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【米経済コラム】グリーンバーグ氏はイメルト氏に学べ−A・ウルナー(ブルームバーグ)
3月4日(ブルームバーグ):本人たちが自覚しているかどうかは別として、米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の誤った経営判断の犠牲者が世界中にあふれている。
AIGはこれまでになく多くの非従来型証券を、過去に例がないほどリスクに注意を払わずに販売し、それが世界中に飛び火する景気急降下を加速させる一因となった。
米国の納税者もAIGの犠牲者に加える必要があるだろう。事実上の破たん状態にあるAIGをてこ入れするため、総額1500億ドル(約 14兆8000億円)の当初の救済策に加えて、300億ドルの追加資本注入も予定されているのだから。
AIG救済策の立案者の1人であるバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長も、この事実にいら立っている。同議長は3日の米上院予算委員会の証言で、AIG救済に対して最も憤りを覚えると発言。「AIGは監督システムの巨大な抜け穴を悪用し、無数の無責任な投機を行った」と非難した。
それらの投機に失敗したAIGに支払い能力はなく、同社がその規制をすり抜けてきた政府の力をまさに頼りにすることになる。AIGの犠牲者の数は確かに多い。しかし、犠牲者と呼ばれる権利を主張しながら、明らかにその資格がない人物がいる。AIGのモーリス・グリーンバーグ元最高経営責任者(CEO)がその人だ。
後継者らを非難
数十年にわたりトップとして君臨し、AIGを巨大企業に成長させたグリーンバーグ氏は今週、同社を相手取って訴訟を起こした。同氏はCNBCのインタビューで、20億ドルの損失を被ったと主張し、訴訟で後任の経営陣らを非難した。
別の不透明な取引が原因で2005年にAIGを追われたグリーンバーグ氏は、後継者らに対する攻撃に多くの時間と労力を費やしてきた。彼らが能力を欠き、リスクの高い投資を拡大する一方で、念入りな審査を怠ったというのが同氏の主張だ。バランスシートの悪化を知りながら堅実な業績見通しを描くことで投資家、とりわけグリーンバーグ氏自身を欺いたというわけだ。
AIGが最高の格付けを擁する世界最大級の保険会社に上り詰めていく数十年間を同社で過ごした人物にとって、生き残りのため政府に救いを求める会社の姿を目にするのは、きっと心が痛むはずだ。また、株価が1年間で48ドルから43セントに急落するのを目の当たりにすれば、強烈な打撃を受けるのももっともだ。
しかし、事のいきさつはそれがすべてではない。新型デリバティブ(金融派生商品)の開発や販売を手掛けるAIGの「金融商品部門」はグリーンバーグ氏の許可を得て設立された。だが、同氏がそれについて語るのは極めてまれだ。ワシントン・ポスト紙によれば、同部門を立ち上げたハワード・ソーシン氏は、リスクを最小化するため持続的な評価分析や再審査の実施を主張していたが、グリーンバーグ氏によって更迭された。
ゼネラル再保険関連の総額5億ドルの取引に絡む事件で、共謀者の容疑を掛けられながら刑事訴追を免れた自らの立場に言及することも、グリーンバーグ氏にとって決して都合の良いことではない。グリーンバーグ時代を調査する監督当局が起こした民事訴訟の和解のため、AIGはこれまでに18億ドルの和解金支払いに同意している。
すがすがしく
グリーンバーグ氏はAIGの問題の責任が他の人々にあると批判している。同氏をめぐる一連の問題は、過去数カ月でAIGの経営が実質的に完全に破たんした事実と直接結び付くわけではないが、少なくとも同氏を道義的に優位な立場に立たせるものではない。逆に、危険な落とし穴に陥れるようなものだ。
グリーンバーグ氏は、米複合企業大手ゼネラル・エレクトリック(GE)のジェフリー・イメルトCEOに注意を払ってもいいのではないだろうか。イメルトCEOは今週公表された株主らにあてた書簡で、「われわれの願望である安全で信頼性のある成長企業でなくなったため、わが社の評判が傷ついてしまった。わたしはこの責任を負う」と述べた。
刑事事件で訴追を免れた共謀者のリストに載ることを回避したCEOが、ある程度の不手際を認めるのは、より無難な行動であるのは確かだ。グリーンバーグ氏が他人を公然と非難するのをしばらく慎み、問題の責任の一部が自分にもあることを認めたとすれば、すがすがしいと受け止められるのではなかろうか。(アン・ウルナー)
(アン・ウルナー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90003001&sid=aibpDn_A7GiA&refer=commentary