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7月に入って、米市場がもたついている。
異例の速さでめどがついたゼネラル・モーターズ(GM)の再建、過去最高益を記録したゴールドマン・サックスの四半期決算公表といった予想外の好材料が続いても、ニューヨーク株式市場はそれらの好材料にほとんど反応せず、ダウ平均(工業株30種)は15日の終値が8616ドル21セントと6月の高値(8799ドル26セント、12日)すら追い抜けない状態に陥っているのだ。
ご存知の通り、米政府高官たちは過去数週間、繰り返し、「米経済は最悪期を脱しつつある」(ガイトナー財務長官)と楽観論を表明している。それなのに、いったいなぜ、市場は好材料に素直に反応しないのだろうか。
端的言えば、そこに存在するのは、必要性は明らかなのに、実際にはなかなか思い切った施策を実現できそうもない米国の「追加財政政策のジレンマ」の問題である。
ただ、このジレンマには、日本も「対岸の火事」と他人事で済ませられない要因が含まれている。
米東部時間の14日、ゴールドマン・サックスが発表した2009年第2四半期(4〜6月決算は、「V字型回復」を絵に描いたような内容だった。最終利益が34億3500万ドル(約3200億円)と前年同期に比べて65%も拡大したからだ。
証券の自己売買部門などが好調だったことが主因で、アナリストたちが増額修正していた事前の予想(40%前後)をも大きく上回る好決算だった。同社は、「経営環境の改善と顧客基盤の多様性が寄与した」とコメントしたという。
だが、この日のダウ平均はわずか27ドル81セントの上昇にとどまった。相場の勢いの無さの解説は、枚挙にいとまがなかった。「前日の上げ幅が大き過ぎた」とか、「ゴールドマン・サックスは業態が業績を回復しやすい証券会社だ」「米金融業界には地方銀行を中心に、これから経営の深刻化が予想されるところが多く残っている」といった具合だ。
翌15日はインテルの決算などを好感して大きく上げたものの、株価水準そのものは相変わらず低い水準で放置されている。
実は、米株式市場は今月6日にも同じような肩透かしの展開をみせている。
前日の日曜日に、ニューヨーク州南部地区の連邦破産裁判所が、破綻した米ゼネラル・モーターズの旧会社が保有していた資産について、米政府が約60%を出資した新会社に移管(売却)することを承認したにもかかわらず、そのニュースが伝わった6日月曜日のダウ平均は、わずか44ドル13セントの上昇にとどまったのだ。
米政府とGMが掲げていた法的処理完了の目標は「60日から90日」程度。これを6月1日のチャプター11(米連邦破産法11章、日本の民事再生法に相当)の適用申請からわずか35日というスピード承認を実現させる快挙だった。これにより、GM再建が予想されたより円滑に進み、失業や大型連鎖倒産の急増という悪循環も断ち切れるとの期待が高まっていた。
だが、ニューヨーク株式市場は、そうしたGMの早期再建という好材料に対しても冷淡だった。
経済回復の遅れよりも
米国の財政政策が最大の懸念
今年3月の安値を底に、6月にかけて、米経済の回復期待を先取りして上昇してきた米株式市場に今、いったい、何が起きているのだろうか。
一般的な説明としてよく言われるのは、「底は打ったものの、回復には時間がかかる。それゆえ、株式相場が一本調子で上昇していくことはない」という議論だ。これはもっともな見方だ。
例えば、国際通貨基金(IMF)の「世界経済予測」をみても、米経済成長率は2009年にマイナス2.6%に落ち込んだあと、回復に向かうものの、その水準は2010年予測で0.8%と低く、2007年(2.0%)はもちろん、2008年(1.1%)の水準さえ回復できないとしているからだ。株価も1万ドル超えや最高値水準の回復などなかなか覚束ないというわけである。これはこれであながち間違いと言えない解説である。
ただ、米株式市場関係者や経済専門家の間で囁かれている懸念は、こうした回復の遅れに対するものだけではない。むしろ、再び経済が失速し、成長率が鈍化しかねないとの見方も根強い。
その最大の懸念要因こそ、本来ならば、米経済を刺激してくれるはずの米財政政策だというのである。
どういうことかと言うと、米国では、ブッシュ前政権下の2001年と2003年に実施された大型減税が2010年に期限を迎える。また、オバマ政権になって実施した巨額の経済対策も2011年に完了する。
このため、減税や財政出動など何らかの財政政策を新たに打たなければ、過去のツケが回って「米財政政策は、2010年に景気抑制要因に、2011年には強い景気押し下げ要因になる」(米系金融機関エコノミスト)という。ちなみに、このエコノミストは、「家計の税負担は、2011年と2012年にそれぞれ1350億ドルずつ増える」と指摘する。
ところが、米国では、おいそれと、追加の財政政策が打てるような状況にない。前述のように、ブッシュ政権の大型減税とオバマ政権の大型経済対策の結果、米政府は巨額の財政赤字を抱え込んでいるからだ。
ちなみに、米財務省によると、米国の2009会計年度(2008年10月から2009年9月まで)の財政赤字は、6月までの9ヵ月間で1兆862億ドル(約101兆円)。年間でも、初の1兆ドルを超す赤字と、ワースト記録を更新するのが確実な状況にあるのだ。
このため、国債の大量発行に繋がりかねない追加の財政政策には、債券市場が神経質な動きとなっている。昨年暮れには10年物米国債で2.19%まで低下していた利回りが跳ね上がり、このところは3.5%前後の動きとなっているのが実情だ。
言わずもがなだが、金利の極端な上昇は、家計の消費、企業の設備投資を大幅に落ち込ませるリスクが付きまとう。それゆえ、米経済は深刻なジレンマに陥りかねないのだ。
ただ、米経済が再び冷え込めば、世界経済、ひいては日本経済が悪影響を被るのは陽を見るより明らか。そして、日本は、歴代自民党政権の放漫財政のツケに加えて、麻生太郎首相が編成を繰り返した補正予算の大盤振る舞いによって、米国以上に深刻な巨額の財政赤字を抱えている。
いざというとき、政府が財政政策を発動するのは米国以上に難しい状況にある。「100年に1度の危機」の第2幕は、絵空事と言いきれない深刻な問題だ。