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【経済コラム】明る過ぎる中国経済の見通しにはご用心−J・ワシック 5月18日
(ブルームバーグ):
昨年、米国株式で痛手を被った人にとっては、現在の中国市場は損失を埋め合わせる格好の機会のように映る。
上海総合指数は年初から今月15日までに約45%上昇。シンセン総合指数は60%高だ。これに対し、ダウ工業株30種平均は同期間に5%下落しており、中国株や関連の上場投資信託(ETF)に押しかける理由を説明するのは容易だ。しかし、多くのアナリストがバブルは投資家が増長させるものだと警戒するなか、世界的な熱狂が誤った方向に導く可能性もある。
一つの楽観的な説は、プラス成長を達成している数少ない国として、中国は資金提供と国内市場の拡大を通じて収縮する西側経済を救うと指摘する。よりもっともらしい説は、中国は単に米国主導の景気回復に続くだけというもので、バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は景気に「グリーンシュート(新芽)」が見られつつあるとの認識を示している。
中国の未来は極めて明るいものと思われており、こうした2つの見方が対立するのも無理はない。そういうわけで、長期的な投資ポートフォリオにおいて今後中国を避けるように勧める金融アドバイザーは少ないだろう。
4兆元の景気刺激策
米ゴールドマン・サックス・グループですら、中国の見通しには楽観的だ。同社は先月、中国の今年の成長率予測を8.3%と従来の6%から上方修正した。アナリストたちは、中国人民銀行(中央銀行)が昨年9月から5回利下げしたことと、同国政府が4兆元(約56兆5000 億円)規模の景気刺激策を打ち出したことを評価している。
ゴールドマンとは異なり、世界銀行は今年の中国の成長率を約 6.5%と見込む。1−3月(第1四半期)実績は前年同期比6.1%成長だった。
中国については今年、世界で最も力強い成長を示すとの共通認識がある一方で、西側諸国では住宅と雇用、信用市場の回復はないとみられている。
懸念材料
中国国民が進んで消費を拡大し貯蓄を減らすようになるとの見通しは、全く的外れの可能性もある。同国の貯蓄率は3割を超える。多くの中国人が貯蓄に励む理由の一つには医療制度の不備がある。同国には社会保障上のしっかりしたセーフティーネットが整っておらず、自己負担の部分が極めて大きい。多くの家庭と同様、中国の家庭でも家電品や自動車と比べれば医療に金を回す可能性ははるかに高い。景気刺激策の一部は現在、医療制度に向けられている。その構築には数年を要するだろう。
さらに、中国の金融業界に関する懸念もある。中国の銀行は第1四半期に融資を3倍の6700億ドルに拡大しているが、そうした融資の多くは焦げ付く恐れもある。
米中の共生関係
中国と米国は現在、金融面において複雑で緊張した共生関係にある。中国は巨額の米国債を購入し、ブッシュ前政権の減税やオバマ現政権の約8000億ドル規模の刺激策に資金を提供している。中国の外貨準備は2003年の約3400億ドルから09年3月末時点ではほぼ2兆ドルへと膨らんだ。うち、1兆2000億ドル程度は米経済に投資されている。
ドルの下落と、米国が債務返済のため紙幣を増発すればインフレが起きるとの脅威は、中国が保有する米資産の価値劣化につながる。ドルが米国の巨額債務を反映した動きを示すなかで、中国が米国の金融資産を永遠に保有し続けることはないだろう。中国当局がドル資産を別の投資先に振り向けることを決め、時間をかけてそれを実行すれば、米経済にとってはマイナス材料だ。
中国の周文重・駐米大使は今月、シカゴでのイベントで「人民銀は引き続き慎重に投資を続ける」とし、「米経済が上向き、ドルが強さを維持することを期待する」と語った。
中国株も割高となってきている。15日時点での上海総合指数のPER(株価収益率)は26.57倍と、米S&P500種株価指数のほぼ2倍。中国企業の業績は米企業を上回っているかもしれないが、関連の指標が示すほどの大差はつけていない。
経済的な共倒れを回避するため、中国は国内経済の強化を図り、米国向け輸出の落ち込みに対処しなければならない。中間所得者層の割合を全人口の4分の1を大きく上回る水準にまで引き上げる必要もある。同国では依然として8億人程度が農村部で相対的に貧困な生活を送っている。
1カ国だけのリターン(投資収益率)に気を取られてはいけない。ブラジルやマレーシア、シンガポール、スウェーデン、ベトナムも今年は高いリターンを挙げている。「バンガード・トータル・ワールド・ストック・インデックス・ファンド」などETFを通じて多くの市場に投資することは、より良いリターンにつながるだろう。
もちろん、こうした方法にリスクがないというわけではない。グローバル化が進んだ世界では、一部の病める国の経済疾病がパンデミック(世界的大流行)を引き起こす可能性が常に存在するからだ。(ジョン・ワシック)
(ジョン・ワシック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏の見解です)
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90003001&sid=aVM0wIbOdPAU&refer=commentary