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イタリアの巨額米国債事件を一笑に付すことができない米国経済の異常性(KlugView)2009/06/17 (水) 17:45
日本では、あまり報じられていませんが、イタリアで不可思議な事件が明らかになっています。
6月3日、イタリアの財務警察は、1340億ドル(約13兆円)の米国債を不正に持ち出そうとしたとして、日本人とみられる男性2名をイタリアとスイスの国境近くで逮捕したと発表しました。
報道によると、2人は列車にてイタリアからスイスに入国する際、税関にえ「課税品なし」と申告しましたが、税関職員が調べたところ、二重底のスーツケースから1340億ドル(約13兆円)相当の米国債が発見されたそうです。
所持していた米国債の金額があまりにも巨額のため、事件が報じられた当初から、米国債は偽造ではないか、との指摘が出ていました。
結局、その指摘は正しく、2人が所持していた米国債の大半は偽造で、2人は事情聴取後に釈放されたそうです。米国債が本物であれば、2人は未申告輸出の容疑で巨額の罰金刑が科せられるのですが、偽物の場合、偽造証券を所持しているだけでは処罰できないためだそうです。
米国債に限らず、13兆円もの証券が見つかれば、まずは偽物と考えるのが、一般的なセンスと思われます。
日本の米国債保有額は、09年4月現在で6859億ドルですから、イタリアで逮捕された2人が保有している米国債が本物であれば、この2人は、日本が保有する米国債の約20%を保有していたことになります。それだけの資産を保有しているのであれば、日本政府が、それなりの反応や対応をするはずですが、私が知る限り、日本政府は目立った反応を示していません。
興味深いのは、2人が所持していた米国債が偽物と報じられるまで、米国債が本物である可能性を視野にいれ、日本政府が秘密裏に米国債を処分しようとしたのではないか?などと、この事件を論じる方が、インターネットを中心にそれなりに存在していたことです。
こうした方々の論旨は次の通りです。
・日本は中国に次ぐ米国債の大量保有国。
・ドル安、米国債価格の下落があわさると、日本は多額の評価損を計上する恐れがある。
・米国政府は、景気対策のために米国債を大量発行する計画で、米国債の価格は下落する恐れがある。
・米金融当局は、景気対策と称し、量的緩和政策を実施しており、ドルを大量に流通させている。これはドル安圧力を高める。
・中国を始めとする新興諸国は、外貨準備に占めるドルの割合を低めようとしており、これもドル安圧力となる。
・日本としては、ドル安、米国債の下落が進む前に、秘密裏に米国債を処分しようとしても不思議ではない。
数年前の経済情勢であれば、こうした考え方は一笑に付されるものだったのでしょう。
しかし、今となっては、米国が過去にない規模で景気対策や金融緩和策を実施しているのは事実であり、こうした事実を根拠に米国債の危険性を指摘する考え方は、決して可笑しなものといえません。経済合理性だけを考えれば、日本政府が、米国債の危険性を懸念し、秘密裏に処分を図ろうとしても不思議といえません。
イタリアの事件の真相は、結局うやむやのまま隠されてしまうのでしょうが、この事件をきっかけに、あまりにも大量に保有してしまった米国債を日本政府がどのように取り扱うかについて、日本に住む我々も真剣に考えてもいい気がします。
村田雅志(むらた・まさし)
●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●
2009年4月現在、日本が保有する
米国債の残高はどれくらい?
●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●
6859億ドル
http://www.gci-klug.jp/klugview/2009/06/17/005801.php