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JMM [Japan Mail Media]  不況の訪れとともに日本共産党への関心が高まる
http://www.asyura2.com/09/hasan61/msg/273.html
投稿者 愚民党 日時 2009 年 1 月 24 日 23:02:28: ogcGl0q1DMbpk
 

                              2009年1月19日発行
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JMM [Japan Mail Media]                 No.515 Monday Edition
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                        http://ryumurakami.jmm.co.jp/
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▼INDEX▼

 ■ 『村上龍、金融経済の専門家たちに聞く』

  ◆編集長から

  【Q:946】

   ◇回答(寄稿順)
    □真壁昭夫  :信州大学経済学部教授
    □山崎元   :経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員
    □水牛健太郎 :評論家、会社員
    □杉岡秋美  :生命保険関連会社勤務
    □三ツ谷誠  :三菱UFJ証券 投資銀行本部エグゼグティブディレクター
    □金井伸郎  :外資系運用会社 企画・営業部門勤務
    □津田栄   :経済評論家
    □菊地正俊  :メリルリンチ日本証券 ストラテジスト
□土居丈朗  :慶應義塾大学経済学部准教授


        ■■ 編集長から(寄稿家のみなさんへ)■■

 Q:946への回答ありがとうございました。19日(月)夜10時オンエアの
「カンブリア宮殿」のゲストは共産党委員長志位和夫氏です。志位氏への質問を考え
る上で、寄稿家のみなさんの回答は非常に参考になりました。編集長として心より感
謝いたします。

 ところで、わたしたちは、たとえば心身に障害を持つ人々、恵まれない人々、不公
平な社会による犠牲者やマイノリティの人々に対し、ごく自然に、可能なら支援した
いという気持ちを持っているものだと思います。志位氏にも聞いてみたのですが、そ
の動機の底にあるのはどういう精神の働きなのでしょうか。

 同情というのは自然ではありますが、モチベーションとしては弱く、失われやすい
ような気がします。事実、派遣切り・雇い止めにあっている人々への大手既成メディ
アの取材・報道は、日比谷派遣村をピークに激減しているそうです。視聴者の同情心
が薄れ、そろそろ飽きてきたと判断すれば、マスメディアは報道を減らし、いずれ止
めるでしょう。

 動機の底にあるものとして、「怒り」もあるかと思います。不公正さ、アンフェア
なことに対する怒りは、わたしが小説を書くおもな原動力にもなっています。ただ、
怒りはネガティブな感情なので、普遍化するのがむずかしいのかも知れません。同情
や怒りには限界があるために、国や地域によっては宗教や法制度による「規範」が必
要とされるのではないかと思います。キリスト教にはノーブレス・オブリージという
有名な教えがありますし、イスラムには「喜捨」という貧者救済のシステムがありま
す。わたしたちは、どういう規範で、弱者に対する支援を普遍化するのか、考えてみ
る価値のあることだと思っています。

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■次回の質問【Q:947】

 今週、いよいよオバマ新大統領が誕生します。オバマ氏は、就任後の景気刺激策で
最大400万人の雇用を創出するという見通しを語っています。
http://www.news24.jp/126751.html
 そんなことが可能なのでしょうか。

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                                  村上龍
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■ 村上龍、金融経済の専門家たちに聞く 
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 ■Q:946

 いわゆる派遣切りが相次ぎ、不況の訪れとともに日本共産党への関心が高まり、党
員も増えているようです。日本共産党の政策、基本的な方針をどう評価すればいいの
でしょうか

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※JMMで掲載された全ての意見・回答は各氏個人の意見であり、各氏所属の団体・
組織の意見・方針ではありません。
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 ■ 真壁昭夫  :信州大学経済学部教授

 現在のように、景気が急速に下落し、企業がリストラによって従業員を減らした
り、給与カットなどを行う状況になると、労働者の権利を擁護することを主要目的と
する政党に対する支持率が上昇することは理解できます。特に、相対的に立場の弱い
派遣社員の中には、突然の解雇などによって、生活の基盤を失うケースも出てきてい
ます。そうした人々が、自分たちの権利を守る為に、彼等の意見をバックアップして
くれる政党を支持するのは、当然の帰結といえるでしょう。

 わが国では、製造業などの派遣社員制度の歴史が相対的に浅いこともあり、派遣契
約やそれに関わる制度の整備が遅れているようです。弱い立場に置かれた派遣社員
は、時として、十分な事前のプレノーティスもなく、簡単に解雇されることもあると
いわれています。経済社会の中で相対的に弱い立場にある労働者が、自分たちの生活
を守るために政治的な組織を持つことは当然の権利です。

 わが国では、戦後の一時期、労働争議が多かったこともありましたが、その後、経
済が高度成長したこともあり、人々の労働運動や労働組合に対する関心が薄れ、労働
組合の組織率が低下傾向を辿ってきました。今回、急激な景気の落ち込みによる、派
遣社員を中心にした労働市場の問題の顕在化は、ある意味では、労働者と経営者の利
益対立が今までとは違った格好で鮮明化した事例と考えられます。

 元々、労働者が、自分たちの権利を主張するのは当然のことです。一方、労働者と
対峙する経営者が、彼等の主張を明確化することもまた当然の行為です。そうした相
互の主張が、一定の均衡点に収斂することによって相互の経済利得の分配が決まり、
それに基づいて効率的な経済活動が行われることが理想であるはずです。その意味で
は、労働者支援に積極的な政党に対する支持率が上がることは、相応の意義を持つこ
とだと考えます。

 本来、政党は支持母体の利益を代表する性格がありますから、労働者や労働組合を
その支持母体とする政党が、労働者の福音を主張するのは当然です。ただ、その主張
があまりに偏りすぎていたり、利益主張を重視するあまり非現実的な主張になってし
まうことが考えられます。非現実的な主張を繰り返すと、広範な人々からの支持を受
けることは難しくなり、政党の活動そのものにもマイナスになってしまいます。

 共産党の教義は、基本的にマルクス・レーニン主義と理解していますが、そのマル
クス・レーニン主義の教義に基づいて政治運営を行ってきた、ソ連や中国、東欧諸国
は、いずれも純粋な意味でのマルクス・レーニン主義の遂行を止めてしまっているよ
うに見えます。現在のロシアや中国には既に株式市場があり、多くの会社が株式を上
場しています。株式市場では、毎日、多くの取引が成立しています。

 そうした情景にはやや違和感を持ちます。というのは、マルクス・レーニン主義の
考え方では、会社の所有者である資本家は、労働者と対峙するカテゴリーであるはず
です。共産主義を信奉する国に、株式市場が存在すること自体、説明が難しいように
思います。

 以前、中国の友人が東京にやってきたとき、「共産主義を基本教義とする中国に、
何故、株式市場があるのですか?」と尋ねたことがありました。そのとき、彼女は笑
いながら、「中国は、世界で最も進んだ計画経済と資本主義経済を包摂する国です」
と言っていました。なかなか面白い指摘だと思います。

 彼女の言いたかったことは、「特定のイデオロギーに固執することなく、時代の要
請に従って現実的な経済運営が必要になる」ということだったように思います。ま
た、「かつて中国政府は、かなり非現実的な政策を打ち出したことがあり、現在では
それを反省している」とも言っていたことが印象に残っています。

                       信州大学経済学部教授:真壁昭夫

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 ■ 山崎元   :経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員

 私の個人的見解として、日本共産党は、政策を全面的に任せることは出来ないが、
政府を監視する有力な批判政党として存在意義のある政党だと思っています。当面、
政権交代の選択肢になることは期待できないとしても、民主党のように、一部であっ
ても、政策的に妥協をして自民党と連立するのではないかというような心配がなく、
独自の取材・調査力をもって政府・与党を監視してくれているという意味で、同党は
重要な役割を果たしています。私は、かつて、野党第一党があまりにも弱かった時
に、こうした批判力に期待して共産党の候補者に投票したことが何度かあります。

 また、同党のホームページで主な政策を読むと、障害者自立支援法に対する根本的
な批判と対案などは共産党の主張に大いに耳を傾ける価値があると思います。

 しかし、特に最近話題の「派遣切り」の問題などを含む雇用問題に関して、共産党
の「企業は非正規労働者も含めて雇用を維持すべきだ」という主張には、理屈として
納得しがたい点があります(主に、昨年12月4日付けの志位委員長の麻生首相に対
する「年の瀬を迎え雇用と中小企業を守る緊急対策を」と題する申し入れを元に考え
ています。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-12-05/2008120504_01_0.html

 派遣契約の中途解約や学生に対する内定取り消しなどは、法的条件を満たさない不
当な解雇として考えることが出来るのではないかという意見には首肯できる側面があ
りますが、派遣契約や有期の雇用契約の満了時点でこれを更新しないという場合に
は、現状では、企業側に雇用を打ち切る正当な権利があるのではないでしょうか。

 この点に関して、共産党は、大企業がこれまで儲けてきて巨額の内部留保を持って
いることや、人道の見地などから、非正規労働者の雇用を「企業の社会的責任」とし
て維持すべきだと言っています。

 しかし、企業の経済的な意思決定は、原則として、今後の需要見込みと利益の最大
化(あるいは、損失の最小化)の観点から行われるべきものであって、過去の利益や
内部留保は関係ありません。

 「企業の社会的責任」は、企業の株主や経営者、あるいは正社員の利益の追求とし
ばしば対立することがある曖昧な概念です。株式会社の経営者が、株主の利益にかな
うように会社を経営することは(経営者自身のプラスにもなるので)自然且つ当然の
ことであり、この際に、法的に解約可能な労働者から削減すると利益最大化が可能な
ら、そうすることは義務でもあります。個々のケースによっては、雇用を維持した方
が長期的に利益にとってプラスになるというケースもあるでしょうが、それを判断す
べきは株主の付託を受けた経営者であり、政府でも日本共産党でもありません。現状
では、契約の不当な中途打ち切りなどを除き、非正規雇用の労働者から企業が雇用を
調整すること自体は、日本が法治国家である以上、仕方がないのではないでしょうか。

 志位委員長は昨年12月18日付で日本経団連の御手洗会長に「非正規労働者の大
量解雇を中止・撤回し、大企業が社会的責任を果たすことを求める」という要望を
行っていますが
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-12-19/2008121903_01_0.html)、御手
洗氏のような人にこうした要望を行うことは「無駄」でしょう。「木によりて魚を求
む」という言葉を思い出します。

 この点に関しては、非正規労働者の権利を法的に強化すべきだという主張もあり得
るでしょうが、法的権利が強化された労働者(の労働)は企業の経営者から見てより
コストの高い労働力となるので、一方で私企業制を維持したまま、労働者の権利強化
を行うと、雇用機会が減少するというのが経済的には自然な帰結です。

 正社員の解雇があまりに難しいこともあって、前回の不況にあって企業経営者達が
「正社員に懲りた」ことが、近年の非正規雇用労働者の増加原因の一つになっていま
す。また、たとえば、製造業への派遣を禁止すると、全体としては、雇用機会が減少
する要因になるでしょう。

 私企業に利益追求を許すことと同時に遵法以上の社会的責任の完遂を求めることは
両立し難く、また、雇用の維持を強く義務づけることは雇用自体の減少をもたらしま
す。

 そもそも、個人に対するセーフティーネットを企業(大企業であっても)に求める
ことが、社会のデザインの問題として拙いのではないでしょうか。労働者だけがセー
フティーネットの対象ではありませんし(失敗した資本家や経営者もいるはずで
す)、企業の力によってセーフティーネットに差が出来るというのも不公平でしょう。

 日本共産党も含めて、われわれは、政府による、あくでも個人単位で公平なセーフ
ティーネットの構築を要求すべきではないでしょうか。企業は生産を担い、政府が福
祉に責任を持つという整理を早急に行うべきだと思います。日本共産党の雇用に関す
る二つの要望書を読むと、「企業ごとき」に過剰な期待(利益よりも雇用を維持を優
先する社会的責任)をすることを早く止めて、他の対策を講じることの緊急性・必要
性がクリアに分かります。

              経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員:山崎元
                 ( http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_hajime/ )

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 ■ 水牛健太郎 :評論家、会社員

 共産党は、「国民が主人公」というスローガンで労働者・一般消費者の立場を守る
と称し、最低賃金・失業給付の増大、社会保障の大幅な充実を掲げ、その財源として
は消費税増税ではなく、大企業・資産家への課税で賄うとします。国民の間の経済的
平等を重視する主張です。また、食糧自給率を向上させるためとして、農産物の価格
保障、農家の所得補償や関税の引き上げによる保護貿易といった、極めて保護主義的
な農業政策を掲げているのも特徴的です。経済政策以外には、外交に関して基本的に
ナショナリスティックであり、自主独立路線を掲げ、米軍基地の撤退を主張してきた
ことも大きなポイントです。(最近では現実路線ということか、即時撤退でなく、
「米軍の横暴勝手をやめさせる」という主張をしているようです)

 共産党は伝統ある組織政党であり、長年にわたって多くの知識人を引き付け、大部
数の「しんぶん赤旗」を発行して宣伝と情報収集に当たってきました。地方の市町村
にまで張り巡らされた組織で多くの献身的な党員が活動しています。こと組織力に関
して言えば、自民党をも凌駕する強力な存在です。そんなわけですので、主張する政
策はよく研究され、個々には説得力を感じることが少なくありません。正面から共産
党の主張に反論するのは誰にとってもかなり難しいと言ってもいいかもしれません。

 ただ、共産党が政権を取った場合の、これらの政策の現実性はどうなのかというこ
とは常に疑問に感じるところです。大企業・資産家への負担増にしても、共産党が政
権の座についただけでも、大企業や資産家に国外逃避の動きが出る可能性があります
し、急に負担を増やすと投資が冷え込むなど、経済の活力を削いでしまうおそれがあ
ります。大企業・資産家の負担増という結論は私も正しいと思いますが、拙速にやる
のだったらやらない方がよほどましです。飴と鞭を駆使しながら慎重に進めていくべ
き問題だと思っています。要するに、共産党の個々の政策は正しいようでも、経済を
扱う手つきというか、バランスが悪いと感じるのです。市場経済は生き物なので、実
はこのバランスというやつが全てだったりします。これまで巨額の補助金をつぎ込ん
できた結果、衰退してしまった日本の農業を、さらに保護主義的な政策で立て直すと
いうのも、実際に効果があるのかどうか。一層体質を弱めてしまうおそれがあると思
いま
す。

 政策の実現性について言えば、実は共産党自身もそれほどの自信があるわけではな
いのかもしれません。共産党は戦後長い間、日本社会における安全弁、弱者にとって
の駆け込み寺的な役割を果たしてきました。私は新聞記者時代、関東近県の農村地帯
に二年近く駐在していたことがありますが、その地域の市町村の議会には一〜二人共
産党の議員がいるのがパターンになっていました。それはこの地域の共産党支持者の
比率を表すものであると同時に、共産党支持者でない一般の住民にとっても、通常の
コンセンサス重視の方法では解決できない問題が起きた時のための備えという意味を
持っていました。有力者が関わった汚職や開発に絡む環境問題など、農村の人間関係
が壊れかねない厄介な問題は、共産党の議員に情報を流して議会などで追及させるこ
とで、一般住民間の深刻な不和を回避しつつ、一定の浄化を図るという社会的なメカ
ニズムが働いていました。地元行政と対立して他に手段がなくなった人が、共産党に
相談したという話も時折聞きました。「共産党は好きではないけど、ああいう人たち
も必要だ」といった意見を住民からよく聞いたものです。

 日本全体で見ても共産党はやはり同じような役割を担っています。政権の座につく
ことはまずないだろうという前提のもとで、社会に生じた問題をいち早く取り上げて
警鐘を鳴らす「うるさ型」としての役割です。与党や行政はそこから問題を汲み取
り、共産党の政策を一部取り入れて自分たちの政策とすることも少なくありません。
共産党自身もそうした立場に慣れ親しんでいるところがあります。簡単に政権が取れ
るとも考えていません。ですから、政策の短期的な実現性よりは、「うるさ型
」として、特定の問題に社会の注意を引き付けることを当面の目標として政策を組み
立てているふしがあります。

 現在、共産党は派遣切りの問題に大きな力を注いでいますが、労働者を保護する自
らの立場を訴える格好の問題であり、党勢拡大の戦略にもかなうとの判断からである
ことは確かです。共産党が主張するような非常に手厚い労働者の保護策がそのまま実
現することは考えにくいですし、実現した場合には、労働市場に何らかの歪みが生じ
る可能性もあります。しかし、共産党自身、自らの主張する保護策がそのまま実現す
るとは思っていないでしょうから、与党との違いを誇示するとともに、主張の一部で
も実現すればよいと考えて、作戦として強めに主張しているのではないでしょうか。

 自民・民主の二大政党がすくい切れない問題を捉える共産党の機能には実際、貴重
なものがあると思います。ただ、もし政権の担当を本気で目指すのであれば、改める
べき点が多いのも確です。政策の実現性もそうなのですが、組織の性格も問題です。

 私は、新聞記者時代に複数の共産党の関係者と情報交換のために頻繁に行き来して
いました。また現在の知人にも、かつて熱心に共産党の活動に携わった人もいます
し、共産党と対立する立場にいた人もいます。こうした人たちが異口同音に指摘する
のは、日本共産党が極めて官僚的な、風通しの悪い組織だということです。組織はピ
ラミッド型で、柔軟性がありません。外部に対しては一枚岩でなければならず、組織
内にどのような意見の違いがあり、議論が交わされているのか、外部からはほと
んどうかがい知ることができません。

 十五年ほど前に見た共産党の総選挙の旗揚げ集会は、そんな共産党の性格をうかが
わせるものでした。まずその集会が開かれた市の市会議員が一人ずつ登壇し、二〜三
分ずつ話しました。次に、市議会の共産党議員団長を務める最も格の高い共産党市議
が登壇し、五分話しました。次いで、その県の県議会の共産党議員が一人ずつ登壇
し、十分ずつ。そして県議会の共産党議員団長が二十分。そして最後に、当時書記局
長に就任したばかりの志位和夫氏がメインスピーカーとして登壇し、拍手喝采の中で
一時間三十分演説しました。要するに、演説の順番と長さが厳密にピラミッド型のヒ
エラルキーを表現しており、全く例外がありませんでした。志位氏の演説に当てられ
た時間の圧倒的な長さは、最高幹部の卓越した権威のあらわれであることは確かで
す。例えば自民党関係者の集会は良かれ悪しかれもっと大らかで、これほどカッチリ
枠が決まっていることはありません。志位氏は当時(現在も?)共産党の若きプリン
スとして組織の期待を一心に背負っていましたが、それにしても志位氏の一挙手一投
足にみなが反応し、ちょっとしたジョークにどっと笑うさまは、外部者には少し違和
感がありました。 

 世界中で共産党を名乗る組織のあり方はレーニンが規定した部分が大きいのです
が、限られた最高幹部で作る指導部が決定権限を一手に握り、上意下達で組織を動か
していきます。もともと反体制の秘密活動を効果的に行うための組織で、軍隊に酷似
しています。また、ドグマの解釈権も最高幹部が持っており、最高幹部は単に力があ
るだけでなく、哲学的・理論的にも正しいとされています。さらに、党全体が一般大
衆とは分離した前衛組織であるとされています。平たく言えば「正しい原理に目覚め
た特別の人たち」が作る組織で、大衆を指導する立場にあると考えられているわけで
す。

 日本共産党ももともとこのような原理に基づいて作られた組織であり、今もかなり
の部分でこうした性格を残しています。党内には組織のあり方を改め、いわゆる「党
内民主主義」を推進すべきだとの意見もあるようです。志位氏も個人的にはそうした
考え方の持ち主であるとも言われます。いずれにせよ、共産党の人たちにとっては、
このような党内での議論を外部に漏らすこと自体が重大な裏切りであるという発想が
あるので、自民党などと違い、党内での動きはよくわかりません。

 共産党が今後、日本社会で今以上の存在になり、さらには政権を担当することを
目指すのであれば、党内民主主義の確立と外部への透明性の確保は最低限の条件にな
るでしょう。

                         評論家、会社員:水牛健太郎

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 ■ 杉岡秋美  :生命保険関連会社勤務

 赤旗のホームページのビデオで、志位委員長が経団連に 派遣切りの問題で申し入
れをしている様子をみました。

 共産党のいつものように、善悪二元論に基づき敵の分かりやすい主張をしていま
す。志位委員長の、少しどもりながらの誠実な話しぶりも好感が持てます。この二つ
が、最近の人気の秘密なのだなと納得できました。

 ただ、経団連を標的にしたこと自体、また申し入れの内容も、共産党の伝統的なモ
ティーフ「資本家が国家権力と結託して、貧しい労働者階級を搾取している」に沿っ
たもので、今日ではトンチンカンなストーリーだと思わざるを得ませんでした。・・
・・このトンチンカンさは、かつて米国ブッシュ大統領が敵対国を悪の枢軸と決め付
けた時の明快さと同質なもので、教条主義に基づく過度の単純化なのだとおもいま
す。権力を持っていない分安心ですが。

 このストーリーにリアリティがあった時代は確かにあったと思いますが、現在の資
本主義はそこからさらに洗練の度合いを強めています。現実の資本主義は、共産党の
定める敵のイメージ(大企業+政府+アメリカ帝国主義)からは、するりと抜けてし
まうのではないかという危惧の念を持ちました。

 共産党は輝かしい歴史も実績もある抵抗勢力ですが、今後も有効に機能し続けるた
めに、このあたりは柔軟に修正主義に転じて欲しいとおもいます。

 今回、共産党は経団連に対し、まず最初に、派遣切りは人道に対する罪だと非難
し、派遣切りをやめろと要求しています。企業にとっては、派遣切りはただの経済行
為でも、それが労働者に深刻な結果を招きかねないのは事実ですが、企業にその道徳
的非難を浴びせるのは大仰に過ぎます。明確なルールを設定したうえで、法令に基づ
いて断罪するのならともかく、曖昧な人道を持ち出すのは乱暴なプロパガンダだと思
います。

 共産党の議論で違和感があるのは、個々の大企業は倫理的で人道的な判断をすべき
だ、あるいは出来ると思っていることです。これは、大企業を敵と定める共産党らし
くない、企業性善説に基づく過大評価だと思います。企業は、株主という経路を通じ
て社会のために効率的に利益を上げるように組織されているのであって、倫理判断を
するのにふさわしい組織ではありません。

 見上げるほど大きくて立派な大企業に、倫理的であることを求めたくなる気持ちも
分からないでもありませんが、聖人経営者を求めて企業のヒエラルキーを上っていっ
ても、良くなるのは背広のクオリティぐらいで、あとはあっけないほど普通の人が登
場するはすです。

 企業が利益と倫理を測りにかけたとき、前者が優先されるのを止めるべきではあり
ません。企業に倫理的に振舞わせたいのであれば、企業内の自発的倫理ではなく、法
律や法令に体現された強制力を伴う社会ルールに頼るのが合理的です。

 その意味では、共産党が申し入れの2番目に、派遣契約の中途停止や雇い止めの措
置は法令の拡大解釈だと言っているのは、傾聴に値するのではないかと思います。

 3番目に共産党は、「企業には内部留保があるのだから、それを取り崩して雇用を
維持しろ」という主張をしています。日曜日のテレビ討論会などでは、野党・リベラ
ル系に共通する意見ですが、これは企業の財務や法律に対する誤解に基づいているの
ではないかと思います。

 内部留保が、企業経営者の自由に使えるポケットであればそのような議論が成り立
ちますが、これは100%株主のもので、株主の承認を得ることなく一銭たりとも経
営者の勝手な倫理的判断のために使えるものはありません。

 もっとも、逆に言えば雇用の維持が、株主の利益にかなうのであれば、そのような
使い方をするのも許されますが、今回のような需要急減のケースにそれを株主に納得
してもらうのは困難でしょう。

 それでは「株主は何様だ!」と言いたい気持ちにもなりますが、腹黒い独占資本家
を想定するのは困難で、株主は外国籍の投資家も含めて投資信託であったり年金基
金、ヘッジファンドであったりしますが、小口の資金を集めた合同運用が大半です。

 申し入れの最後に志位委員長は、「雇用を維持しないとによってマクロ景気が悪く
なるので、雇用を維持すべきだ」といっています。これは一般論としては子供でも分
かる事実で、単なる要請ならある程度理解できます。しかし、政党が企業責任の一環
として申し入れるのはトンチンカンだと思います。

 個別企業にも、またそれを束ねる経団連といえども、マクロ経済をコントロールす
るだけの規模の総需要を作り出すだけの権能があるとは思えません。

 真面目にこのような要請する背後には「国家権力と結び付いた独占資本」の教条に
とらわれて、大企業と国家を一体とみなし分離して考えられない性癖があると推察し
ます。

 総需要をコントロールしたいのであれば、政府が政策を通じて行うのが、現代社会
の役割分担です。

 共産党の弱者の味方としての姿勢は評価でき、応援したい気持ちになりますが、派
遣問題に関しては、その古典的すぎる企業観、国家観が邪魔をして、単純な大企業悪
玉論に陥ってしまっているように思います。

 派遣の不幸を含めた雇用問題には、他の野党とも連携してセーフティーネットの拡
充に取り組んでほしいと思います。

                       生命保険関連会社勤務:杉岡秋美

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 ■ 三ツ谷誠  :三菱UFJ証券 投資銀行本部エグゼグティブディレクター

「社会という実体の見えない言葉」

 今回の設問に回答するにあたり、初めて共産党の綱領を読んでみました。綱領は大
きく五つのパートに分かれていて、1.戦前の日本社会と日本共産党、2.現在の日
本社会の特質、3.世界情勢―20世紀から21世紀へ、4.民主主義革命と民主連
合政府、5.社会主義・共産主義の社会をめざして、という構成になっています。

 私はそれぞれのパートを興味深く面白く読みました。個人的には正しい認識、正し
い主張として共感するものもたくさんあった気がします。また、この綱領は2004
年に採択されていることもあって、1991年のソ連崩壊についての総括がなされて
おり、そこではソ連が社会主義を標榜しながらレーニンの死後、スターリン以下の指
導部によって国民から自由と民主主義を奪った官僚主義・専制主義の国家だったと
し、二度とこのような過ちを繰り返してはならないと至る処で触れているのが印象的
でした。例えばそれはこんな感じです。

「ソ連とそれに従属してきた東ヨーロッパ諸国で1989〜1991年に起こった支
配体制の崩壊は、社会主義の失敗ではなく、社会主義の道から離れ去った覇権主義と
官僚主義・専制主義の破産であった。(中略)指導部が誤った道を進んだ結果、社会
の実態としては、社会主義と無縁な人間抑圧型の社会としてその解体を迎えた。」
(綱領、三、より抜粋)

 各種報道に拠れば、日本共産党は現在党員40万人、機関紙「赤旗」の読者は約2
00万人ということで、ここの処、急激に若者を中心に党員数が増加していると言わ
れますが、もしそれがこれも報道の通り『蟹工船』を読んだ若者を惹きつけているの
であれば、そんな若者には同時にジョージ・オーウェルの『動物農場』を読むことを
薦めます、と最初に皮肉っぽく書く積りだったのですが、さすがにその点について
は、自分たちの手で総括されていたという訳です。

 また、個人的に正しい認識と感じたのは、例えば、2.現在の日本社会の特質、の
中で、我が国が第二次大戦後、独立国としての地位を失い、アメリカの事実上の従属
国となっている、という指摘でした。これは、誰がどのように言い募っても、現実に
これだけ米軍の基地を国土に有し、日米安保条約の下でアメリカの軍事戦略の中に我
が国が含まれている現実から、寧ろそうではないと言うのが難しい話でしょう。詳し
くは実際の綱領にあたって戴くのが妥当だと思いますが、例えば、

「アメリカは、日本の軍事や外交に、依然として重要な支配力をもち、経済面ではつ
ねに大きな発言権を行使している。」(綱領、二、より抜粋)

 と言う文章も全くその通りだと感じます。

 しかし、一方で彼らが非難するアメリカこそが、彼らがさも日本民族が自分自身で
勝ち得たというように表記する、主権在民の民主政治や、彼らの先人が艱難を舐めな
がら戦い続けた寄生地主階級の解体を実現したのであり、そこを評価しないのはフェ
アではないでしょう。つまりアメリカは従属を強いる一方で、表のカードとして民主
主義の確立や個人の自由の保証を行ったのであり、日本共産党が戦前と異なり合法的
な組織として、こうして自由にアメリカの政策を批判できるのもアメリカのおかげな
のです(徳田球一ではありませんが、マッカーサー万歳ではないでしょうか)。

 また、彼らは綱領でそんなアメリカへの従属からの自立を強く主張しますが、残念
ながらその手順、過程については詳しい道筋の提示はありません。

 たぶん彼らは民主的な手続きを経て、アメリカの良心に訴求する一方、国際社会の
世論を味方にして、話し合いによって自立を果たそうと考えていると思われますが、
リアルな認識としてその考え方は甘いように感じます。身も蓋もないリアルな認識で
言えば、日本は戦争に敗れたために戦勝国であるアメリカに従属を強いられたので
あって、本当にこの従属から自立することを国民が選択するのであれば、それは極端
に言えばもう一度戦争を行うことを覚悟するくらいの話ではないか、と感じます。そ
の覚悟もなく本当に従属から自立できるかは疑問です。

 更に言えば、アメリカからの自立というような議論そのものが、<帝国>的な現実
の中で無意味だという考え方もありますし、よくされる議論で寧ろ日本は巧くやった
のだと考える議論もあるように感じます。もう一つ、かなり皮肉な話ではあります
が、アメリカからの自立というのは、石原慎太郎あたりの主張を彷彿させる部分もあ
り、実はここの処の共産党人気の底流にあるものはこの種の(無意識の)ナショナリ
ズムである可能性もある気がします。雨宮処凛が右翼から一挙にサヨク陣営に振れた
ような現象は、非常に示唆的です。

 こんな感じで、一点一点検証していくと、山ほど議論したい部分があるのですが
(アメリカとそれに従属・追随する大企業、独占資本という紋切り型の表現が至る処
に顔を出しますが、こう表現した瞬間、狙い撃った筈の弾丸が蜃気楼を抜けていって
しまうという気がしますが)、私がもっとも個人的に引っかかるのは、最後のパー
ト、社会主義・共産主義の社会をめざして、で示される、生産手段の社会化というく
だりです。それはこんな形で表現されていま
す。

 「社会主義的変革の中心は、主要な生産手段の所有・管理・運営を社会の手に移す
生産手段の社会化である」(綱領
、五、より抜粋)

 ここで示された社会とは一体誰のことでしょう?

 勿論、それは市民であるとか、我々であるとか、言葉としてなんとなくその雰囲気
を置き換えることのできる言葉は想像できますし、綱領で彼らは革命を標榜せず、現
段階では言論の自由や結社の自由を保証した民主的な民主連合政府の樹立を革命に変
えて標榜していることから、ここで用いている社会を、民主連合政府のような民主的
な勢力であると解釈することも可能でしょう。もっとも彼らは同じ綱領に、「国有
化」や「集団化」の看板で生産者を抑圧する官僚専制の体制を作り上げた旧ソ連の誤
りは、絶対に再現させてはならない、とも明記しています。とすれば、ここで用いた
社会は生産者なのでしょうか。

 しかし、それならばなぜ綱領という極めて重い文章に、文章を重んじる彼らが生産
者という言葉を使わないのは不思議です。とすればここは作文の技術として用意周到
に用意された言葉として社会があると解釈すべきなのでしょう。すると、そこには実
体がない、という印象がどうしても出てきます。

 私がこう拘るのは簡単で、当然ながら企業は誰か実体のあるものによって所有・管
理・運営されなければ機能しないからです。

 では、実際には現在、誰が企業を所有・管理・運営しているかと言えば、資本主義
国家においてそれは株主であり、株主が経営を委託した経営者であるという答えにな
ると思います。更に言えば、その株主とは、彼らが考えているような存在でも階級で
もなく、勿論、部分的にはまだそういった資本家や富豪が含まれてはいますが、大き
な流れとしては、それは機関投資家であり、その機関投資家の背後には我々自身の年
金が控えている、というのがもっとも正しい理解でしょう。

 その意味では、社会が我々自身の別称であるならば、既に我々=社会が生産手段を
所有・管理・運営しているのではないでしょうか。

 だから問題は、アメリカや独占資本ではなく、なぜ株主としての我々が、労働者と
しての我々を苦境に追いやってしまうのか、の解明であり、そうしないための仕組み
の構築ではないかと思うのです。

 その一つの試みとして、是非、検討してもらいたいのが、依然JMMでも触れた
「赤いファンド」になります。

 先ほど共産党員は40万人と書きました。党費は実収入の1%という話を昔、大学
で民生で活動していた友人に聞いた記憶があるのですが、もし仮に40万人が10万
円を拠出すれば、そこですぐに400億円のファンドが立ち上がります。また、革命
の大義のためにその一人ひとりが100万円を拠出すればその金額は4000億円に
膨れ上がります。

 その4000億円で、雇用に問題のある企業に対し、今度は株主としてモノを申す
ことこそ、重要ではないでしょうか(或いは時価総額4000億円の企業を買収して
まさに生産手段を所有してもいいかも知れません)。その動きに実際の年金基金の
ファンドマネージャーが呼応するのであれば、それが新しい民主主義の回路になるよ
うに感じます。

 前衛という考え方には(指導部という考え方にも)実は彼らが批判するスターリニ
ズムの影が宿っているので、そこは慎重にということではありますが、是非、日本共
産党には、「21世紀を、搾取も抑圧もない共同社会の建設に向かう人類史的な前進
の世紀とすることをめざし」(綱領、五、より抜粋)こういった考え方にも耳を傾け
てもらいたいと願います。

        三菱UFJ証券 投資銀行本部エグゼグティブディレクター:三ツ谷誠

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ■ 金井伸郎  :外資系運用会社 企画・営業部門勤務

 日本共産党(以下、共産党)への支持者層としては労働者層という一般的なイメー
ジがありますが、共産党系の労働組合は少数派に属する一方、大企業での多数派を占
める労働組合は共産党を支持していないため、実際の支持者層としては、公務員や中
小企業労働者、さらには一部の識者層でのシンパということになるのでしょう。派遣
労働者などの未組織労働者層は潜在的には共産党の支持者層になりうる存在ではある
ものの、現状では明確な支持者層という位置付けではありません。その中で、共産党
が非正規雇用問題を積極的に取り上げ、その動きが注目を集めています。

 雇用問題に関しては、最低賃金や雇用契約などの労働条件の規制緩和(労働者の権
利保護の縮小、雇用企業の裁量の拡大)によって、結果的には雇用機会の拡大を通じ
て、労働者の利益につながるとの考え方があります。これは、04年から製造業での
派遣労働導入が認められるなどの規制緩和が行なわれてきた裏づけとなる考え方で
す。ここで雇用問題を議論する上では、2つ重要な点を確認しておく必要があります。

 第一に、これまでの労働条件の規制緩和の導入の経緯からは、少なくとも規制緩和
が労働者の利益に寄与したとの積極的な証拠はない、という点です。

 まず、非正規雇用は新たな雇用機会を拡大するよりも、正規雇用を代替する形で導
入されてきた経緯があります。雇用者数全体では03年から07年までに3.5%増
加していますが、内訳としては正規雇用数が減少し、パート、派遣、契約社員等の非
正規雇用が増加する傾向が続いています。特に、この間に規制緩和が進んだ製造業
は、非正規雇用が拡大したにもかかわらず雇用者数はほぼ横這いでした。

 加えて、好景気にもかかわらず、給与総額が伸び悩んだことがさまざまな調査や統
計などによって示されています。非正規雇用の増加によって低賃金で働く労働者の割
合が拡大する一方、それに見合った雇用の拡大は実現せず、総体としての労働者の利
益はほとんど増えなかったことを示しているといえます。

 第二に、これまでの労働条件の規制緩和の導入が、企業と労働者間でのアンフェア
な取引実態を助長する結果となっているという点です。

 本来、同様な業務に従事するのであれば、雇用の保証条件が低い分だけ非正規雇用
者の給与は高いのが経済合理的といえます。(非正規雇用者の雇用契約解消の際のコ
スト負担が低いため、雇用者はいわばプットオプションの分だけ高い給与を払っても
十分合理的。)しかし、実際には、非正規雇用者は、正規雇用者よりも低い給与水準
に甘んじています。

 こうした傾向を助長しているのが、労働者派遣を利用する企業側の有利に派遣可能
期間の規制が緩和されていることです。労働者派遣は、本来は臨時的・一時的な労働
力需給調整の仕組みであるため、同一の業務について派遣可能期間を超える場合は、
雇用者は正規雇用を申し出るか、請負に転換することが求められています。一方で、
製造業については、当初1年間とされていた派遣可能期間は、07年から最長3年間
に延長されています。

 こうした労働条件の規制緩和、特に派遣労働の実情を受けて、さらに、共産党の志
位委員長が昨年年10月に衆院予算委員会での質問で、こうした最長3年間の派遣可
能期間の規制などもしり抜けとなっているなど、現状の制度運営についての問題点を
指摘されています。

 志位委員長が指摘したトヨタ車体での事例では、昼夜2直勤務のためのグループ間
で派遣労働者を一時的に片方のグループに移動させ、他方のグループで3ヶ月間正規
社員のみで勤務した実績を作り、3年間の派遣期間をクーリングオフしたとして、派
遣労働を継続させているというものでした。

 ちなみに、9月に厚生労働省職業安定局長から各都道府県労働局長宛に出された
「いわゆる『2009年問題』への対応について」では、単に3か月を超える期間が
経過したとし て新たに労働者派遣を継続することは労働者派遣法の趣旨に反する、
としています。このような場合には、基本的には、指揮命令が必要な場合は直接雇用
に、あるいは請負にすべきであるとしています。しかしながら、このような形式的な
配置換えによって、「派遣就業場所ごとの同一の業務」に適用となる派遣可能期間の
規制を回避する同様の工作は、少なからぬ企業で行なわれているようです。

 こうした事実を踏まえて、志位委員長は昨年12月に経営者団体への申し入れを行
なっています。その場では、あえてこうした一部企業の不適切な行為には言及せず、
非正規労働者の大量解雇の中止・撤回を要請しています。実際、企業で行なわれてい
る派遣可能期間の規制回避工作が無効であれば、企業には派遣労働者に直接雇用を申
し出る義務が生じており、派遣契約に基づいて解約することが出来ないケースも少な
くないはずです。共産党としては、独自の調査によって把握している一部企業の不適
切な行為を指摘して、より強力な申し入れも可能であったといえます。しかし、あく
まで、企業の不適切な行為があれば、これを指導するのは厚労省の専管事項との立場
を取られているようです。一つの見識ではありますが、共産党への期待感からします
と踏み込み不足の印象はぬぐえません。

 また、共産党として指摘していない重要な問題があります。

 製造業では、07年から派遣可能期間が最長3年間とされたことから、派遣労働の
導入が進んでいます。ここで、1年を超える派遣の受入可能期間を定める場合には、
過半数労働組合等からの意見聴取を行うことが必要、とされています。つまり、派遣
労働の導入の拡大の背景には、大企業の多数派労働組合の同意があったということで
す。こうした労働組合については、偽装請負や派遣可能期間の規制回避工作などの実
態も当然に認識していながら、黙認していたとされています。共産党としても、労働
界の自浄作用を促すためにも、こうした問題点を指摘すべきであったと思います。

 もちろん、こうした指摘に対しては、労働組合を支持母体とする民主党などから
は、支持母体である個々の労働組合の活動を指図する立場にはない、との反論はある
でしょう。むしろ、共産党に対しては、野党間共闘を妨げるとの批判や、独善的であ
るとの批判も向けられる可能性はあります。しかし、正義を掲げる政党であれば、独
善的との批判を受けることは不可避でありますし、独善を逃れられると考えること
は、むしろ傲慢に通じるものです。

 ところで、1月9日に行なわれた笠井議員による代表質問の中継録画を見てみまし
たが、自民党、特に麻生首相の真摯で誠意のある受け答えが印象的でした。

 特に、「企業の経済合理的な行動の結果とはいえ、必要以上の雇用調整により景気
悪化がより深刻化するなどの影響をもたらしている」との笠井議員の指摘に対して
は、麻生首相は「合成の誤謬」(正しい読み方をされていました)の意味を解説しつ
つ、賛同を示していました。

 また、「大手企業は潤沢な内部留保を活用して雇用を維持すべきではないか」との
指摘に対しても、麻生首相は、企業が株式市場の評価やキャッシュ・フローへの影響
を通じた資金繰り悪化を過度に懸念している状況を指摘しながらも、金融面での対応
も示唆しつつ企業への申し入れを行なっていく意向であるなど、やはり賛同を示して
いました。

 こうした麻生首相による共産党への丁寧な対応の背景には、派遣労働者の支持を受
けた共産党の現在の威光と同時に、選挙を控えた思惑がありそうです。共産党は次回
の衆議院選挙では、財政難のため全小選挙区での候補擁立の断念を表明しており、結
果として共産党支持票が民主党に流れることを自民党は危惧しているようです。その
ため、与党には、供託金制度の緩和によって共産党の候補擁立を促そうとの思惑が指
摘されています。

                外資系運用会社 企画・営業部門勤務:金井伸郎

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 ■ 津田栄   :経済評論家


 日本共産党が伸びている最大の理由は、日本の政治が機能劣化し、不全状態にある
からだといえます。すなわち、今起きている金融・経済危機において、自民党や公明
党の与党は、国民の声や期待に応えられなくなってきています。また、民主党や社民
党などの野党にしても、与党に反対するのみで、国民の声を完全に汲み取れていませ
ん。

 つまり、その背景にあるのは、バブル崩壊以降、中流意識を持った国民が大多数で
あった時代から、中流意識が崩壊して、非正規雇用が増えて賃金格差が明確になり、
経済格差、そして貧富の差が認識されるようになった時代に入って、政治の中心の表
舞台で議論し合っている主要な与野党は、経済状況が大きく変化しているにもかかわ
らず、80年代までの状況と同じく、企業経営者、あるいは正社員を中心とした連合
などの労働組合といった既得権益をもった古い支持層を代表して活動しているからだ
といえましょう。それも、支持層が少しずつこぼれて崩壊していっていることに気づ
いていながら、それに対処できる手段や方法、政策が見つからずにいます。

 そうした国民の経済的環境の変化に対応できない主要な与野党に対して、地方や中
小・零細企業のほか、解雇されたり、社員住宅を追われたりしている、3割を超えた
派遣・契約社員などの非正規労働者が持つ不満と不安を吸い上げるかのように、大企
業や経団連への抗議を行い、派遣労働者を守ろうとする行動を取っている日本共産党
に関心が集まり、支持を伸ばして入党者を増やしているのではないかと思います。
 
 しかし、日本共産党は、現状を批判する政党としては他の野党よりも攻撃的です
が、政策的な面では具体性に欠け、それを実現するための財源も見えないなかで、現
状を否定すればうまくいくかのように主張しています。それは、実際に国を統治し、
責任政党として政策を立案実施する中国共産党のように現実的な対応とは異なりま
す。そもそも、政治は国民が払う税金をどう配分するかを決める場だと思います。そ
の際公平性や公正性をできるだけ確保すべきですが、そのためにはコストがかかりま
す。その時のコストをどうやって負担し合うかという問題もあります。そういった視
点が、日本共産党には薄いように感じます。

 そして、そもそも、現状の問題を解決するには、否定するだけでなく、それを変え
るための創造的な政策が必要です。そして、それは法律と制度として実施すべきこと
といえます。しかも、それが効果的で、国民及び国の活力の維持発展につながるよう
なものでなければなりません。しかしながら、今回の派遣社員などの非正規労働者の
不満や不安を、日本共産党は、大企業のトヨタ自動車や日本経団連に派遣切りをや
め、解雇を中止・撤回するように直接申し込んだりするだけで、政策としてどうすべ
きかという仕組みを提案しているものではありません。

 確かに、非正規労働者の窮状を企業なり経営者団体に訴えるのは、行動として認め
ても、実際に効果あるものにならないことは確かです。なぜなら、企業は基本的に契
約や法律に則り、かつ経済合理的・企業経営的視点から決定しているからです。日本
共産党としては、そうした行動が、支持を拡大し、党員を増やすことで効果があるの
かもしれませんが、逆にそうした不満や不安を企業や経営者にぶつけて自己満足をし
ても何も解決にもならないために、最後は失望につながりかねません。むしろ、その
ような行動は、政治的には、非正規労働者のためと言いながら、企業や経営者への圧
力となって、経済活動を委縮させてしまうだけでなく、将来政権に就いた時には、恣
意的個別的に規制されるのではないかと、企業や経営者は恐れるかもしれません。

 もちろん、派遣切りや雇い止めなどで、企業が何らかの契約違反や法律違反を犯し
ているかもしれません。それを批判するのは構いませんが、最終的には司法や行政の
なかでそうした企業を判断していくべきでしょう。そして、政党として行うべきは、
そうした企業が出ないような制度を考えて国民から支持を取り付けることです。ある
いはそうした窮状にある非正規労働者をどう制度的に救うかという観点からセーフ
ティネットを構築すべきか、あるいはそもそも雇用を創出することが重要であって、
そのためにはどのような経済産業政策が必要なのかを検討し、またそのためのコスト
がいかにかかるかを考えて、国民に提示すべきでしょう。

 そして、国民に自分たちの政策がいかに優れているのかという観点から、政策競争
を、日本共産党が行うならば、国民の見る目は変わるのではないでしょうか。また、
資本主義が悪いからこうなるのだという教条主義的考えから脱し、制度を創出した
り、手直しするといかに国民に利益になるのかという視点で、社会主義を基本としな
がら資本主義を取り入れて妥協を図って国民の利益を目指そうとする現実的な政策を
採る中国共産党(必ずしもいいとは言いませんが)のように、もっと現実に即した政
策中心の姿勢が求められているといえましょう。

 最後に、日本共産党は、不況時において支持を拡大するチャンスがいつもきます
が、これまで大きく伸びてこなかったのは、主要な与野党が、その局面において、国
民の不満や不安を解消する政策を採ってきたからだといえましょう。しかし、今回の
不況時における日本共産党への関心の高さは、主要な与野党が、環境が激変したの
に、限られた既存の既得権益層を代弁するのみで、もはや国民の声に応えられなく
なったことの裏返しといえます。したがって、日本共産党も、日本の明るい将来ビジ
ョンにつながる建設的具体的な政策を提示することをせず、過去と同じように批判ば
かりして、一時しのぎでかつ長期的な展望がないような政策を示しているだけであれ
ば、いずれ国民の声に応えられず、国民の支持を失うことになりましょう。

                             経済評論家:津田栄
                                      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ■ 菊地正俊  :メリルリンチ日本証券 ストラテジスト

 日頃から「蟹工船」ブームや、共産党に入党する若者の増加などが報道されていま
すが、週刊朝日1月23日号によると、共産党は次期衆院選挙で、議席数を現在の9
から11−14に増加させると予想されています。ただ、民主党が大勝ちするという
予想なので、共産党を与党に招かなくても、民主党+社民党+国民新党で、過半数に達
するという予想です。共産党と聞くと、未だに共産主義の実現を信じているのかとい
う素朴な疑問が生じます。サブプライム問題で資本主義の様々な問題点が露呈しまし
たが、中国やロシアも市場主義経済に移行した中で、共産主義への移行は非現実的に
思えます。共産党の志位和夫委員長は著書「決定的場面と日本共産党」の中で、「ソ
連共産党は、社会主義の立場とは全く無縁の大国主義・覇権主義だった」「21世紀
を展望して、人類の生存と発展を長期の目で考えたら、新しい社会主義に行き着く」
と「新しい社会主義」を目指す考えを述べられています。

 共産党は11月に出した「緊急経済提言」で、「投機マネーを異常に膨張させ、世
界有数の巨大金融機関が先頭に立って、ばくちのような投機=マネーゲームに狂奔す
るカジノ資本主義が破綻した。ばくち経済破綻のツケを国民に回すことは許さない」
と述べています。確かに、金融規制緩和の行き過ぎが、サブプライム問題を引き起こ
したのは事実ですが、投機と投資マネーを区別するのは困難ですし、よく批判される
市場原理主義という言葉も定義を正確にすべきと思います。市場メカニズムが働かな
い資本主義は機能しないからです。世界中で、金融機関への公的資金注入は結局、税
金に頼らざるを得ません。

 共産党の「緊急経済提言」は続いて、「大企業の身勝手なリストラを止めさせる」
「大企業が雇用への社会的責任を放棄し、失業の引き金を引くのは許されない」と述
べています。確かに、日本経団連に属するような大企業は、派遣の契約解除に関し
て、もっと社会的な批判を浴びないような巧いやり方があったのではないかと思いま
す。雇用契約の詳細は外部からはわかりにくいですが、派遣の途中契約解除ではな
く、契約満了まで待った方がよかったのではと思います。ただ、大企業といえども赤
字が続けば、倒産リスクが高まりますので、雇用のセーフティネットの提供は、企業
ではなく政府の役目だと思います。

 共産党の政策提言で、表面的に賛成なのは「外需だのみから内需主導へ」や「農林
漁業の復興・地域経済の再生を」ですが、自民党も全く同じ政策を掲げてきました
が、成果があがりませんでした。共産党は、安定した雇用を保証するルールを作る、
全国一律の最低賃金制度を作り、時給を1000円以上に引き上げると述べています
が、時給600円が多い地方で実施すれば、雇用数が一気に減る可能性が高いと思い
ます。民間企業に雇用を義務づけることはできませんので、契約解除がしにくけれ
ば、採用を手控える動きが強まると思います。農業政策は、農産物の価格保障・所得
補償を考えているようですが、この点は民主党の政策に似ています。食料主権を保障
する貿易ルールの追及とあるのは、保護貿易にみえます。大恐慌のように各国が保護
貿易に走れば、世界不況が悪化するというのが経験則です。日本は資源が乏しい貿易
立国ですので、若者も、農業者も、自らのスキルや生産性を上げて、賃金や所得を上
げるしかないと思います。共産党の主張は、低所得層などニッチ層をターゲットとす
る政治戦略としては納得いくものですが、ユニバーサル性に欠けると思います。

               メリルリンチ日本証券 ストラテジスト:菊地正俊

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ■ 土居丈朗  :慶應義塾大学経済学部准教授

 日本共産党の基本的な方針は、天皇制や自衛隊に対する姿勢をかつてに比べて大き
く変えましたが、労働者をめぐる政策に対する姿勢は、良しにつけ悪しきにつけ、以
前とあまり変わっていないように思われます。日本共産党は、科学的社会主義を標榜
し、その基礎をなす剰余価値理論がその背景にあります。私はマルクス主義者ではあ
りませんから、説明する資格はないかもしれませんが、剰余価値理論は、労働を次の
ように捉えています。労働には、労働者の生活に必要とする部分である必要労働と、
それを超える剰余労働から成るとしています。そして、労働に対する対価(賃金)と
して、必要労働に対する部分しか支払われず、剰余労働によって生み出された剰余
価値は、労働への対価としては支払わず、資本が利潤として「搾取」される、との経
済観です。

 確かに、蟹工船のブームや日本共産党への関心は、剰余価値理論的な見方、つまり
労働者が「搾取」されているとの認識の反映とも見えます。しかし、私が思うに、剰
余価値説的な見方は労働者側の被害妄想に似たもので、現代資本主義の下での人間の
営みとして不適当な認識だと考えます。より端的に言えば、労働に対する対価は、労
働だけによって生み出されるものではなく、労働と資本との協働によって生み出され
るものです。資本の投下があって初めて労働者も就業機会が与えられ、その成果であ
る付加価値を適切に資本と労働との間で分かち合う、という姿勢が必要です(もちろ
ん、それと同時に、資本の側も労働者が働いて初めて資本投下による成果を得る機会
が生まれるということでもあります)。さらに言えば、労働側は賃金が得られるのは
資本の提供によるものとして感謝し、資本側も同様に労働側に感謝して、互いの立場
を理解しあう姿勢が求められます。それにもかかわず、極論すれば、一生懸命働いて
いるのにわずかしか賃金がもらえない、ないしは資本側の論理で派遣切りなど解雇や
賃下げの憂き目に遭う、というのは、労働だけで物事の全てがなされているかのよう
な見方とも言えます。剰余価値理論に基づく経済観は、現代資本主義に全くそぐわな
いと私は考えます。資本が受け取る対価は、剰余価値理論ではなく、近代経済学が提
起している理論でほぼ説明できることは、世界的に見ても先進国経済における多くの
計量経済学的分析によって明らかです。

 また、剰余価値理論的な見方には、労働者と資本家の二分法的な発想も見え隠れし
ています。しかし、実際の家計は、労働も供給しますが、貯金もしています。長寿化
が進むにつれ、人々はより多く貯蓄をする必要も出てきます。そう考えれば、実際の
家計は、単純な「労働者」というだけの立場にとどまらず、貯蓄を抱えそれをどう運
用するかという「資本家」の立場をもあわせ持つのです。別の言い方をすれば、家計
は、賃金という労働所得だけでなく、利子所得や配当所得や資産の譲渡所得など資本
所得も得ています。そう見れば、剰余価値理論に根ざした見方で、労働者と資本家の
二分法的な発想では、真に家計のためになる政策を講じる政党にはなりえないといえ
ます(ひょっとすると、貯蓄を全く持たない非正規労働者の立場を代弁することはで
きるかもしれませんが…)。

 日本共産党は、その基本的な姿勢の背景にある、剰余価値理論(的な見方)を、現
代資本主義の下での経済の動きとどう適合させてゆくかが、今後問われるのではない
でしょうか。

 さらに、もう1つの近年の変化と、日本共産党の運動方針とが適合していないので
はないかと思うところは、若年労働者の個人主義的傾向です。これは非正規労働者だ
けではありませんが、私が大学で学生を教えていて思うのは、良しにつけ悪しきにつ
け、年を追うごとに学生が個人主義的な傾向を強めているのではないかということで
す。今と比べれば、学園紛争華やかかりし頃は、日本共産党の学生への影響も今より
はるかにありましたが、それはどちらかといえば集団を形成することを通じて及んで
いたと思いますが、今ではもうそうした勢いはありません。大学の門によくあった立
看板も過去のものとなりました。どういう思想に染まるかは別として、若者をオルグ
して活動するという形態は、今や若者の志向とは違っているように思います。

 今般の日本共産党への関心の高まりが、以前に比べてより個人主義的になったと思
われる若年労働者が、集団的なものでなく、個々の関心に基づいた動きであったとす
れば、それは一過性のブームに終わり、(いずれ訪れるであろう)雇用環境の改善と
ともに退潮するかもしれません。

                    慶應義塾大学経済学部准教授:土居丈朗
                  <http://www.econ.keio.ac.jp/staff/tdoi/>

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ●○○JMMホームページにて、過去のすべてのアーカイブが見られます。○○●
          ( http://ryumurakami.jmm.co.jp/ )
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
JMM [Japan Mail Media]                 No.515 Monday Edition
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【発行】  有限会社 村上龍事務所
【編集】  村上龍
【発行部数】128,653部
【WEB】   ( http://ryumurakami.jmm.co.jp/ )
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