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【コラム】賭けに敗れたバンク・オブ・アメリカの誤算−D・ライリー
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90003017&sid=aEz0xvdBrnOA&refer=jp_japan
1月16日(ブルームバーグ):米銀バンク・オブ・アメリカ(BOA)のケネス・ルイス最高経営責任者(CEO)は、のるかそるかの賭けに出た。そして敗れ、そのツケは米納税者が払うことになった。
ルイス氏は辞任すべきだろう。少なくとも、会長職を兼任している同氏はCEOか会長のいずれかの職を辞すことで、責任を示すべきだ。
メリルリンチを買ったという1つの負けのためだけではない。間違いがそれ1つだけだったなら許されただろう。しかしそれだけではなかった。金融危機が始まって以来、ルイス氏は再三、金融システムに吹き荒れる嵐の規模と深刻さの度合いを見誤った。これによって、ルイス氏は虎の子の資本を使い果たした。
ルイス氏がもう少し慎重だったなら、BOAは政府の力を借りずにメリル買収を成し遂げられたかもしれない。あるいは、そもそもメリル買収などに手を出さなかったかもしれない。
しかし今やBOAは破滅の淵(ふち)をのぞき込んでいる。株価は15日に18%下落した。メリルの損失が予想よりも大きかったため、政府支援なしには買収を完了できないと昨年12月に政府に伝えていたことが明らかになったためだ。政府は追加資本注入や一部資産の損失肩代わりを余儀なくされることになる。
ある意味で、ルイス氏の失敗は分かりやすい。物事というのは結局、多くの人たちが「今回は前とは違う」と言っている時には、本当に違う場合がほとんどだ。しかし、ルイス氏は、今回の危機が過去のリセッション(景気後退)と同じであるかのように行動した。かつては磐石だったBOAのバランスシートをてこに、同業他社の苦境に乗じようとした。このような積極的な動きは、景気の暗雲が晴れた時には企業に優位性をもたらす。BOAの前身の銀行は 1930年代に大恐慌で倒れた銀行を買収して力を付けた。
今回は違った
問題は「今回は違った」ことだ。仮に、景気が突然に今の急降下から脱したとしても、金融システムと銀行事業モデルは恒久的に変わってしまった。1年後の姿さえ分からない。
ルイス氏はこの点に十分な注意を払わなかった。同氏は昨年1月、倒れかけた住宅金融大手カントリーワイド・ファイナンシャル買収で合意し、同社をほぼ確実視されていた破たんから救った。その後、春の間に景気と住宅市場、銀行業界の情勢が悪化しても、合意の撤回や条件再交渉をしようとはしなかった。
結局、BOAは同年7月にカントリーワイド買収を完了。株式で25億ドル(約2260億円)を支払ったが、BOAは後にカントリーワイドの純資産額はわずか1億ドルだったことを明らかにした。しかも、買収はカントリーワイドの損失の少なくとも一部はBOAに及ばないような形になっていたのに、ルイス氏は夏に方針転換してカントリーワイドの債務を保証し、同社のバランスシートに隠れているかもしれないリスクにBOAをさらした。
ルイス氏はまた、他の銀行が減配する中で2008年の最初の9カ月間、配当を続けた。10月にやっと四半期配当を半減させると発表したが、遅過ぎだったし、もっと素早くそしてもっと以前に資本を保全すべきだった。
メリルリンチ
そして9月、ルイス氏は再び攻勢に出た。リーマン・ブラザーズ・ホールディングスが破産申請する傍らで、メリルリンチ買収で合意したのだ。大胆な行動であり、ある意味で戦略的に意味ある行動だった。しかし、メリルの損失拡大にBOAが縛られることになった。
さらに、ルイス氏は08年に2回、中国建設銀行株を買い増した。2回目の11月には、70億ドルを支払った。
ルイス氏は幾つかの逆方向の動きもしている。昨年10月に100億ドルを増資したほか、今年1月には建設銀株28億ドル相当を売却した。
しかし十分ではなかった。ルイス氏はそれまでの行動で、「今回も同じ」である方に賭けてしまっていた。これは結局、重大な判断ミスだった。BOAの株主はこの誤りのツケを払ってきた。株価は1年で約80%下落した。次は納税者がツケを払うことになる。今こそ、ルイス氏も払うべきだろう。(デービッド・ライリー)
(ライリー氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。コラムの内容は同氏自身の見解です)
更新日時 : 2009/01/16 17:55 JST