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● ニュースと感想 (1月19日c)
「労働者と株主」について。
労働者と株主のどちらを優先するべきか? ── こういう質問がなされることがある。
特に、企業経営者向けに、「どちらを優先?」という質問がなされることがある。
「雇用に手を付けるのは、経営者が責任を取ってやめたあとだ」(今井敬・元 新日鉄社長。)
「グローバリズムのなかで株主重視のこそが経営者の責任だ」(宮内義彦・オリックス社長)
この二人は、対立する意見を出したということで、今井・宮内論争というのが起こったという。また、二人とも、実際に有言実行した。前者は徹底的に雇用を守り、後者はあっさりと「新規採用・解雇」を繰り返した。前者は会社利益を二の次にして、後者は会社利益を最優先にした。日本の経済界では、後者の支持者が多かったという。(以上、朝日新聞・夕刊・コラム「窓」2009-01-18 )
また、一般人(株主)へのアンケートがなされることもある。
→ 投資先の企業は株主の利益と労働者の利益のどちらを優先して欲しいですか?
これは、株主限定だが、世間の一部の考え方を知るには役立つ。
さて。私なりコメントを加えておこう。
(1) マクロ経済分析
第1に、現状を分析すると、後者の支持者の方が多いようだ。特に、決定権を握る経営者は、後者が多い。
で、その結果、どうなったか? 企業利益の優先が進んだせいで、社会全体では不況が深刻化した。その理由は、マクロ的に明らかで、「総需要の低下」が起こったからだ。企業は利益を蓄積して、それが銀行預金の形で退蔵されたから、総需要はどんどん低下していった。そのせいで、企業は全体として、「自分で自分の首を絞める」という結果になった。自分の利益を増やそうとすればするほど、日本全体の利益を減らして、その結果、自分もまた利益を減らすことになった。……エゴイストの顛末。
こういう愚かさが、現状だ。
(2) 論理分析
第2に、もっと本質を考えよう。すると、ここでは「そもそも問題が間違っていた」ということがわかる。(これは結論。以下では理由を述べる。)
実は、そもそも「労働者か/企業か」という二者対立が間違っている。それはいわば、「男と女のどちらが大切か」というような問題だ。正解は「どちらも大切であり、一方だけが大切だということはない」である。経済もまた同じ。労働者と企業はともに必要であり、助け合う関係だ。そのどちらもが必要だ。なのに、「どちらか?」という質問を立てるとしたら、その質問自体が間違っている。ここで馬鹿げた答えを出す連中に、「男と女のどちらが大切か」という質問を出してみるといい。 (^^);
では、正しい質問は? こうだ。
「存在と利益のどちらが大切か?」
これに対する正解は、
「利益よりも存在が大切だ。利益の減少は我慢できるが、存在そのものを消すことはできない」
ということだ。したがって、正しい解答は、次のようになる。
1. 会社としては、企業の存在基盤が最優先となる。労働者の利益のために賃上げをしたり、不可能なほど雇用を維持したりして、会社そのものを崩壊させてしまっては、最悪だ。部分解雇ならば他の人々は雇用されるのに、倒産してしまっては全員が解雇される。それでは元も子もない。
2. 企業の存在基盤が保たれたならば、労働者の生活基盤の維持が大切だ。つまり、雇用維持が大切だ。企業が黒字(または短期的な赤字)を出すだけならば、労働者の雇用を維持するべきだ。会社というのは、人間のためにあるのであって、会社(の利益)のために人間があるのではない。「人を傷つけても人を死なせても自分の富を1円でも増やしたい」と思うエゴイストでなければ、そのことは誰にでもわかるはずだ。
3. 企業の存在基盤も、労働者の生活基盤も、ともに保たれたならば、企業の利益の最大化が大切だ。(ただし、そこでは、「労働者のスト権」が認められていることが前提となる。企業が勝手なことをすれば労働者がストをして企業の利益を減らす、という権利。……これがなければ、ただの奴隷制にすぎない。奴隷制の下で「利益の最大化」を唱えるのは、馬鹿げている。)
以上のように考えれば、次のように言える。
「好況下でスト権が保たれている限りは、宮内ふうの見解は正当である」
「企業経営が危機に瀕した場合には、できる限り、今井ふうの見解を取るべきだ。ただし、できる限り、であるが」
好況下であれば、「企業の利益」を優先するのはいい。しかし、不況下で従業員の生活が脅かされているときに、赤字でもないのに「黒字を少しでも増やすため」という理由で、従業員の生活基盤を脅かすのは、もはや守銭奴にすぎない。ただの悪魔的なエゴイストだ。「自分の金儲けのためには、他人をいくら死なせても構わない」という悪魔的思考。
そして、その悪魔的思考を正当化するために、「だって好況期には利益の最大化が正当だっただろ」というふうに考える。一種の屁理屈。論理ペテン。詐欺師の論理。
以上のように考えることでば、最初の質問には答えられたことになる。
[ 付記 ]
基本原理を考えれば、
「利益の最大化が、経済の最適化をもたらす」
という古典派の発想(「神の見えざる手」)が、根本的に狂っているのだ。むしろ、次のように考えるべきだ。
「利益よりも、存在が大切だ」
このことを忘れると、
「利益だけがあって、存在がなくなる」
というハメになる。まるで「笑いだけがあって猫が消えた」という、不思議の国のアリスみたいに。
その結果は? たぶん、こうだ。
「企業は利益の最大化をめざして、賃金の徹底的な切り下げをした。そのせいで、社会には企業の製品を買ってくれる客が一人もいなくなり、企業はすべて倒産した」
冗談みたいだが、冗談ではない。生物の世界では、こういうことはときどきある。
「肉食獣が獲物を食い尽くして、当の肉食獣が絶滅する」
「病原菌が宿主を殺ししすぎて、病原菌そのものが絶滅する」
こういうことは、ときどき起こったようだ。実際、歴史上では、非常に多くの種が絶滅している。
現代の企業も、そういう絶滅種の一種なのかも。「労働者を食いつぶして、企業そのものが絶滅する」……お馬鹿な国である日本で起こった歴史的事実、というふうに歴史の教科書に書かれる日が来るかも。 (^^);
● ニュースと感想 (1月19日b)
「簡保の宿の一括売却」について。
政府が簡保の宿をオリックスに一括売却するという。(各紙報道。)
鳩山邦夫総務相が異を立てたというので新聞ダネになったが、それまで走らなかった。いつのまにかこそこそとやっていたらしい。
まったく、オリックスの宮内というのは、とんでもない人物である。彼の考えていることは、「自社を効率化して利益を増やす」ということではなくて、「他人や社会の富を、できるだけ食い物にしてやろう」という泥棒的な発想だ。
政府の財産である「簡保」の資産を、破格の安値で一括売却を受けるというのは、莫大な額になる国民資産を、捨て値でちょうだいしよう、という魂胆だ。こいつはウルトラ級の泥棒だ。(同じことは、ロシアの大富豪がやった。国民の財産である石油などを、破格の安値で譲り受けて、あっという間に超巨額の試算を私物化した。……宮内はそれを狙っている。)
宮内の方法は? 次の3点だ。
1. 自分自身が「そうしろ」と政府内部で主張する。「簡保の財産を一括売却して政府の赤字を減らせ」と立案する。(自作自演のため)
2. 「自分が立案したんだから、他人は手を出すなよ」と経団連でにらみを利かせる。(マフィアの方法。対抗する入札者にドスを利かせて引き下がらせる。)
3. わざわざ経済が不況のときに実行して、ライバルに手を出させないようにする。
このうち、最後の点が重要だ。政府自身が倒産しかかっているのではないのだから、政府はいくらでも待てる。とすれば、経済が好況になってから簡保を売却するのが自然だろう。しかし、好況になってからでは、旅行関連の他者がライバルとなって、入札して、入札価格が上がる。それでは儲からない。そこで、不況のさなかで、金余りで投資先がないときに、金融産業であるオリックスが投資のつもりで買収するわけだ。その意味は? 簡保の業績を改善することではない。数年後に一括して売り飛ばすためだ。そうすれば、自分では何もしないで、巨額の利益を懐に入れることができる。
要するに、「民営化で効率改善」というのは、ただのお題目で、嘘八百。オリックスには簡保を効率化するノウハウなどはない。単に転売して差益を得ることだけが目的だ。そのために、数年間だけ保持できるような、金融資産さえあればいい。つまり、金融資産の運用先として、簡保の宿を使うだけだ。
こういう輩が、「民営化で効率改善」と唱えて、「構造改革」を推進して、政府を好き勝手に弄んだ。(宮内は構造改革のときの議長だった。)
オリックスの宮内というのがどういう人物であるかは、はっきりと理解しておいた方がいい。そして、こういう輩に好き勝手されてるのが、日本という国だ。
[ 付記 ]
「赤字だから他に引き受け手がない」という理屈を言う連中がいるが、全然、理屈になっていない。それを言い出したら、トヨタの全株式をタダでもらってもいいことになるだろう。馬鹿げた論理。
仮に政府がトヨタの大株主になっていたとしたら、宮内が言い出すはずだ。「赤字のトヨタの株を全部おれに寄越せ。どうせ赤字会社の引き受け手なんかいないから、俺様が引き取ってやる。株を全部まとめて、百円で買ってやる。赤字会社を引き取ってやるんだから、ありがたく思え」と。
http://www005.upp.so-net.ne.jp/greentree/koizumi/