★阿修羅♪ > 国家破産61 > 274.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
エコナビ2009:CP・社債買い取り 窮地の日銀、禁じ手連発
<ECONOMIC NAVIGATOR>
日銀が22日、コマーシャルペーパー(CP)3兆円と社債の買い取りを決めたのは、急速に悪化する企業の資金繰りを支援する狙いだ。中央銀行が将来損失を被る恐れのあるCP・社債を買い取るのは本来「禁じ手」だが、急速な景気悪化で「異例」(白川方明(まさあき)日銀総裁)の策を連発せざるをえない状況に追い込まれた。さらに、日銀はこの日、09年度の成長率見通しを大幅なマイナス成長に下方修正しており、追加策を迫られるのは必至だ。【斉藤望、坂井隆之】
◇損失を被る恐れ
「ここまで政策金利が下がると、(資金供給)量への安心感を確保することが各国中央銀行の共通課題だ」。白川総裁は22日の会見で、金融政策が金利から「量」への転換を余儀なくされていることを指摘した。
昨年秋からの金融危機の深刻化で各国中央銀行は利下げを相次いで実施、昨年12月には日銀の政策金利が年0・1%、米連邦準備制度理事会(FRB)が事実上のゼロ金利に移行。今月に入り、欧州中央銀行(ECB)が年2・0%、英イングランド銀行が年1・5%と、ともに史上最低水準に引き下げた。
利下げはほぼ限界に達しているのに景気は悪化の一途で、当局は利下げ以外の策を検討せざるをえない。FRBは証券化商品の買い取りなど「量的緩和」に乗り出し、イングランド銀も500億ポンド(約6・5兆円)の資金枠で社債やCPを買い取る方針だ。日銀も買い取り対象を昨年12月に決めたCPのほか社債にも広げ、「未踏の領域」に踏み出した。
ただ、CPや社債を買い取れば、発行した企業が倒産すると日銀が損失を被る。CP買い取り額の3兆円は日銀の08年3月期の経常利益(6873億円)の4倍超。損失リスクをできるだけ回避するため、日銀はCPには一定の格付け、社債は残存期間が短期であることなどの条件を付けたが、22日の政策委員会・金融政策決定会合では須田美矢子審議委員(元学習院大教授)が社債買い取りに「時期尚早」と反対した。
白川総裁は「現時点でこれ以上の買い取りは考えていない」と述べたが、今後も景気悪化が続けば「長期の社債の買い取りもありうる」(大和総研の渡辺浩志エコノミスト)との指摘も出ている。
◇CP3兆円、市場残高の2割
日銀はこれまで金融機関の保有するCPや社債を一定期間後に売り戻す条件で買い取ってきたが、今回は完全な買い切りで金融機関に資金供給する。このため、金融機関は損失リスクを心配せずに企業が発行するCPや社債を購入できる。
日銀が買い取りを決めたCPの市場残高は約17兆円で3兆円の買い取りは2割近くを占める。償還まで1年以内の社債の市場残高は5兆〜6兆円で、このうち日銀は2割程度の買い取りを見込む。
ただ、CPや社債の発行は一部の優良企業に限られる。白川日銀総裁は「大企業の資金繰り改善で、下請けの中小企業にも結果としてお金が回るようになる」と説明するが懐疑的な見方も強い。UBS証券の後藤文人氏は「金融機関が貸し出しを厳しくしているのは融資先の倒産を恐れているため」と指摘。日銀によるCPなどの買い取りが中小企業の資金繰り改善につながらない可能性もある。
株価急落などで金融機関の経営体力は急低下し、融資余力も乏しくなっている。改正金融機能強化法に基づく公的資金による資本注入の申請が広がり、金融機関が融資に積極的になれるよう体力を回復できるかどうかが今後の焦点になる。
◇デフレ不況懸念−−マイナス成長
日銀が09年度の実質成長率見通しを戦後最悪となるマイナス2%まで引き下げたことは、日本経済が雪崩を打つように急速に悪化していることを改めて示した。需要の冷え込みで物価が下落する「デフレ不況」への懸念も今回の景気悪化局面で初めて言及した。
日銀は10年度の成長率はプラス1・5%と従来の1・7%から小幅な下方修正にとどめた。米国のオバマ新政権の大型景気対策などを踏まえ、「09年度後半以降、国際金融市場が落ち着きを取り戻し、海外経済が減速局面を脱するにつれ日本経済も持ち直す」とみているためだ。
だが、米欧では金融危機が再燃しており、金融不安が解消しない限り、実体経済には下押し圧力が働く。10年度の急回復シナリオに白川総裁も会見で「非常に不確実性が高いというのが偽らざる感想」と漏らし、「金融と実体経済の負の相乗作用が強まる可能性がある」と警戒感を示した。市場でも「10年度はせいぜい0%台の成長」(大手証券)との声も出ている。
==============
■ことば
◇CPと社債
企業が資金調達のため発行する債券。CPは2週間〜3カ月程度の短期の資金繰り、社債は償還まで最長10年と長期の資金繰りをまかなう。昨年9月のリーマン・ショック以降、信用不安が高まり、毎月13兆円規模だったCPの新規発行額は11月は9兆円に減少。月1兆円超あった社債発行額も3000億円台に低迷している。大企業でも発行を見合わせるケースが続出し、年度末に向け資金繰り難の恐れが出ていた。
毎日新聞 2009年1月23日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/biz/news/20090123ddm008020050000c.html