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(※日本経済復活の会 小野盛司会長の記事、第168弾です)
本日(5月24日)のフジテレビ報道2001で、クルーグマンと与謝野大臣の対談があった。与謝野大臣がクルーグマンの著書をよく読んでおり(しかも原書で)一生懸命理解しようとしていることを知り、与謝野大臣に対する私の評価は、少なからず上がった。この番組での発言で重要な所を少しピックアップする。クルーグマンは私が言いたかったことを、代弁してくれている。
クルーグマン:日本は輸出中心、耐久性のある製品を輸出していて、こうした(世界不況の)影響を大変受けやすい。日本は「失われた10年」から完全に回復したわけではなかったというわけです。今振り返ってみれば、日本は2003年に景気回復が始まってから緊急経済対策を止めてしまった。利率はほぼ0にし続けるべきだったし、もっと財政の拡大をし続けるべきだった。その結果日本は失われた10年の状態に戻っている。今は失われた25年の状態に突入している。(まさにその通りである。大規模経済対策を続けていたら、日本経済はこれほど悪くならなかったはずだ。)
(景気回復にはどうすればよいか)
クルーグマン:こういった状況では物事は簡単ではないですが、私は実現可能なインフレターゲットがあればいいと思います。
【筆者のコメント:クルーグマンは日本に4%のインフレターゲットを設定するように提案している。デフレ脱却には若干高めのインフレターゲットを設定したほうがよい。日銀は、何と0%〜2%を目標にすると言っている。こんな低いターゲットは異常であるし、馬鹿げている。】
与謝野:経済にとって健全なインフレ率というものは私は存在すると思っています。
吉川洋:問題は2〜3%くらいのインフレをどうやって起こすことができるか(この答はクルーグマンの言うように、お金を刷って大規模な財政出動をすることなのだが、多分ここで、与謝野、吉川氏はインフレ政策は悪魔的だという主張をしたのではないか。インフレが庶民の財産価値を落とすという与謝野氏の主張。しかしクルーグマンはこれをはっきりと否定する。)
クルーグマン:一つ決定的に同意できないことがあります。テレビ的には嬉しいことでしょうが。インフレに対する恐怖はひどく強調されすぎています。(これは与謝野氏がインフレ政策を悪魔的政策と酷評したことに対する反論だろう)それは大洪水のまん中(集中豪雨のときにと言いたかったのだと思う)で火事の危険を叫ぶようなものです。日本銀行がインフレ率を発表する事を恐れているのは分かりますが、その目標を公表するのが大切なのです。2%でもある程度効果があるでしょう。(もちろん、彼は4%ならもっといいと言いたいのだ。番組でカットされたのかも。)
(クルーグマンは日本の景気対策についてコメントした。エコポイントに関しては評価保留だ。エコポイントが何に使われるか決まっていないだけと説明すれば、そう答えるしかない。定額給付金の2兆円に関しては評価はゼロだった。しかし、評価しなかったのは額が少なすぎたからであり、これを50兆円の対策であったら賛成したのではないか。後でクルーグマンは、経済対策の方向は間違えていない、規模が小さすぎるだけだという意味の発言をしている。)
クルーグマン:他の国で失敗しているのに、日本がこの政策を実行しているのは意外です。米国でも同じ政策があったが、全く駄目でした。米国では歴史的に見て給付金は使われず、ほとんど貯蓄されます。私ならこの政策はやりません。
与謝野:多分、消費に回るほうが、貯蓄よりはるかに多いということが、過去の経験から推定できるので、定額給付金というある種の減税をやった。
(定額給付金は、即効性という点では、あまり期待できないかもしれないが、収入はいつかは使われるものだと考えれば、効果はあるはず。この点では私は与謝野氏に同意する。)
アナウンサー:では、何が必要だと考えるか
クルーグマン:私なら過去に前例のないレベルの金融政策を積極的に進めます(お金を刷る政策ということだ)。ドイツと日本はとても似た状況にあります。両国とも輸出に大きく依存し製造部門に強く金融部門は比較的安定しています。しかし、日本にはドイツにはない利点があります。ユーロに縛られた国よりも積極的な金融政策を取る力を持っているということです。(これは非常に重要なポイントだ。EUという経済共同体を維持しようと思うと、加盟国が勝手にお金を刷っていたら、EUは滅茶苦茶になってしまう。例えばある国の特定の州が通貨発行権を与えられていて、その州だけがどんどんお金を刷り始めたらその国は滅茶苦茶になる。これと同じようにドイツも自由にお金を刷って財政を拡大するわけにいかない。ドイツはEUの一つの州のようなものだからだ。しかし、日本はどの経済共同体にも属さず、そのような制約はないからお金を刷れる。)
与謝野:私は日本銀行ではないんで。(金融政策には口出しできないと言いたいのだ)
クルーグマン:でも話さなければならない。
与謝野:もちろん、よく知っています。彼ら(日銀)は我々の期待以上に非伝統的な政策(お金を刷る政策)を取っています(いえいえ、あれではとても足りません)。彼らにこれ以上期待してルースマネタリーポリシー(自由な金融政策)を取れということはほとんど無理なことだと思います。
クルーグマン:いえいえ、余地はいくらでも残っています(それはそうだ。刷ることができるお金には上限はない)。繰り返しますが、日本の財政政策は正しい方向に向かっています。しかしもっとやるべきなのです。(ここが重要なポイントだ。もっと大規模な財政出動をやらねばならないということ。)
与謝野:我々が作った政策は金融と需要を作り出すこと。この2つしかありません。(番組からのコメント:この2つの制作はクルーグマンの著書を参考にしたもの。大臣は著書が発売される前に原文で読んでいたという)
与謝野:非常に興味あるおもしろい本です。その最後に書いてあるたった2行のことですが、私はその本を補正予算を作る前にちゃんと読んでいて・・・
(その2行とは「世界の政策指導者は2つのことをする必要がある。それは信用フローを回復すること。そして消費を喚起すること」)
番組からの質問:財政出動は需要を増やすのか
与謝野:今回の財政出動の規模はGDPの3%におよんでいます。その効果は今年のGDPを2%押し上げる効果があります。ほとんど米国と同じような規模の財政政策をやっていると考えています。
クルーグマン:米国の政策がそうであったように、日本の政策も間違っていません。しかし、もっと積極性が欲しいのです。(つまりもっと大規模な財政出動が必要だと、ここでも念を押した。)
与謝野:麻生総理はもっとたくさん財政出動をせよとおっしゃいました。それが本当にワイズスペンディング(賢い支出)かどうかは一つずつチェックしました。
クルーグマン:経済学者ケインズはこう言いました。できるならばお金は賢く使え、しかし賢くない使い方でも役に立つことがあるのだ。ともかくお金を使うべきなのです。(つまりどのような形であれ、お金を国民に渡すことが重要なのだ。大規模な財政出動でなければ十分お金が国民に渡らない。様々な経路で国民にお金が渡る。どれが悪いなどと細かくケチをつけていたら、大規模な財政政策などできるわけがない。これは民主党に理解して欲しい点だ。)
与謝野:今回の財政出動は大胆すぎると我々は批判を受けています。どうせお金を使うのだったら、一時に人を驚かせるほどの額を使わなければいけないというのが我々の考えでした。(15兆円程度では誰も驚かないのだが)
クルーグマン:そうでしょう。全く一緒です。オバマ政権は、お金を使いすぎると多くの人が批判している。しかしオバマ政権はまだ全然少ない資金しか投入していないと思います。中途半端な政策は何もしないのとお案じくらいタチが悪いのです。
アナウンサー:日本の景気回復はいつ頃か。
与謝野:たぶん来年の春には日本の経済はプラス成長になっていると私は思います。(ちょっと待って下さい。2008年度と2009年度で日本経済は7%位縮小する見込みで、その後プラス1%〜2%成長しても、それは景気回復ではないでしょう。2007年から来年春までの平均成長率は絶対に大きなマイナスになることは間違いなく、それは景気回復とは言えないですよ、与謝野さん。)
クルーグマン:米国について言えば、今年の終わり頃には経済は回復の兆しを見せる可能性が高いと思います。日本は患者は最悪の状況は脱したと思います。しかし、いつ退院できるか分からない。5年後かもしれない。10年後かもしれない。(こんな貧弱な経済政策では、今後5〜10年は、日本経済は病気で入院中の状態が続くというのが彼の考え。)
与謝野:米国もヨーロッパも日本も手品のようなことはできません(彼は、お金を刷る政策を「手品」だと言う)。汗と知恵を出さなければ本当の富(刷った金は本当の富でないといいたいのか。デフレで消えたお金を取り戻すだけなのに。)を作り出すことはできないと思っています。
クルーグマン:しかし、現在の世界経済危機では、ひょっとしたら魔法のようなことができるかもしれません(お金を刷る政策で経済復活は可能ということ)。ケインズはこんなことを言っています。私たちは強力なエンジンがある(財政出動のこと)けど、一つ異物(お金を刷ることが悪いのではないかという迷信)があって、動き出さないだけで、その異物を取り除けばエンジンは動き出すのだと。私たちは、その異物がどこになるのかを見極めなければならない。
アナウンサー:どの産業が日本を救うと思いますか。
クルーグマン:分かりません。希望があると思っているのは、米国、そして環境産業です。どんな産業なら新しく投資をしてくれるか真剣に考えねばなりませんね。環境方針を厳しくすることによって、得られる可能性に皆投資するのではないかと思います(環境エネルギーに大規模投資をせよという我々の主張と同じだ)。大規模で明確な温暖化対策を打ち出すことは、かなり役に立つのではないかと思います。日本はそこで大きな役割を果たせるのではないかと思います。
もちろん、誰も特効薬を持っていません。いやこう言い換えましょう。特効薬はあるかもしれないが、それがどんなものか誰にも分からないのです。あらゆるボタンを押してみることが大切なのですから。どれにどれだけの効果があるか分からないのですから。(ともかく、お金を刷って色んな方法で国民にお金を渡していれば、そのうち健康を取り戻し、退院できるようになる。)
与謝野:私は今年の経済対策をクルーグマン先生の本に合致するかどうか、いつも考えていましたから、今日お目に掛かって非常に光栄だと思っています。とても得られるものが多い対談でした。
(だったら、もっと大規模な財政出動をせよという彼のアドバイスに従いましょうよ、与謝野さん。財源の問題をもっと議論して欲しかったですね。そうすれば、お金を刷りなさいというクルーグマン氏の主張がもっとはっきり分かった。もっとも、番組の冒頭で、彼の「お金を刷りなさい」という主張を紹介している。
ポール・クルーグマン『世界大不況への警告』より引用しよう。アメリカを代表する経済学者ポール・クルーグマンは日本経済の現状が1970年代のベビーシッター協力組合で起こったことと、そっくりだという。詳しくはこの本を読んで頂きたいが、この協力組合では、約150組みの夫婦からなり、ベビーシッターをお互いにしあうために、クーポン券を発行した。ベビーシッターをしてもらったときに、クーポン券を渡した。しばらくすると余り使わずに、将来に備えてどんどんクーポン券を貯め込む人がでてきた一方、逆にクーポン券が不足する人が出てくるようになり、それはだんだん使われなくなり、うまく機能しなくなった。会員の多くが将来に備えできるだけ貯えておこうとしたからだ。
いわば、景気後退、つまりデフレ状態なのである。役員達は、「構造改革」が必要だと言い、一ヶ月に二回外出することを義務づけた。しかしこの構造改革は失敗に終わった。経済学者は、もっと発行量を増やせばちゃんと機能するようになると予言し、実際発行量を増やしたら、正常に機能するようになったという。なぜ発行量を増やしたら皆が使うようになったのだろう。それは、もうこれ以上貯めてもしょうがないほど、充分にクーポンを皆さんが入手したからである。つまり、デフレは構造改革では、解決できなかったが、単に発行量を増やすだけでちゃんとクーポンが流通するようになったということである。クーポン増発は「禁じ手」だろうか。そんなことはない。益あって害無しだ。この制度を円滑に運営するためには、不可欠の方法である。クーポンは少なすぎても、多すぎても機能しないのだ。
35頁『換言するならば、景気後退は、ただ紙幣を印刷することによって解決することができるのだ。景気後退は時として(ないしは常に)いとも簡単に解決可能な問題なのである。』クルーグマンによれば、日本の不況は、構造改革によっては、克服することはできないが、紙幣を印刷すれば簡単に解決する。)
http://shimotazawa.cocolog-wbs.com/akebi/2009/05/post-0743.html