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日本の経験、1999年以降の展開(ダイアモンドオンライン)
山崎 元(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員)
【第81回】 2009年05月26日
現在の「金融危機」の展開は、
バブル崩壊後の日本経済の展開のVTR早回しだと筆者は思っている。
状況を過去の日本経済に当てはめる際の時間合わせの基準点は、昨年9月の「リーマンショック」と、1997年11月の「山一證券自主廃業発表」だ。その後、大手銀行への中途半端で一律の公的資金投入が無効だったことが日米で同じだし、米国政府によるシティグループの巨額の救済は、日本長期信用銀行の国有化に近いイベントだった。「ショック」の後に、金融が機能不全に陥り、消費者のマインドが後退して不況に陥ったところも基本的に同じだ。
筆者は年初の時点で、今年はかつての日本の98年から99年に相当すると考えていた。99年は収益資産(株式や不動産)の絶好の買い場だったので、株価はいったん落ち込んだ後に9000円程度まで回復するのではないか、といった大ざっぱな見当をつけていたのだが、1年かかると思っていた展開が4月半ばに達成されてしまった。今はどの段階なのかも含めて、この先の展開を考えなければならない。
2000年の春には、米国のネットバブル崩壊があり、その後日銀がいったん金融を引き締め気味に転じた影響もあって、不況に逆戻りした。経済成長率は01年度にはマイナス0.8%に落ち込み、株価も2000年度に36%強、01年度に15%強、02年度に27%強のいずれもマイナスという絶不調で、デフレと貸し渋りが問題だった。
その後、03年に、りそな銀行への公的資金投入があって、「大手銀行はつぶさないことがわかった」「金融の最悪は脱しただろう」ということで株価が上昇に転じ、弱々しいながらも景気の回復に加速がついた。03年度の日経平均は約47%の上昇、04年度はほぼ横ばって、05年度には46%強の上昇だ。
最近の米銀の決算を見ると、証券化商品の損失が峠を越えた感がある一方で、消費者向けの与信などローンの劣化による損失が目立つ。日本の不良債権問題でも、当初からあったバブル崩壊の損失に、不況による二次災害的な不良債権が加わった。現在の「金融危機」は、かつての日本の2000年代の段階に入っている気配が濃厚だ。クレジットの審査がきつくなるなど、「米国版貸し渋り」もすでに生じているようだ。
ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーは公的資金の返済の意思を表明した。彼の国の金融マンは「ボーナス命!」が第一の価値観だ。公的資金はボーナス支払いの制約になるので、これを返済したいと考えて不思議はないのだが、この場合、資本が薄くなって、「米国版貸し渋り」がひどくなる可能性が心配だ。
他方、ストレステスト(健全性審査)の結果発表と米国政府のサポート策の発表如何(いかん)によっては、日本の03年的な「あく抜け」感が出る可能性が若干はある。
現在の世界経済にとって、かつてのネットバブル崩壊的な追加のショックはない代わりに、かつて日本経済を引っ張ってくれた外国の好景気のような要因もない。
いきなり03年型の回復は難しいとしても、金融機関への政策的対処は終盤にさしかかっていようし、金融政策は世界的大緩和が続くだろうから、株価は、当面ぐずぐずするとしても、早ければ年内にも大幅な回復に向かい始めるのではないだろうか。日本としては失業率が大きく上昇して消費不況がさらに深化しないうちに、こうした展開になってほしい。
http://diamond.jp/series/yamazaki_econo/10081/