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2009年5月26日 (火)
内外経済金融に残存する三つの重大リスク
諸事情があり、『金利・為替・株価特報091号』の発行日が本日5月26日になった。『特報』ご購読の皆様には、ご不便をおかけしたことをお詫び申し上げたい。
日本の1−3月期GDP成長率がマイナス15.2%を記録した。2四半期連続のマイナス成長だ。設備投資と輸出が激減したことが大きく響いている。戦後最悪の不況である。
それでも、失業、倒産に直面する国民は比率にすれば少数派である。経済が大不況に陥って苦しみに直面するのは、経済的な弱者である。昨年末に大きく報道された「年越し派遣村」はその象徴だった。
高齢者、障害者、一人親世帯、非正規労働者、生活困窮世帯、などが、経済が悪化するときのしわ寄せを最も強く受ける。
だが、麻生政権にそのような国民の生活を慮(おもんぱか)る視点は存在しない。彼らが考えるのは、いかにして権力を維持するか。それだけである。麻生首相の祖父である吉田茂元首相も、権謀術数(けんぼうじゅっすう)の人物だったようだ。
秘密のファイル(上) CIAの対日工作
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秘密のファイル(下) CIAの対日工作
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名古屋大大学院教授の春名幹男氏の著書『秘密のファイル−CIAの対日工作』には、戦争加担者としてパージリストに載せられた吉田茂氏がどのような手段を用いてパージを回避したかが詳細に記述されている。
選挙に勝利して首相就任を目前にした鳩山一郎氏が、突然公職追放となり、総理の座を掴(つか)み損(そこ)ね、結果として吉田茂氏が首相の座を手中にした事実も記されている。吉田氏は鳩山一郎氏の危機を知りながら、鳩山氏のパージ回避にまったく動こうとしなかったようだ。
いまを読み解く手掛かりとして、歴史を振り返ることは有益である。2009年の総選挙は、政権交代の是非をめぐって麻生氏と鳩山氏との間で争われる。
このなかで、日本の政治を理解する上で見落とせない存在が「CIA」である。メディアによる情報操作とCIAの関わりを、いずれ明らかにしなければならない。また、核持ち込みに関する日米密約などの歴史的事実を白日の下に晒(さら)し、歴史を再検証しなければならない。
日本経済は深刻な状況にあるが、麻生首相は総選挙での勝利、権力の維持しか眼中にない。そうでなければ13.9兆円もの巨大な補正予算を「バラマキ」だけに充当することはないだろう。
58基金に4.6兆円の国費が投入され、補正予算全体の2割にあたる2.9兆円が天下り機関に注がれる。エコポイント、エコカー支援策は、経団連企業の在庫一掃セール支援策であって、環境対策ではない。大企業と官僚に対する利益供与がてんこ盛りである一方、一般国民には、一回限りの定額給付金と子育て支援金しか支払われない。
障害者自立支援法、後期高齢者医療制度、介護保険制度、非正規労働者のセーフティネット、生活保護の母子世帯加算、老齢加算、など、根底に広がる問題には手をつけようともしない。
麻生政権は総選挙の日程を検討している。西松事件は6月19日に初公判が開かれる。西松建設幹部は起訴事実を認めており、初公判での検察側冒頭陳述は検察側主張を一方的に展開することになる。
小沢氏秘書の事件は西松建設幹部の事件と別に取り扱われるため、小沢氏サイドの反論を示す場が存在しない。こうした公判までもが政治利用される。元地検次席検事である郷原信郎名城大教授が、不公正な期日設定を大批判している。
麻生政権は大不況を取り繕(つくろ)う姑息(こそく)な方法を検討していると考えられる。日本のGDP成長率が4−6月期に小幅ながらプラスに転じる可能性が高く、これを政権の成果としてアピールしようというのだ。
4−6月期GDPは8月中旬に発表される。8月30日に投票日を設定して、投票日直前にGDP統計を発表し、政策の成功をアピールしようというのである。そのために、いまから、景気底入れを強調するマスメディア報道が創作され始めている。
戦後最悪の不況で日本経済は「未曾有(みぞうゆう)」の苦境に直面しているが、本当の苦しみに見舞われている国民は比率では高くない。選挙のことだけ考えるなら、絶対数は問題でなくなる。比率が重要なのだ。
多数の国民が深刻な苦しみのなかに置かれているのに、その人々を救済する行動が取られない。多数を占める一般国民に、「一回限りの定額給付金」、「一回限りの子育て支援金」をバラ撒き、「高速道路1000円」と「エコポイント、エコカー」の目くらまし政策で投票誘導が図られる。
大資本と官僚には大盤振る舞いの政策を提示し、そのツケを一般国民に対する消費税大増税で賄(まかな)おうというのだ。
しかし、こんな茶番劇が通用するはずがない。通用させてはいけない。
日米株価は3月9日前後の最安値から約30%反発し、金融危機に対する警戒感が大幅に後退した。麻生政権は日本経済がこのまま順調に浮上するとの前提に立っているように見える。
与謝野馨経財相は、5月23日のNHK番組で、「最悪期は過ぎた」、「少し上がってくる局面になったのではないか」と述べた。楽観論に立っていることが分かる。
『金利・為替・株価特報091号』に詳述したが、リスクは決して小さくないと思われる。
いまから8か月前、昨年9月15日に米国投資銀行リーマン・ブラザーズが破たんした。日本経済は2008年夏からつるべ落としに大不況に直進していた。このとき与謝野馨氏は次のように述べた。
「日本経済は揺るぎもしない。蚊に刺された程度だ。」
ところが日本経済は現実に、
あっという間に「みぞうゆうの不況」に陥り、
さらに、「100年に一度の金融不況」に陥った、
と麻生首相が述べる状況に移行した。
与謝野氏から「最悪期は過ぎた、少し上がってくる局面になった」とお墨付きを得ると、逆に心配になる経済人が多いと思われる。
詳しくは『金利・為替・株価特報091号』をご高覧賜りたいが、見落とせぬリスクが存在する。NY株価は反発したが、長期下落トレンドからまだ抜け出したとは言えない状況にある。
@長期金利上昇リスク
A米国財政赤字激増を背景とするドル暴落リスク
B円高リスク
への警戒を怠れない。
投票日を先送りするしかないと考える麻生首相の判断が大きな間違いになる可能性がある。
政治は困難な状況に直面した人々のために存在する。政治の力によって例外なくすべての人を支えることが、政治の果たすべき最大の使命である。この基本を考えもせず、ただ権力の維持だけを優先する麻生政権には大きな試練が待ち受けるのではないか。
内外経済金融を覆い尽くす濃い霧が消え去るには、なお時間を要すると思われる。