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http://money.mag2.com/invest/kokusai/2009/06/post_116.html
米中無理心中?ガイトナー財務長官訪中で見える米国勢の寂しい懐具合
ガイトナー米財務長官のセンチメンタル・ジャーニー
5月31日〜6月2日にかけて、ガイトナー米財務長官が訪中した。ガイトナー長官はかつてアジア研究を専攻した人物だ。中国語に堪能であるだけでなく、北京大学の中国経済研究センターで研究員を務めたこともあり、中国要人の間で人脈が豊富ないわゆる「知中派」である。一方で、ガイトナー長官といえば去る1月に「オバマ大統領は中国が“為替操作国”だと信じている」旨を発言し、中国側の反発を招いたことは記憶に新しい。
中国要人との間で「人民元の為替操作」の有無を巡り確執が続き、さらにはGMの連邦破産法第11章適用申請が6月1日に差し迫っている中で行われた今回の訪中。それは、ガイトナー長官がかつて「象牙の塔」として過ごしたことのある北京大学における講演というイベントで幕を開けた。この講演が行われたのは5月31日。一体どうしてこのタイミングで、優雅な研究員時代を過ごしたキャンパスのある「思い出の地」=中国へ「センチメンタル・ジャーニー」を行ったのであろうか。
米国勢の寂しい懐具合と金利上昇の真意
GMの連邦破産法第11章適用申請(6月1日)の後、金融市場関係者の間では「悪材料が出尽くした」という楽観的な見方が広がり、米国マーケットで株価は上昇した。しかし、この“申請”の裏には、米国政府の財政支出(国民負担)という巨大な問題がひそんでいる。2008年9月のリーマン・ショック以降、低迷する米国経済の回復のため米政府は大規模な財政支出を行ったが、今回の出来事で益々厳しい負担が重なってくると考えられる。また、国民皆保険制度の導入という「ヘルスケア制度改革」はオバマ政権にとって“目玉商品”だが、ただでさえ逼迫しつつある国家財政への負担を増やしかねない代物だ。加えて、懸案となっているアフガニスタン増派のための費用は、イラクよりも高い。不況化での税収不足も相まって、米国の「懐具合」はまさに危機的な状況に達している。
そうした中、米国は国債を次々と発行している。しかし、市場関係者の間で、その需給環境の悪化に対する懸念が広がりつつあり、長期金利は上昇(=国債価格の下落)するばかりだ。そして米国においては、長短金利(10年債と2年債)差は2009年1月初めから現時点で100bp(1%)以上も急上昇するに至った。この現象自体は、教科書通りにいえば、「景気の先行きに明るい見通しがみられるときに生じる現象」だ。――しかし本当にそうなのか。
政府による国債増発(歳出増加)は、長期金利の上昇を引き起こす。そして最終的には民間投資を減退させる作用、つまり「クラウディング・アウト」という現象をもたらすということが、マクロ経済学者の中では「常識」として存在する。そして、この常識に鑑みる限り、今回米国で生じているような長短金利の拡大は、景気の明るい見通しとは考えにくいのであって、むしろ単に米国債の需給環境が悪化している証拠だというべきものなのだ。
バーナンキFRB議長も6月4日、米国下院の予算委員会において最近の長期金利と住宅ローンの固定金利の上昇に関し、「大規模な政府の赤字に対する懸念を反映しているもようだ」と証言した。米国の寂しい「懐具合」を裏書した発言というべきだろう。
米国債のセールスマン、ガイトナー長官の宗旨替え
目を米国連邦議会に転ずると、そこでは中国の為替操作に対する批判が再び公然と展開されている。
5月13日、ステビナウ上院議員ら対中強硬派はCRFTA(The Currency Reform for Fair Trade Act)なる法案を提出すると発表した。この法律案は米国の輸出産業を保護するためのもので、いわゆる“為替操作国”に対する対抗措置というべき法律案である。同上院議員は、鉄鋼業や自動車産業を擁するミシガン州選出。まさにこれらの産業に従事する支持者を票田としていることに鑑みると、世界的な不況で打撃を被った輸出産業を保護するために打って出た行動だといえよう。CRFTA法には、「不当に安い人民元がターゲット」とは書いていない。しかし、最終的には米国がかねてから問題視していた中国による人民元の「為替操作」、つまり人民元安誘導を標的にしていることは明らかである。したがって、オバマ米大統領はこうした動きにあからさまに同調することは不可能だ。なぜなら中国のまなざしがあるからである。しかし、同大統領とて“弱者保護”の観点から、何らかの対応を取らざるを得なくなってきているのも確かである。オバマ政権が米国政界からの突き上げにより“中国叩き”に向かわないか、大いに警戒しているというわけだ。
他方、先ほど述べたとおり、ガイトナー長官は就任直後、中国による「為替操作」を批判した経緯がある。しかし、徐々にそのトーンを落としたことも記憶に新しい。具体的には、4月15日に発表した「国際経済と為替政策に関する半期報告」の中で、「主要貿易相手国が不公正な為替操作を行っているということについて確認できなかった」としたのだ。ここでいう、「主要貿易国」の中には“中国”が含まれていると解釈できるわけで、中国に対して大いに気をつかった文章といえるだろう。認定を見送った背景には、為替市場への介入で積み上がる中国の外貨準備の増加ペースが減速している点や、中国が内需拡大へ向けた大型の景気対策に着手したことなどが指摘されている。
ガイトナー長官による「宗旨替え」ともいうべき対中融和的態度への大転換は、まさに先程述べた米国の厳しい「懐具合」を投影したものである。大量に増刷した米国債を売さばくべく、金融メルトダウンの影響が少ないといわれることの多い中国に購入を促すのがその戦略だろう。今次の訪中で、ガイトナー長官はまさに米国債の「セールスマン」だったのである。
米中無理心中?
中国はこれまで、米国債の購入を増やしてきた。しかしここに来て、金融政策当局からは「外貨準備に占める米ドル建て資産の比率を低めるべきだ」との発言が聞かれるなど、米国債に対するリスクを徐々に真剣に考えるようになっているようにも見受けられる。
ガイトナー長官は、今回北京大学で講演した後の質疑応答で、「あなた方(中国)の資産(ドル建て外貨)は安全である」と回答した。すると、学生たちから大きな笑い声が上がったと報じられている(6月1日付ロイター)。学生たちが笑ったのは、米国は金融財政膨張によりドル安政策を取っているのであって、ガイトナー長官のいう「安全」が“嘘くさい”と感じたからなのであろう。
とにもかくにも、ガイトナー長官はそつなく訪中日程をこなした。しかし、学生たちだけでなく、政府も米国債に対して懐疑的な見方をしてきている。そしてここ最近、中国は自ら持っている米国資産の内、長期国債よりリスクが比較的少ない短期国債に購入を切り替え始めているとの情報がある。そうなると、今後ますます中国が米国にとっての“Lender of Last Resort”(最後の貸し手)であるかどうかは疑わしくなってくるだろう。
ガイトナー長官訪中の“成果”は、来る6月11日に予定されている米国債30年債の入札結果次第で判断すべきであろう。ガイトナー長官による「セールス・トーク」が功を奏し、仮に中国が米国債をさらに買い進めた場合、米国債の需給環境は一時的に改善するだろう。しかし米国の財政状況がさらに悪化し、米国債の「デフォルト(国家債務不履行)」という事態に至れば、中国の金融政策当局に対する信認も“暴落”していくに違いない。
新パラダイムへの大転換
弊研究所では、世界的な「ハイパー・インフレーション」だけでなく、米国の「デフォルト」の可能性がこの夏に向けて高まるとの予想を、他のメディア等に先んずる形で論じてきた。直近の拙著『計画破産国家アメリカの罠――そして世界の救世主となる日本』(講談社)においても、米国勢の「デフォルト」に向けたありうべきシナリオについて詳細に述べている。ご関心のある読者の皆さんはぜひお読み頂きたい。
今後、私たち日本人は、米国の「デフォルト」や「ハイパー・インフレーション」に対していかなる手段でこの危機を乗り越えるべきなのか。そして、どういった考えで荒れ狂う金融市場を捉えるべきなのか。それらについて、日本の個人投資家・ビジネスマンの方々は、今まさに大いなる関心を持たれているのではないだろうか。
そこで弊研究所では、そうした皆様を対象に「情報リテラシー」の学び方を来る6月20日、21日に大阪、名古屋でそれぞれ開催する「IISIAスタート・セミナー」で述べる予定である。“今一番”という時だからこそ持つべき「情報リテラシー」を学び、共にマーケットを取り巻く国内外の情勢について考えたいとお思いの皆様に、一人でも多くお集まりいただければと考えている。
中国では“足元”で電力消費量が減少するなど、経済的陰りの“兆し”がちらほらと見受けられる。そのような中で、中国が米国債を買い進めることは、「米中無理心中」ともいうべき危険極まりない“諸刃の剣”になる可能性を秘めている。果たして中国勢として、次なる一手をどのように打つべきと考えているのか。――米中両大国の狭間で今夏をターゲットに「潮目」が見えつつある。
[新世紀人コメント]
米中無理心中とは穏やかならぬが、ここで私が気がかりに思うのは朝鮮半島情勢である。
北朝鮮の核実験・ロケット実験と盧前大統領の暗殺を疑われる自殺?が唐突であり、前もっての朝鮮半島を巡ってのシナリオの存在が推測される。
困窮する米国と彼に頼りにされるチャイナにとって北朝鮮とはなんであるのか、韓国とはなんであるのか、つまり朝鮮半島とはなんであるのか?
その何かにとって盧前大統領は邪魔な存在であったと仮定して考えると、そこから、それにより、「その何か」の像が又は影が浮かび上がってくるのではないのか。
いずれ私はそれについて触れたいと思う。
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