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超優良企業AIGの凋落
多角化戦略が裏目に
ほんの数年前まで世界屈指の優良企業とされた米AIGが窮地に陥った。
米政府は緊急融資で同社を救済するという前代未聞の措置を取る羽目に。
その凋落の原因は1980年代にまでさかのぼらなければならない。
存亡の危機に立たされた米AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)を見て、誰しもが疑問に思ったに違いない。世界最大の保険会社だったAIGが一体なぜこのような窮地に陥ってしまったのか、と。
その答えは同社が1980年代の終わりに下した1つの決断にある。米ドレクセル・バーナム・ランベール*1からデリバティブ(金融派生商品)のプロ集団を採用したことだ。彼らが母体となり基盤を築いたのが、膨大なデリバティブ取引を手がけるAIGFP(AIGファイナンシャル・プロダクツ)。今のAIG の混乱の原因であり、中核の保険事業とは懸け離れた多角化事業だ。
高い格付けをテコに多角化
AIGをよく知る関係者によると、同事業の崩壊の一因は、2005年に更迭されるまで約40年間同社を率いたモーリス・グリーンバーグ氏が築いた企業文化だった。その文化とは「イノベーションと起業家精神」であり、基本的にAIGの資金調達コストの低さを武器にすることだったという。
トリプルAの格付けを持つAIGはスワップ取引の相手としてはずばぬけて魅力的な存在だった。「期間の長いスワップ取引をするならAIGほどいい相手はなかった」とこの関係者は言う。
AIGFPは1990年代に急拡大し、企業のデフォルト(債務不履行)のリスクに保険をかけるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)や、住宅ローン、消費者金融に手を広げていった。こうした多角化事業はその後何年にもわたり大きな収益源となる。
しかし、この拡大戦略の一端を担ったのがCDO(債務担保証券)と呼ばれる証券化商品に保険をかける事業だった。この種の取引こそが、AIGが過去数カ月で410億ドルもの評価損計上に追い込まれた最大の要因だ。
AIGは最近まで、CDOのデフォルトに対する保険商品が損失を生む可能性は低いと考えていた。同社が手がける信用デリバティブの大半はスーパーシニアと呼ばれる案件で、格付け機関にトリプルAを与えられるほど安全と見なされていたからだ。
AIGがスーパーシニアCDSを手がけ始めたのは10年近く前のこと。この金融商品が開発されて間もなく、米JPモルガンなどの大手金融機関からリスクを引き受け始めたのだ。
当時、これらの商品は微々たるリターンしか生まなかったため、大半の投資家は買いたがらなかった。だが、保険会社であるAIGはトリプルA格付けを持つ証券を保有することを好んだ。しかも、スーパーシニアCDSは少なくとも米国債よりは高い利回りを生んだ。ある銀行家は「AIGは市場の主要プレーヤーだった」と振り返る。
*1=「ジャンク債の帝王」と呼ばれたマイケル・ミルケン氏が1980年代後半、急成長させた投資銀行。その後、ミルケン氏は証券詐欺などの罪で有罪判決を受け、90年ドレクセルも倒産した
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