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欧州経済担当部局をリストラする外務省の愚行
2009-03-19 10:30:00 | IISIAが読み解くマーケットと国内外情勢
複数の外務省筋によれば現在、外務省内で藪中三十二事務次官による大号令の下、欧州経済担当部局(経済局経済統合体課)を“リストラ”する案が急浮上し、波紋を呼んでいる。具体的には「経済統合体課」を廃止し、組織上はよりランクが低く、したがって所属人数も少ない「室」にした上で、経済局ではなく、欧州局の下に置く方向で検討がなされているのだという。
「欧州の経済を担当しているのだから、“欧州局”への改組で何ら問題は無いのではないか」一般にはそのような印象が持たれる可能性がある。しかし、外務省におけるこれまでの実務から言うと、欧州連合(EU)そして日欧経済を担当している経済統合体課が無くなることが甚大な負の影響を与えることは目に見えている。今回の改組案を主張する向きは、そもそも“政治”という側面で対欧州関係を仕切っている欧州局が“経済”をウォッチすれば、よりトータルな視点で外交を展開できるので適当ではないかという。だが、欧州局における実態を見てみると、国別担当はほとんどの場合、1か国あたり1名だ。とりわけハイシーズンともなれば国会議員ら「要人」が日欧間を多数往来するため、これら担当官たちは半ば“国営旅行社”よろしくこれら要人のケアで手いっぱいとなる。対EU関係についても同じなのであって、たとえ小規模の「室」が出来たところで対欧州経済関係を外務省が事実上放棄することになるのは目に見えているのである。
そもそも外務省内でこうした議論が沸き起こっている背景には、「地球温暖化問題など、新たな外交上の課題について対処する部局こそ、“格上げ”して課を新設すべきだという議論がある」(外務省筋)ためだという。もっともらしく聞こえる議論ではあるが、止まぬ金融メルトダウンの中で、今、欧州経済が持っている重大さを知っていれば、およそ賛成に値しない議論であることも確かなのである。
去る2月10日に開催されたEU財務相会合の場で、米国由来のリスク資産に基づく欧州系金融機関の抱える損失額は邦貨換算すると約2120兆円にも上っているとの極秘報告書が回付されたとのリーク情報がある。つまり金融メルトダウンの“主戦場”は今や欧州なのである。しかも、明日(19日)より2日間の日程でベルギー・ブリュッセルにて開催されるEU首脳会議では、米国が求めているような追加的景気対策は決定されず、対東欧支援などを巡って紛糾することが予測される展開となってきている。
こうした中、英国、さらには東欧各国では国家債務不履行(デフォルト)の可能性すらささやかれ始めているのであって、こうした経済面での大変動が欧州各国で一般国民の動揺を呼び、やがて「不満足の夏(summer of discontent)」がやってくるといった論調すら聞こえているのである。事実、英国の対国内情報工作機関であるMI5は今夏に向けて、国内主要都市に武装した部隊を派遣し、治安維持にあたる極秘計画を立てているとのリーク情報が流布され始めている(ザ・デイリー・エクスプレス参照)。金融メルトダウンによって欧州圏内では莫大な数の失業者が発生する可能性が高く、その結果、不満分子が爆発的に増える中で、国内の治安が極端に悪化することが見込まれているのだ。
当然、こうした事態は日本にも直接・間接的に重大な影響を与えることは必至だ。その際、重大な役割を果たすのが、欧州経済を担当する部局、すなわち経済統合体課なのである。現地における政治的暴動の発生ともなれば、「政治」をウォッチしている欧州局は多忙を極めることになる。ただでさえ少ない国別担当官は極限まで多忙になることは間違いなく、問題の本質であるはずの“金融メルトダウン”についての分析など、およそ手が回らなくなることは目に見えているのだ。その意味で、現在議論されている「経済統合体課廃止論」はマネーが織りなす世界の“潮目”を全く無視した暴論と言わざるを得ないだろう。
もっともこのように述べると、「そもそも財務省や経済産業省があるのだから、外務省内の一組織が無くなったところで大丈夫だろう」という反論も聞こえてくる。しかし、外務省はこれまで“外交一元化”を霞が関で盛んに主張してはこれら経済官庁と権限争いを果敢にも挑んできた経緯を持つ。しかも、たとえばG8サミットに際して、内閣総理大臣の個人代表(シェルパ)は外務省の経済担当外務審議官が務めている。ところがその配下にあるはずの欧州経済担当の陣容が心もとなくなるというのでは、日本の経済外交を取り仕切るはずの内閣総理大臣の執務能力にも大いに負の影響が出ることは間違いないのだ。
“木を見て森を見ず”ではないが、国民不在の組織改編論を推し進める一部の外務省高官たち。もはや彼らに“潮目”を見据えた国益の擁護を頼めないというのであれば、中堅・若手の外務官僚たちの中から勇気を出して「正論」を吐く勢力が現れることが望まれるばかりである。
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