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http://veritas.nikkei.co.jp/scramble/index.aspx?id=MS3Z26001%2026062009
3月を底に上昇したあと、急速に上値が重くなり出した欧米株式相場。方向感を欠く展開のなか、市場関係者の間で新たに話題になっていることがある。巨額損失を計上してきた欧米金融機関の一部が再びハイリスクのマーケットに接近し始めている、というのだ。「早すぎる回帰」は新たな追加損失のタネにならないのか――。芽生え始めた新たなリスクを気にする声が、市場のあちらこちらで聞こえる。 ロンドンの金融街シティーに勤める日系金融機関の幹部は最近、ある変化に気づいた。「新たな人材を採用しようとすると、高額の給料で対抗してくる金融機関がある」。しかも、その対抗相手というのが「公的資金の注入を受けているような金融機関」という。米シティグループなどが給料の大幅引き上げを検討し始めたという欧米メディアの報道もある。 4月にロンドンで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会合(金融サミット)の際には、バンカーの高給に不満をぶちまける失業者などによるデモが市内で起きたばかり。この日系金融機関幹部は「のど元過ぎれば、ということですかねえ」と複雑な表情を見せる。 同じような懸念を、地元金融当局も抱きつつある。 「非常にアグレッシブな採用活動が投資銀行で起きている」。23日、英金融サービス機構(FSA)のターナー会長は英議会の特別委員会に出席し、一部の投資銀行が高リスクの取引の強化に向けて採用活動を積極化させるなど、金融危機前をほうふつとさせる商慣習が再び頭をもたげつつあることに懸念を表明した。 「投資家のリスク許容度の高まり」が春先からの株式相場回復をけん引したとされるが、一部の銀行では「アニマル・スピリッツ」を抑えきれなくなってきた――。そんな風に見える。 確かに投資意欲の底入れや反転のサインはいろいろ出ている。5月の英住宅ローン承認件数は前年同期に比べ16%増え、2008年初めの水準に回復。急落していた高級住宅の価格にも底入れの兆しが出つつあるという。ドイツでも、欧州経済研究センター(ZEW)がアナリストや投資家などを対象に集計した6月の景気指数は約2年ぶりの高水準だった。 確かに、これらの事象は金融危機が過去のものとなり、欧米金融機関が新たな成長に向けた地ならしを始めたことを意味しているかもしれない。中長期的な回復に向けた準備とみることも可能。株価が景気回復を先取りしていると考えれば、春以降の相場上昇も説明できる。 ただ、過度の楽観主義には、やはり疑問符がつく。 実際、とりわけ欧州では、2010年以降に景気回復に向かうというのが共通の見方だが、景気後退の収束時期について確固たるコンセンサスはない。 6月初旬のラトビアの通貨切り下げを巡る騒動は、中東欧や北欧の金融市場ばかりでなく、欧州全体の懸念につながった。欧州内になおも「リスクの芽」は潜んでいるのだ。 国際通貨基金(IMF)は、欧州の銀行が2010年までに計上する可能性がある損失は約1兆ドルと07〜08年の損失額の約3倍に膨らむと予想する。米銀による損失予想額を大幅に上回る、これらの「潜在損失」は、まだ決算などでは公表されていない。今後の四半期決算などで次第に明るみに出て、株式相場にネガティブサプライズを与える可能性は否定できない。 シティー関係者は最近、「注意深い楽観」という言葉を口にするようになった。もちろん「行きすぎた悲観」に陥る必要はないが、「注意深い楽観」も容易に「行きすぎた楽観」に変わる。そうなれば思わぬ相場の調整局面で足をすくわれる。少なくとも「もう一段の相場調整はありそうで、回復はおそらく『W字型』になるのでは」(銀行系エコノミスト)という警告をやり過ごせるほど、状況は良くなっていない。 |