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AIGの「懲りないボーナス」に見るアメリカ型報酬制度の歪み
堀田佳男の「オバマの通信簿」【7】
PRESIDENT Online
90年代に入ってから、アメリカ大企業CEOの報酬は一般社員の300倍というレベルに達するようになった。
文=堀田佳男
アメリカ発の金融危機で疑問に思うことがある。
アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)に代表される大企業の幹部社員の法外なコンペンセーション(高額報酬制度)のあり方についてである。90年代に入ってから、アメリカ大企業CEOの報酬は一般社員の300倍というレベルに達するようになった。「格差があり過ぎる」との批判は常につきまとう。そしてAIG幹部社員のボーナス問題が噴出した。
昨年、ブッシュ政権はベア・スターンズやリーマン・ブラザーズを見捨てたが、AIGを倒産させることはさらなる金融市場の収縮を招き、本格的な恐慌へとつながりかねないと判断して税金を注入して救済した。なにしろ、大恐慌時代の始まりだった1929年10月29日の「ブラック・チューズデー」から10カ月間で、744行が倒産している。恐慌が本格化した30年代には約9000行が破産の憂き目にあった。
そうした背景から、アメリカ政府はこれまで4回にわたって計約16兆円もの税金をAIGに注いだ。その中で幹部社員約400人が総額160億円ものボーナスを手にした。会社側は、社員との契約を履行しただけというが、国民の税金によって救われた企業の言い分ではない。億円単位のボーナスには誰しもが憤りをもち、不条理を感じた。ギャラップ調査によれば、「ボーナスを受け取った人がカネを返還する必要はない」と答えた人は12%に過ぎなかった。大多数のアメリカ人も日本人と同じ思いなのである。
そもそもAIGは、2000年あたりから新しい金融商品であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)に事業のウェイトを置いていた。本来の保険業務から金融商品に頼り過ぎる流れができていた。政府の金融商品に対する規制が緩んだことも一因にある。金融機関は複雑な商品のカラクリを公開する義務がなかったため、一部の専門家にしか全体像がつかめず、損失が出ると雪だるま式に膨らんだ。
AIGが力を入れたCDSはあまりにもリスクが高く、著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏は02年、CDSを「金融の大量破壊兵器」とさえ呼んだ。AIGはハイリスク・ハイリターンの金融商品に足元をすくわれ、07年暮から赤字を計上しはじめ、08年四半期にはその額は約6兆円にまで膨らんだ。
それでも幹部社員は多額のコンペンセーションを受け取っていた。AIGが倒産すべきだったかの議論は別にして、この報酬制度について真義を問うべきであろう。
コンペンセーションはいまだに日本社会には馴染みが薄い制度である。日本でも一部大企業の役員が手にしてはいるが、一般社員がコンペンセーションの対象者として年収1億円を手にする文化は根づいていない。コンペンセーションとは基本給をはじめ、短期的インセンティブ、ボーナス、有価証券、ストックオプション、その他の手当てすべてを含んだ報酬の総称である。
競争の国アメリカらしいシステムであり、すでにヨーロッパ企業、インドの大手企業などに浸透している。2月、インドの大手IT企業のCEOにインタビューした時、優秀なエンジニアに多額のコンペンセーションを支払っていると述べた。
http://president.jp.reuters.com/article/2009/04/01/6EEC8440-1E78-11DE-9310-C8B03E99CD51.php