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中国が提案した超国家通貨の行方(KlugView)
2009/03/26 (木) 15:30
中国人民銀行の周小川総裁は、3月23日、米ドル中心の国際通貨体制の見直しを求める論文を発表しました。論文では、基軸通貨国(米国)だけでは十分な流動性を提供することと、通貨を安定化させることは両立できないし、解決策として、「スーパーソブリン(超国家)準備通貨」の創設を提案しています。スーパーソブリン準備通貨の具体策としては、国際通貨基金(IMF)の資産である特別引き出し権(SDR)を活用し、SDRの構成通貨と組み入れ比率を見直すことを提案しています。
SDRとは、IMFが創設した擬似的な通貨(資産の一種)です。SDRが創設されるまで、各国通貨の為替レートは、米ドルと固定され、米ドルは金の価値と固定されていました。いわゆる固定為替相場制です。しかし、米ドルや金の供給量が、経済発展のスピードに追いつけず、結果として為替や景気を不安定にする可能性が高まってきました。そこでIMFは、固定為替相場制を維持するためのツールとして、金や米ドル以外に富を蓄積するための資産としてSDRを創設し、IMF加盟国が利用できるようにしました。SDRの価値は、創設当初、1SDR=1米ドル(純金0.888671グラム相当)と決められました。
しかし、その後、為替が変動相場制に移行してしまったため、SDRの必要性は低くなってしまいました。現在では、SDRは、IMFを通じて他国通貨を入手できる権利として使われているものの、あまり利用されていません。現在のSDRは、為替が変動相場制に移行したこともあり、米ドル、日本円、ユーロ、英ポンドで構成される通貨バスケットとして価値が計算されています。
周総裁の論文に対し、米国当局者は、興味深い反応を示しています。米国の経済再生諮問会議議長を務めるボルカー元FRB議長は、周総裁の提案は現実的でないとし、米ドルを基軸通貨とした現在のシステムが崩壊することは誰も望んでいないと述べています。
世界の覇権争いという意味で、中国の当局者が、ドルの地位を揺るがすような発言をすること、そして米国の当局者が、基軸通貨としてのドルを擁護する発言をすることは、自然のことといえます。しかし、覇権の行方という政治的な議論ではなく、経済学的に考えるのであれば、周総裁が指摘するように、特定の通貨から独立した、国家を超越した通貨を創設することは、それなりに合理的な考えと思われます。
とはいえ、通貨は、富を蓄積し、(場合によっては)他社の富を操作するための、もっとも基本的なツールです。経済学的に正しいこととしても、覇権を握っている国(米国)が、覇権を取ろうとしている国(中国)の主張どおりに、みすみす自国通貨の地位低下を認めるわけがありません。たとえ中国が経済学的に合理的な主張を繰り返したところで、すぐにスーパーソブリン準備通貨といった超国家通貨が誕生することはないでしょう。
ただ、米国の経済が悪化している一方で、今後も高い成長が期待される中国との間では、今後もこのようなやり取りが続けられるでしょう。また、一般的な報道を通じて、我々も両者のやり取りを目にすることが多いでしょう。その場合、政治学的な視点だけで、両者のやり取りを考えるだけでなく、経済学的に考えることも、時には必要になる気がします。
村田雅志(むらた・まさし)
●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●
SDRって何?
●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●
IMFが創設した擬似的な通貨(資産の一種)
http://www.gci-klug.jp/klugview/2009/03/26/004959.php