06. 2014年11月04日 15:57:54
: nJF6kGWndY
http://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/archive/2014/10/1030.html 2014年10月30日(木) エボラ出血熱 日本人看護師が見た治療最前線世界に拡大するエボラ出血熱。その感染の中心地である西アフリカ・シエラレオネで、1か月間医療活動に従事した日本人看護師がいる。「国境なき医師団」の大滝潤子さんだ。気温30度を超える中で全身を覆う防護服を着て患者に対応、ベッドやスタッフの数があまりにも足りないため、運ばれてきた患者の受け入れを断腸の思いで断ることもあったと言う。大滝さんに、実際に使用している防護服をスタジオに持ち込んでもらい、現地での治療の困難さや課題などについて話を聞く。 出演:大滝潤子(国境なき医師団看護師) twitterfacebookhelp※NHKサイトを離れます 放送まるごとチェック 特集の内容をテキストと画像でチェックできます 有馬 「エボラ出血熱について、今日(30日)の特集です。」 西アフリカ・シエラレオネの密林。 その奥地に、エボラ出血熱の治療施設が作られています。 患者を隔離する必要があるため、人里離れたこの地が選ばれたのです。 この施設で、8月から1か月間、患者の治療にあたった日本人看護師がいます。 国境なき医師団の大滝潤子さんです。 エボラウイルスが猛威をふるう中、治療の最前線に立った大滝さん。 果たしてそこで目にしたものとは。 じっくりとお話を伺います。 エボラ出血熱 最前線での予防法 有馬 「国境なき医師団の、2人目の看護師として西アフリカに入ったと。 現地の最新の情勢どうでしょうか?」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「患者さんがどんどん、どんどん増えているということと、亡くなる方が半数以上いるということで、かなり凄惨な状態だというふうに言えると思います。」
有馬 「医療従事者の感染も出てますよね。 こう聞くとあれですが、怖くなかったですかね?」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「全く怖くなかったかって言われますと、ひやっとする部分もたくさんありましたし、自分が感染のリスクにあるっていうことは本当に実感してましたから。 ただ、毎日怖かったかというとそうでもなくて、患者さんがやっぱり目の前にいますから、それに頑張ってケアしなきゃいけないっていう気持ちもありましたから、常に緊張はしてましたけれども、全力を尽くしてっていうことでやらせてもらってました。」 有馬 「日本に帰られても、その万全の期間というのはとられたわけですよね?」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「はい、そうですね。 21日間は健康監視ということで、1日に2回体温を報告してました。」 佐野 「今日はスタジオに、大滝さんが現地で使っていた防護服を用意させてもらいました。 国際部の森デスク、こちらに、前の方へお願いいたします。」 有馬 「これ間近で見ますと、本当にごついですね。」
佐野 「森さん、着心地はどうですか?」 森デスク 「まず、非常に暑いですね。 肌にまとわりつくようでして、あと、たったこれだけ歩いてきただけでも、なんかちょっと息切れを感じるぐらい非常に息苦しい感じがします。」 有馬 「ゴーグルの中ももう、はや曇ってる感じもありますもんね、一部ね。」 佐野 「とても動きづらそうですけれども、大滝さん、これで治療をするとなるとまた大変ですよね?」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「これは本当に過酷ですね。 中も汗が全身から噴き出していますし、ゴーグルも徐々に曇ってくる。 また、脱水傾向になってくるし、ちょっと気持ち悪くなってきてしまうこともありますから、とても大変でしたね。」
佐野 「長時間の作業というのは大変になってきますよね?」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「そうですね。 動きの制限も少しありますし、視界も本当にこれだけですから大変ですね。」 有馬 「医療時間の制限とかルールみたいなもの、あるんですか?」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「基本的には1時間以内というふうに、患者さんがいる隔離エリアの方には1時間、この防護服を着て1時間の作業。 1時間過ぎないようにっていうふうにはきつく言われておりました。」
有馬 「森さん、1時間いけそうですか?」 森デスク 「今、この環境だったら、どうにか耐えられるかなと思うんですが、これがアフリカの炎天下の下だと、そして患者さんとコミュニケーションとりながらということになると、ちょっと私は自信がないですね。」 佐野 「まさに暑さの闘い、それから時間とも闘いになるわけですけれども、脱ぐときに非常に注意が必要だとお聞きしましたけれども、どういったところに注意が必要なんでしょうか?」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「脱ぐときは、国境なき医師団のルールに基づいて、1つ1つ脱いでいくんですけれども、その際には必ず塩素水で消毒します。 脱ぐ前、脱ぐあと必ず1つ1つの動作のあとに消毒をして、また次の動作に移っていくっていうことになりますね。」 有馬 「強烈な消毒薬がいるんでしょうね?」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「いえ、国境なき医師団では、塩素水を使っておりましたけれども、日常の皆さんの生活の中では、エボラウイルスはせっけん水で、せっけんで手を洗って死にますから。」 佐野 「せっけんで大丈夫なんですね?」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「そうなんです。 あとは日光でも、日光にさらすと死ぬっていうふうに言われてますから。」 有馬 「じゃあ、ちょっと具体的に…。」 佐野 「外し方を見せていただけますか?」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「例えば、今のこの手袋は、お掃除をするときとかに使うものなんですけれども、これを一般的に私たちが使う外科的な手袋だとしますと、基本的に脱ぐときは、脱ぐ前には必ず塩素水でまず手を洗うんですけれども、洗ったあとは外側を必ず、そうですね、ごみ箱があるとしたらそこに捨てていただいて。 このきれいな手で次の段階にいっていただくときは、外側を触らずに、中に指を入れて脱いでいただく。」
有馬 「外側を触らずに?」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「そうですね。 こういう感じで脱いでいただく。」
佐野 「きれいな方の手袋で、外側を触らないようにするっていうのが注意点なんですね。」 有馬 「潜らせるわけですね?」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「そうですね。 ちょっと難しいかもしれないですけれども。」 佐野 「手袋は使い捨て?」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「そうですね。 この緑のものはリユースなんですけれども、基本的には外科的な手袋とかは全部使い捨てになりますね。」 佐野 「そして、その順番でいきますとエプロンとか、次はどういったものを?」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「次はエプロンを脱ぐんですけれども、今ちょっと着こんでしまっていますので、例えばゴーグル、エプロンの次にはゴーグルを脱ぐんですけれども、ここだけは、ごめんなさい、最初に言っておかなかったんですけれども、最初にもう出てきた時点で全部、全身消毒するんですね。 ただ、頭の方は塩素水はかぶることはできませんから、もし目に入ってしまった場合は化学やけどを起こしてしまいますから、ここら辺はもう汚いものとして扱っていただかなきゃいけないんですが、その時に水滴なども中にもたくさん曇って付いていますから、脱ぐときかなりコツがありまして、ちょっとかがむようなかたちになってもらって、水滴が飛び散らないように、何も目に入らないようにそおっと取っていただけると、そうですね、そおっと取っていただいて。」
有馬 「飛ばないように。」
『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「そして、それを消毒のバケツにぽんっと入れていただくということになります。」 有馬 「見ててもため息が出るというか、息をのむというか。」 佐野 「思わず目元を触ってしまいそうですよね。」 有馬 「眼鏡を上げたなんてのもありましたもんね。」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「ありましたね。 そういうニュースも聞きましたけれども、これは本当に絶対に触らないようにしなければ。」 有馬 「こうして注意されていても感染が出てしまうと。 実際にひやっとしたことっていうのはあるんじゃないですか?」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「隔離病棟の中でも患者さんの体液に触れますから、そういうときはかなり緊張はしますね、どうしても。 あと、脱ぐときも緊張しながらやってます。」 佐野 「細心の注意が必要だということが分かりました。」 エボラ出血熱 治療の実態 佐野 「そもそもエボラ出血熱なんですが、まだ治療薬がない中で、施設ではどういったケアを行っているんでしょうか?」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「施設では、対症療法と言いまして、それぞれの症状に合わせたことを行っております。 例えば、熱が出ているときは解熱剤を差し上げる、痛みがあるときは鎮痛剤を差し上げるとか、あとは脱水を起こさないように経口補水液を差し上げて、患者さんの病状が悪化して、衰弱してきて、ご自分で水分や栄養が摂れない場合には介助をしたりとか、あとは点滴を入れたりっていうことをしております。」
有馬 「実際に治る病気なんですよね?」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「結構、致死率が高いっていうふうに言われてまして、死んでしまう病気っていうふうに思われてるかもしれませんけれども、治って回復して退院される患者さんもいらっしゃいます。」 佐野 「治療にあたるときに、特に気をつけてらっしゃることとかありますか?」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「医療的な、例えば対症療法、投薬や点滴なども本当に大切なんですけれども、特に患者さんが亡くなっていくことが多いですから、患者さんの尊厳を守ること、これは非常に私たちは大切にしてました。」 有馬 「しかし、目の前で人がかなりの数、亡くなられるわけですよね。」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「そうですね。」 エボラ出血熱 現地に何が必要か 有馬 「今、現地で何が必要なんでしょう?」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「現地では、とにかく人が足りません。 ちゃんとトレーニングを受けた医療者が必要なんですけれども、なかなかこの感染の拡大に伴って、やっぱり怖いですよね、正直、怖いですし、本当に医療者が足りないんですね。 しかも患者さんがどんどん、どんどん増えているこの現状に対して、もう本当に人材が足りない状態になっていると。」 有馬 「この機会に是非おっしゃりたいことがあるということで、是非伺いたいんですが?」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「今、ニュースが毎日のように、エボラのニュースが報道されて、毎週1万人の勢いで増えるのではないかとか、数に非常に注目がいってると思うんですけれども、現地で見たことは、患者さんがどれだけ苦しんでいるかっていうことを私は本当に伝えたいなと思うんですね。 患者さんが家族を亡くして、1人だけ子どもが取り残されるとか、心に深い傷を負って生活していること。 また、この西アフリカの感染拡大に伴って、本当に恐怖感が生まれている。 本当にそれもストレスになりますし、心に大きな傷を抱えて皆さんが生活していることを私は本当に皆さんにお伝えできればなと思いました。」
有馬 「患者さんとのエピソードもあるんでしょうね?」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「患者さんとのエピソードはたくさんありますけれども、特にこの男の子はそこまで症状が重いわけではなかったんですけれども、無事に退院できて、でも家族が死んでしまって、小さい妹とお兄さんだけ取り残されて、例えば小さい女の子のお世話を一生懸命していたんですね。 いろいろなストーリーが毎日毎日隔離病棟では起こってますね。」
有馬 「元気になって出て行ってほしいですもんね。」 佐野 「そうですよね。」 エボラ出血熱 治療の最前線 有馬 「こんな勇気のある人ばっかりじゃないと思うんですけれども、もう1回行きますか、と言われたら、どう答えられますか?」」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「条件が整えば、是非行きたいんです。 実はそういうオファーもあったんですけれども、私だけの決断ではなくて、心配してくれる家族もおりますから、そういう意味ではなかなか難しいかなっていう…環境と言いますか。 実際、そのエボラのオファーではなくて、実は別のオファーが来て、次のミッションが決まったんですけれども。」 有馬 「是非、気をつけてご活躍されてください。」 『国境なき医師団』看護師 大滝潤子さん 「ありがとうございます。」 佐野 「なお大滝さんの所属する、国境なき医師団のほか、日本赤十字社などでは現在エボラ出血熱の緊急支援のため、寄付を呼びかけています。」
|