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極小スプレッドで顧客を吸い寄せるネオFX会社の仕掛けとは(KlugView)
2009/01/15 (木) 11:50
為替取引では、株式取引と異なり、通貨を買う価格と売る価格が別々に表示されます。たとえば、ドル円において
100.00-10
と示されていれば、これは、1ドルを買うときは100.10円を支払い、1ドルを売るときは100.00円を受け取る、という意味になります。買うときと売るときの差額は、スプレッドと呼ばれます。
このスプレッドがあるために、同じ1ドルであっても、買うときは売るときよりも0.10円(10銭)高く、逆に、売るときは買うときよりも0.10円(10銭)安くなります。つまり、買う人も売る人も、同じタイミングであれば、(この場合)10銭のコストを支払うことになります。このコストが、為替取引を取り次ぐ銀行などの手数料収入となります。世界各国の銀行による為替取引(インターバンク市場)の場合、ドル円でのスプレッドは、おおよそ1.5銭から2銭程度です。
最近、普及が著しい外国為替証拠金取引(FX取引)においても、スプレッドは存在します。FX取引を取り次ぐFX会社が、証券会社と異なり、取引手数料を無料にできるのは、スプレッドがFX会社の収益となるからです。
FX会社が顧客に提示するスプレッドは、世界各国の銀行による為替取引(インターバンク市場)で提示されるスプレッドより大きくなるのが一般的です。FX会社は、顧客からの注文の多くを、銀行に引き継いでもらい、顧客からの注文による為替変動リスクを切り離します(これをカバー取引といいます)。
このため、FX会社は、注文を引き継いでくれた銀行が負担するコスト(スプレッド)に加え、自社の収益分もスプレッドに加える必要があり、結果としてスプレッドはインターバンク市場よりも大きくなります。
FX会社が提示するスプレッドは、数年前ですと、1ドルあたり5銭程度が一般的でした。その後、FX会社の競争が激しくなったことから、スプレッドは徐々に小さくなり、最近では、多くのFX会社が提示するスプレッドは、ドル円の場合、インターバンク市場のスプレッドに1銭程度上乗せした2銭から3銭程度となっています。
しかし、昨年ころより、ドル円のスプレッドを1銭や0.5銭に固定するFX会社がいくつか登場するようになりました。FX業界の関係者の中には、こうしたFX会社を「ネオFX会社」とグルーピングされる方もいます。たしかに、スプレッドが非常に小さいことは、ある種の新しさを意味しますので、「ネオFX会社」という言葉は的を得た表現なのかもしれません。
ただ、FX会社が、卸値ともいえるインターバンク市場でのスプレッドより小さいスプレッドを顧客に提示することは、何もしなければ単に損失を積み上げるだけです。顧客からの注文を受けるものの、FX会社がカバー取引をしないことも理論的には考えられます。しかし、顧客からの注文が増えれば増えるほど、為替変動リスクも大きくなるため、事業を継続したいのであれば、FX会社がカバー取引をしないことは、ほぼ考えられません。
では、ネオFX会社は、インターバンク市場よりも小さいスプレッドでどのように収益を得ているのでしょうか?すぐに思いつくのは、(1)インターバンク市場とは異なるレートを顧客に提示する、(2)顧客に提示したレートとは異なるレートで注文を確定する(約定する)、の2つです。
FX取引は、取引所を通じて取引を完了させるのではなく、各FX会社がそれぞれ注文を完了させること(相対取引)が一般的です。よって、FX会社が提示するレートは、FX会社の判断で決められるものであり、必ずしもインターバンク市場と同じである必要はありません。
たとえばドル円を例に考えてみます。インターバンク市場においてドル円のレートが
100.00-02
だとします。これは、1ドルを買うときは100.02円を支払い、1ドルを売るときは100.00円を受け取る、という意味です。買うときと売るときの差(スプレッド)が2銭ある状態です。
ここで、ネオFX会社が受け付けた注文の多くが、ドルを買い円を売る注文(ドル買い円売り)だとします。この場合、ネオFX会社は、
100.02-03
を提示します。これは、1ドルを買うときは100.03円を支払い、1ドルを売るときは100.02円を受け取る、という意味です。買うときと売るときの差(スプレッド)は、インターバンクと異なり1銭です。
こうすることでネオFX会社は、注文を得るたびに収益を得ることができます。なぜなら顧客から1ドルあたり100.03円を受け取ったら、インターバンクにて1ドルあたり100.02円を支払うことで、顧客からの注文をカバーでき、しかも手元に1銭残るからです。
普通の顧客は、インターバンク市場のレートを知らず、FX会社が提示するレートがインターバンク市場のレートと同じと考えがちです。このため、こうした図式が、FX取引をする顧客に知られることはあまりありません。
ネオFX会社が収益を得るもう一つの方法が、顧客に提示したレートとは異なるレートで注文を完了させる(約定する)ものです。たとえば、先ほどと同じようにインターバンク市場においてドル円のレートが
100.00-02
だとします。これは、1ドルを買うときは100.02円を支払い、1ドルを売るときは100.00円を受け取る、という意味です。買うときと売るときの差(スプレッド)が2銭ある状態です。
ここでネオFX会社も、インターバンク市場と同じ水準で、かつスプレッドをインターバンク市場よりも小さいレートを提示します。つまり、
100.00-01
を提示します。ドルを買いたい顧客にとってみれば、インターバンクで買うレート(1ドルあたり100.02円)よりも安いレート(1ドルあたり100.01円)で買うことができるので、一見得をするように思えます。
しかし、顧客が注文を出した(発注した)としても、ネオFX会社が提示したレートで顧客の注文が完了する(約定する)わけではありません。ネオFX会社は、提示したレートとは異なるレート、たとえば100.03円で約定させることも可能です。この場合も、ネオFX会社は、顧客から1ドルあたり100.03円を受け取る一方で、インターバンクにて1ドルあたり100.02円を支払うことで、顧客からの注文をカバーでき、手元に1銭残すことができます。
「提示したレートと異なるレートで約定させる」と聞くと、金融庁に登録をしているFX会社がそんなことをするわけがない、と思われるかもしれません。しかし、先にご紹介したように、FX取引は、取引所を通じて取引を完了させるものではなく、各FX会社がそれぞれ注文を完了させるもの(相対取引)です。言い換えれば、約定させるレートは、株式取引と異なり、FX会社が裁量的に決めることができます。
道義的には、こうした行為は許されるものではありませんが、金融庁といった当局が、こうした行為を実際に取り締まるのは非常に難しいと思われます。なぜなら為替市場は、秒単位で為替レートが変化するため、顧客に提示したレートが、市場の変動で次の瞬間、違うレートに変わることも珍しくないからです。
たとえ、提示したレートと異なるレートで約定したとしても、1,2銭単位であれば、市場変動によるものと解釈されてしまいます。そもそも、提示したレートは、秒単位で変化してしまうため、提示したレートと約定したレートが異なることを当局や顧客が証明することは、技術的に難しいものです。
こうした2つの図式は、一般の方にとって馴染みがあるわけではなく、また非常に分かりにくいものです。このため、FX取引をしている方や、これからFX取引をしようと検討している方にとっては、スプレッドは小さければ小さいほど良い、と考え、ネオFX会社の方が、通常のFX会社よりも優れたサービスを提供していると思いがちです。
しかし、タダより高いものはない、フリーランチ(無料の昼食)はない、といった言葉があるように、卸値(インターバンク市場でのスプレッド)を割り込んだ販売価格(FX会社が顧客に提示するスプレッド)を提示することは、何らかの仕掛けがない限り、実現することはできません。難しいことかもしれませんが、我々がFX会社を選ぶ際には、スプレッド小ささの裏に潜む仕掛けの是非を検討材料の一つにすべきと思われます。
村田雅志(むらた・まさし)
●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●
ネオFX会社って何?
●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●
インターバンク市場で提示されるスプレッドよりも
小さいスプレッドをFX取引をする顧客に提示するFX会社のこと
http://www.gci-klug.jp/klugview/2009/01/15/004335.php