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【経済コラム】バフェット氏が北朝鮮を買収する日−W・ペセック 4月8日(ブルームバーグ):
北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記に拍手喝采(かっさい)といったところだ。この北朝鮮の指導者ほど人々の注目を集める人物はほかにはいない。
オバマ米大統領がプラハで約2万人の聴衆の前で行った演説でさえ、北朝鮮による週末のミサイル発射でトップニュースから外れた。成功か失敗かは問題ではない。世界がそれで危うく動きを止めそうになったのだ。
ミサイル発射が既に多くの課題を抱える世界経済にとって悪いニュースであるのは明らかだ。しかし、それでも得した人と損した人がいる。得した方が少ないのでそちらからいくと、その筆頭は金正日氏自身だ。
約260億ドル(約2兆6000億円、2007年の世界銀行データ)規模にすぎない北朝鮮経済を、14兆ドルの米国経済と比べるのはフェアではない。そこで著名な米投資家のウォーレン・バフェット氏と比較してみよう。
38度線北のバフェット国
米誌フォーブスによれば、投資会社バークシャー・ハサウェイを率いるバフェット氏は昨年、人口2300万人の北朝鮮の国内総生産(GDP)に匹敵する損失を出した。それだけの金を失っても、3月半ば時点の資産額は推定で370億ドルだ。
バフェット氏が北朝鮮を買収したらと思わず夢想したくなる。同氏が北朝鮮を買い取り、オバマ大統領に献上した場合、そこから生じる利益を想像してみよう。決して現実には起こらないだろうが、38度線の北に位置するバフェット氏の国を想像することは可能だ。
それでも物事を広い視点でとらえたことにはまだならない。世界2位の富豪であるバフェット氏は北朝鮮を買収することが可能であり、さらにモンゴルとナミビアを買い取るのに十分な資金がある。1人の米国人投資家が簡単に買収できるこの国が、実質的にアジア全体を人質に取っている状況がここにある。
北朝鮮当局から武器を購入しようとしている「ならず者国家」もミサイル発射の恩恵を受ける。テポドン2号は最新鋭の武器では決してないが、北朝鮮によるミサイル発射が広く知れ渡ったことで、イランなどから旺盛な武器需要が喚起されることを米当局は引き続き懸念している。
日本もてあそぶ北朝鮮
ミサイル発射で損した人々ははるかに数が多い。北朝鮮の国民がまず挙げられる。金正日氏は国民の生活水準向上ではなく、自らの地位強化を図っている。
日米と韓国も打撃を受けた。北朝鮮のテロ支援国指定解除を大きな成功と位置付けたブッシュ前米政権は最後にしっぺ返しを食らった格好だ。米経済のリセッション(景気後退)に直面するオバマ新政権にとっては、不要な外交政策の危機を意味する。
日本政府は北朝鮮が実際にミサイルを発射した前日に発射の誤報を流す失態を演じた。誤報が訂正される様子は、あたかも金正日氏が不安に駆られる日本政府をもてあそんでいるように見えた。日本からの度重なる警告にもかかわらず北朝鮮が発射を断行したことは、アジア1位の経済大国が北朝鮮に行使できる力がほとんどないことを示している。
北朝鮮の南に位置し、格付け会社が朝鮮半島における戦争リスクを考慮せざるを得ない韓国にとっても、発射はプラスではない。
中国にとってもマイナスだ。中国は国連安全保障理事会の緊急協議で北朝鮮への制裁強化を拒否する姿勢を示したが、現実には発射は中国政府にとって極めて悪いタイミングで行われた。
中国にもマイナス
中国政府当局者らは、3兆3000億ドルの規模を誇る中国経済を世界的なリセッションの影響から遮断(しゃだん)するので手いっぱいだ。それが今や、先行きの予想が明らかに不可能な金正日体制を直ちに抑える必要に迫られている。日米両国政府は、胡錦濤国家主席と金正日総書記との協議を要請する圧力を強めることが予想される。
中国がかなりの国境を接する北朝鮮の崩壊を避けたいと考えているのは周知の事実だが、米国と北朝鮮を対立したままにしておきたい意向はあまり知られていない。両国の関係改善は中国政府の影響力を弱めかねないためだ。
エネルギーや鉱物資源の購入によってアフリカの独裁国家を支援するのと同じように、北朝鮮の言いなりになることは、中国の対外的イメージにプラスにならない。金正日氏が注目を浴び、世界を揺さぶり続ける間は少なくともそう言える。(ウィリアム・ペセック)
(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。コラムの内容は同氏自身の見解です)
更新日時 : 2009/04/08 15:58 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90003001&sid=agUqwuyV4pO0&refer=commentary