の生産量が初めて米国を抜いて世界最大になった。それでも1人あたり紙の消費量は60キログラムに過ぎず、日本(250キロ)や米国(290キロ)から見れば成長余地が大きい。紀元前の昔から、金は経済・国力の隆盛をかぎつけて動く。克服しなければならない課題は多いとはいえ、金の流入が続いている間は、中国経済はまだ上り坂(成長過程)にある。