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中央銀行の国債購入(=広義のセイニアーリッジ政策)について(経済コラムマガジン09/4/27(567号))
http://www.asyura2.com/09/hasan62/msg/452.html
投稿者 JAXVN 日時 2009 年 4 月 26 日 15:02:58: fSuEJ1ZfVg3Og
 

「中央銀行の国債購入

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各国の主体別国債保有比率
今週は資本主義経済とバブルについて述べる予定であったが、これは後日に延期させていただく。今週は国債の消化をテーマに取上げることにする。09/3/30(第563号)「政府紙幣論議の結末」http://www.adpweb.com/eco/eco563.html で述べたように、今のところ日本ではいきなり政府紙幣発行という方向はとても無理である。しかし日銀による毎月の国債購入の増額(買い切りオペの増額)が実施されることになった。

ずっと本誌で説明しているように、政府紙幣発行と日銀による国債の買い切りオペの増額は実質的に同じことになる。日銀の国債購入は広義のセイニア−リッジ政策と言える。考えてみれば日本ではこの事実上のセイニア−リッジ政策が昔から続けられてきた。

筆者が注目するのは、今回の世界的な不況対策の財源確保のために日本だけではなく、いくつかの国で同様の施策を実施することである。今のところ米国と英国の中央銀行が国債購入に踏出す。英国はEUの一国であるが、ユーロには参加せず、依然と自国通貨(ポンド)を発行している。ユーロに参加に参加していないことが幸いし、英国はこの中央銀行による国債購入が可能となっている。

中央銀行による国債購入は非伝統的政策と認識され、日本を除き各国が避けてきた政策である。特にインフレを警戒する国が多い欧州では、この国債購入による通貨発行増大によるインフレを危惧する(実際にインフレが起るかどうかを別にして)。また米国でもグリーンスパン前FRB議長が踏み出せなかった政策である。このような非伝統的政策に打って出るというのだから、各国の経済状態が最悪であることが窺える。

話を進めるため、ここで各国の国債を誰がどの程度の比率で保有しているのかを示す。

各国の主体別国債保有比率(%)
     政 府 中央銀行 金融機関 海外 個人・他
日 本     40.2 14.5 37.2  4.0  4.2
米 国     14.5 16.3 16.5  39.9 12.8
英 国     4.0 5.5 68.6  12.2 9.7
ドイツ  0.0 0.3 38.6  40.3 20.7
フランス 0.3 0.0 68.0  26.2  5.5

まずこの数字は、国によって03年から04年頃のものでありいささか古い。しかし各主体の保有割合はあまり変わっていないと見る。ただ米国の海外居住者の保有割合が少し大きくなっていると思われる(中国の保有がかなり増えている)。

この表を見て分ることは、国によって国債を主に保有している主体がみごとにバラバラということである。日本は「政府」の保有が大きいが、この政府とは財投、公的年金、郵貯などである。英国とフランスは金融機関の保有比率が突出して大きい。

どのような保有比率が理想的なのか一概には言えない。ただ米国やドイツのように海外居住者の割合が高いことは、後ほど触れるように色々な意味で問題が起こり得る。ところで日本は「海外」の比率が極めて低く、「政府」「中央銀行」「金融機関」でほとんどを保有している。

このような日本の国債をムーディーズやS&Pなどの格付機関が勝手に格付をしてきた。しかし日本の国債の保有形態を見れば分るように、格付すること自体意味がない。ところがばかげたことに日本ではこの格付が下がったと大騒ぎしてきたのである。まず格付機関の格付がいい加減なことは本誌でもずっと指摘してきた。今日、格付機関が問題になっているのは当然のことである。だいたい本当に適切な格付を行おうとしたなら格付機関は現在の100倍くらいの人員を抱える必要があろう。

また国債は個人消化が良いという話が根強くある。しかし先進各国の個人保有比率はいずれも低い。むしろ個人の金が金融機関に預金され、その金融機関が国債を保有するという形が一般的と言える。

・中国の脅し
筆者が特に取上げたいのは二番目の「中央銀行」の保有比率である。日本は日銀による国債買い切りオペを増額してきており、これによって15%程度の保有比率になっている。米国の16.3%という比率は、何度も取上げているが、1951年のアコード締結までFRBが青空天井で国債を買っていたなごりと考えられる。これまでこれが氷付けされているのである。

さすがにインフレ警戒が強い欧州各国は、中央銀行の国債保有はほとんどない。もっともユーロを採用しているドイツやフランスは、事実上、中央銀行による国債購入は無理である。一方、英国国債は、今回中央銀行が購入に踏切るということで格下げ観測が話題になっている。

筆者は、株式指数のドイツのDAX指数と英国のFT100指数の動きにずっと注目している。以前は常にDAX指数がFT100指数より1,000ポイントほど大きかったが、最近ではその差が500ポイントほどに縮小している。株式の指数であるから色々な要素が絡んでくるが、これからは国債の中央銀行購入という政策も影響があると考える。もしこれを実施する英国が不況をうまく克服するようだと、ユーロの見直しあるいはユーロの崩壊に繋がる可能性があると筆者は思っている。

日銀の国債保有が比較的高い日本の物価が、先進国の中で一番上がっていない。筆者はこれは日銀の国債の購入額が不足していたからと見ている。関連して言えば政府はもっと大きな財政赤字が必要だった。日銀が国債を購入してもデフレ経済から脱却できていない。それほど本当の日本のデフレギャップは大きいのである。

ずっと本誌が指摘してきたように、内閣府や日銀が公表しているデフレギャップはインチキである。追加の財政支出を行えば、ハイパーインフレーションが起るという御用学者の話も嘘である。また金融の面でも、70年代の列島改造バブルと80年代後半の土地バブルの崩壊を経験した日本には、08/12/1(第550号)「デフレ発生のメカニズム」http://www.adpweb.com/eco/eco550.html で説明した通り、凍り付いたマネーサプライ(金融資産)が巨額に積み上がっている。

この凍り付いた金融資産は贈与税軽減ぐらいで動き出すはずがない。政府がその規模に見合った財政支出を行い、それに伴う国債を日銀が買えば良いのである。このような施策を講じておれば、日本は輸出に頼らざるを得ないような経済構造にならなかったはずである。

ところが日銀は、内規で国債の購入の限度を日銀券の発行額としている(銀行券ルール)。しかしこの数字についての合理的な根拠を聞いたことがない。筆者は、発行されている日銀券のかなりの部分がタンスに眠っており、この発行額までは国債を買っても良いと日銀は判断していると推測している。

日本の国債の金利は1.4%台であり、筆者もただちに限度額を増やせとは言わない。まず相当の財政出動が行われ、長期金利が上昇してくるようなら限度額を上げれば良いと思っている。ただし限度額を設定するにしてももっと科学的な根拠が必要と考える。

最後は米国FRBが米国債購入を決定したことの各国に対するインパクトについてである(先ほどから説明しているように再開と言った方がが適切)。まず日銀の今回の国債購入の増額(買い切りオペの増額)の決定に少なからず影響を与えたと見ている。しかし筆者が一番注目しているのは中国の反応である。

中国は米国の今回の決定に予想以上の反発をしている。表向きの理由は、中国が大量に保有している米国債の価値が下がるからというものである。実際のところFRBが米国債を買えば、国債の利回りは下がり、国債の価格は上昇する。この点では中国の言い分は通らない。また中国は米ドルの価値がこれによって下がると主張している。しかしこれについては不明である。米国の景気が良くなると思われれば、米国に資金が流れ、米ドルは高くなる可能性がある。

筆者は、中国の本音は、米国の今回の決定で中国が米国を脅す武器の効果がなくなったことと考えている。以前から米国は、中国が人民元を安くなるよう不当に為替操作していると批難している。しかしこれに対して中国は、米国債を買って米国財政に協力していると反論している。

民主党政権に代わり為替政策に対して攻撃が強まると、中国はとうとう「米国債を売ってしまう」と反撃に出ていた。しかしこの武器が有効だったのは、米国FRBが国債購入に踏出すことに躊躇していた時代である。ところが一旦、国債購入を始めれば話は変わる。

現在、米国FRBは6,000億ドル(3,000億ドル+3,000億ドル)の国債購入を決定している。後、1兆ドルほど増額し、中国の保有する国債をそっくり買ってしまうことは簡単なことである。困るのは中国の方である。それにしても「米国債を売ってしまう」と中国に脅されるなんて、米国は情けない国になってしまったものである。

来週はゴールデンウイークにつき休刊、次回は5月11日号になる。今週号の続きとして、保護主義と国家の関係をテーマに取上げる。]

http://www.adpweb.com/eco/eco567.html  

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