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経済学がたいへんだ。:内閣府、平成の不毛な成長を戦後最長の景気拡大と認定
(この統計結果は、経済学的快挙である。)
1月29日の新聞によると内閣府は、いざなぎを越える景気拡大期間を2千2年2月から2千7年10月までと発表した。
この発表の内容は、我々日本にとっては非常に不幸なものだが、しかし経済学的には画期的なものである。しかもハートランド理論の正しさを立証するものになっている。
この景気拡大の認定を私達日本人全体を含め、経済学者、政治家、評論家もすべて、如何に特別な出来事であったかを認識しなければならない。これを見逃すようでは経済を語る資格はない。
この景気拡大は本当のものではなく、デフレ下の経済成長であり、実際は経済が消耗していたに過ぎない。経済は縮小し、なお資金が減少し続けているのである。特に日本の全企業、全個人や政府の全資産や、全所得が縮小したのである。一部企業の高利益でも全体を引っくるめると沈んでいるのである。
(1)、生産曲線が右下がりであることを立証した成長。
第1、この戦後最長の景気と言われる景気拡大期間の最大の特異な特質は、名目雇用者報酬の伸びがマイナスになったことである。
第2に、名目GDP成長率が常に実質GDP成長率の下位に位置していたことである。
雇用者報酬の伸びがマイナスになったことは、この拡大期間の最初の報酬額より、最後の報酬額の方が下回ったのである。所得が成長の始まりより終わりの方が少なくなったのである。
ここに日本の低所得化が進んだことが立証されたのである。
世間ではマスコミの受け狙いから格差問題と言われているが本質は低所得化なのである。
これは経済理論上では生産曲線が右下がりになったことを意味する。生産量を増やすと所得が下がることを意味する曲線である。
私達は長く経済理論で生産曲線が右上がりである事を常識として、あるいは誰も疑う事のない前提として理論を組み立て、その理論を応用して、政策論や解説をしてきました。
しかし今ここに完全にもはや生産曲線が右上がりであるという常識は通用しなくなったのです。
ハートランド理論で指摘したようにデフレでは生産曲線が右下がりであることが実際に国の統計によって立証されたのです。
5年もの歳月の間、所得が下がったことは一時的な現象であると言うことはできません。。
これ以降、日本の現経済を語る場合、生産曲線が右上がりの前提で書かれた経済理論やその説明は、意味をなさないことになります。
2、働けど働けどその暮らし楽ならず。
さらにもう一つの重要な特質はこの期間中名目GDPが常に実質GDPを下回っていたことです。これは物を作っても作っても所得が生産量の増分以下の割合でしか所得が伸びないことを物語っています。
すなわち生産量の増大が所得の増大をもたらさないことを意味しているのである。
このことが理解しにくければ、逆の場合を考えればよいでしょう。。
名目GDPの成長率が、実質GDPの成長率より大きい場合、物の生産の増加以上に所得が増加することになる。これがインフレである。デフレはその逆の現象であるから、生産の増加が所得を低下させるのである。
それ故デフレでは、これまでの常識であった財政出動による生産者優遇策が景気を拡大させるという理論的根拠を失ったことを意味している。
所得線が45度かそれ以上の角度の場合、名目GDPが実質GDPを上回り、生産曲線は右上がりであるから、生産量を増大させれば、所得はそれ以上に伸びることになる。それ故生産者を優遇することは経済理論上当然のことである。
しかし所得線が45度以下の角度になると、名実GDPは逆転し、生産曲線は右下がりを描くため、生産者を優遇し生産を刺激することは、所得が減少するため、経済理論上当然やってはならないことになる。
低金利による生産者への過剰融資や、補助金政策、公共投資策が、所得の増大をもたらさず、借金の増大と、過剰な販売競争から低価格、過剰サービスを招き、付加価値に対する貨幣の評価減少させるのである。
結局それは経済を消耗させるだけであったことが分かったのである。
この成長と呼ぶ期間に、国の借金が増大し、名目GDPが世界で19番目に落ち込み、低所得者層が増えたことは、統計以上に実感として私達に刻印されている。
私はこのような現象を、デフレ下における消耗と呼び偽装成長と呼んできたが、平成の不毛成長というべきかもしれない。
3、地軸の低下。
なぜこのようなことが起こるのか。
このような現象が起こるのは、国民所得を形成する産業経済基盤において、資金量が生産量(生産能力)に比べて著しく少なくなっているため、所得線が、45度以下に角度が下がっているからです。貯蓄量以上に借金や負担が増えた事が原因です。(バブルの資産の大崩壊が大借金を作った。)
(http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninaorou/現在の日本の経済的位置関係 デフレの生産量増強システム、デフレのメカニズム等参照)
(http://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusi/デフレ・インフレの一般理論第3章デフレのメカニズム参照)
ここでデフレの定義をしておこう。
デフレの定義:デフレは生産量に比べて著しく資金量が減少したため、消費不足から、低価格競争が起こり、利潤が減少するため、資金が継続的に市場から減少するものである。
今回の内閣府の認定した景気拡大の統計結果から、ほぼこの定義が正しいといえるだろう。
4、低所得化の原因
このようなデフレにおいて、日本政府は低金利をとり、企業への補助金政策(構造改革補助、研究開発補助、雇用促進等)公共投資策などを取り、徹底して生産量を引き上げる方策を取ったのです。
その結果消費が少ないところへの生産物増が、返って低価格競争や過剰サービス競争を招き、利潤の低下から、低賃金を余儀無くされたのである。
政府の補助金による生産刺激は、所得増にならず反対に低賃金の過剰労働をもたらし、補助金は借金となって国民への負担を増大させたのである。
これが名目GDPが実質GDPの下位にきている原因である。
日本の低所得化の原因は、市場原理主義の追求や構造改革、自由化よりも、今まで常識的に行われてきた低金利、公共投資、補助金政策などの生産を刺激する政策を、積極的に行ったことの方が大きい。それがデフレを促進した最大の原因である。
消費者側に資金を入れる政策をしなかったことが、この低所得化を推進し、経済を不毛に消耗させ衰弱させたのである。
私達は働きに働き、そして貧乏になっているのです。働きに追いつく貧乏があるのがデフレなのです。我々は消耗し、同士討ちを繰り返しているのです。
5、輸出による(カモフラージュ)隠蔽、隠された内需の衰退。
この間日本経済の生産量が大きく増大したのは、外国向けの輸出品が好調であったからであった。内需の衰退が余計に外需寄与度を強めたと言えるだろう。
外需が絶好調であったにもかかわらず、所得が減少し続けたことは如何に内需の衰退が激しかったかを物語る物である。
内需の衰退は、大企業に輸出を加速させ、輸出品の増大は、国内の市場に回らないため国民所得を低下させる原因である。
また低所得化からくる消費者の商品への低価格志向は、商品の低価格化を促し、それが輸入品の拡大をもたらし、国内市場をさらに衰退させたのであった。
しかしこの期間中、政策担当者は、内需の不振にもかかわらず、統計上で、外需の所得を足し算し、内需の衰退に目をつぶり、好景気を装っていたのである。単に物をたくさん作っただけを、好景気と判断し自分たちの失敗でないように取り繕っていたのである。好景気は外国であり日本ではなかったのは誰もが知っていよう。それが、実感のない景気拡大の真の姿なのであった。
人によれば後2、3年輸出の好調が続けば日本経済は回復したというような人がいるが、それは間違いである。恐らく2、3年後に多くの内需産業は壊死し始めたであろう。なぜなら地軸が下がった経済では、いくら生産量を増やしても、所得が上昇しないからである。
今現在は、輸出産業もだめになった。このまま放っておけば、競争力旺盛な、しかも死ぬまで戦いをやめない日本の産業界は、果てしもなく生産物を増強し、しかも低価格で売りつくそうとするであろう。果てしない同士討ちの末、壊死することになる。
さてどうすればいいのであろうか。
6、デフレからの脱出
日本がデフレから逃れる方法は、生産者への優遇策や補助金政策ではなく、消費者への補助金政策、優遇策や還元策を取ることに尽きる。これは、所得線が45度以下に下がったデフレではこの角度を上昇させる方策が必要なのである。そのためには資金を市場に供給することが大事なのである。ガソリン税の低減、高速代金の低減、生活保護以下の所帯への助成、
さらに消費税を下げることがデフレのような消費不足の経済では最高の政策となる。
7、理論的根拠を失った財政出動による経済対策
この内閣府の発表した経済データは、これ以後同じように生産量を増強しても所得を伸ばすことはできないことを表している。逆に生産量増強は所得を減少させるのである。
それ故現在の生産者優遇の経済政策、低金利、過剰融資、生産者への補助金、公共投資などを行うことは、国民への犯罪であり即刻是正させなければならない。
現政権が取る財政出動はほとんどが、生産者優遇策である。高速代金の低減が評価できるが、その他の多くは、無意味な借金増大策に過ぎず、これまでもデフレにおいてなんら効果を上げなかったものである。
それを3段ロケットのようにしかも大規模に行うことは、長篠の戦いの武田騎馬軍団の、壊滅を思い出させる。3段の波状攻撃は騎馬軍団だけの壊滅の止まらず武田家の滅亡をもたらした。それは日本の滅亡を意味する。
野党、与党の有志、そして先進的な日本の国民は、この内閣府のデーターをもとに、経済政策を変えさせるか、倒閣をすべきである。その十分な理由が存在するのである。バブル崩壊以後とり続けた上げ潮政策や、成長戦略、IT戦略などすべて生産者への優遇策であるためことごとくデフレの壁に跳ね返されたのである。
今ここで再び同じ暴挙を繰り返させてはならない。今度は外需(という神風が吹かないため)が全く寄与しないため、悲惨な結末を迎えよう。野党、国民、与党有志、この暴挙を身を挺して阻まなければならない。
でなければ日本の未来はないであろう。
今やはっきりと理論だけでなく統計上にも結果が現れたのである。これ以上の根拠があろうか。
日本は今世界に先駆けてこの経済的不況を克服できる唯一の国である。しかし今のこの財政出動では最初に回復するのは困難であり、最後尾になるだろう。あるいはご破算(デフォルト)になろう。
一言主。
戦後最長の景気拡大2千2年2月より2千7年10月まで
実質GDP 名目雇用者報酬の伸び率
内閣府データ 2、1% ー0、1%
ニッセイ基礎研 2、1% ー0、7%